玉笑

2012年12月01日
【店舗数:319】【そば食:543】
東京都渋谷区神宮前

とうふ、えびの味噌漬け焼き、粗挽きせいろ、菊姫(菊)、白陰正宗

玉笑への道

知人から「本日暇。会いませんか」という主旨のメールを受け取った。「蕎麦でも食べませんか」というおまけつきで。この日、おかでんは夕方から病院に行かなければ行かなかったのだが、せっかくのお誘い。断る言葉なんて存在しない。時刻は既に14時を回っていたのだが、通院までの僅かな時間をついて突撃することにした。・・・といっても、家を出発した時点ではお店は全く決まっていなかったのだが。「池袋~渋谷の間くらいにある蕎麦屋で。」という事だけが二人の間での決定事項。

当初おかでんは、高田馬場にある「傘亭」を想定していた。しかし、調べてみると閉店するとかしないとかという噂話が浮上しているではないか。既に閉店しているお店に訪問してしまったら非常に残念なので、この案却下。すると、先方から「神宮前の玉笑(たまわらい)はどうか?」という提案があった。玉笑はいつか行ってみようと「おかでんの蕎麦屋行き先候補リスト」上位にランクされていたお店。渡りに舟だ、今回行っちゃおう。

しかし、話がどうもかみ合わない。おかでんの手元にある蕎麦屋ガイドブックには、恵比寿にあるお店だと書かれている。しかも、ガイド本2冊ともに。ところが、知人からは「神宮前」という指示が。支店でも作ったのだろうか。既に移動中の電車の中でガチャガチャとメールのやりとりを慌ただしくやったところ、ようやく訳が分かった。移転したんだ、このお店。今じゃ神宮前に店を構えているらしい。了解。こういうとき、「食べログ」の情報は新しくて本当に助かる。住所や営業時間など、口コミ情報の域を超えていると思う。

渋谷のキンコーズで用を済ませ、神宮前の玉笑を目指す。Googleマップナビの指示に従って進むと、ぐいぐいと住宅街の中に入っていく。まーた隠れ家的蕎麦屋の登場だな。最近こういう類の店に良く出会うなあ。それにしてもこのあたりはさすがの高級住宅地だ。こういうところに住んでいる人はどういう人なんだろう?おかでんはつい昨日「年末ジャンボ宝くじ」を買ったばかり。ここで6億円が当たる予定なので、このあたりの住民の方々とお近づきになれる日が近いと思うと胸が熱くなる。

玉笑
玉笑灯籠

ナビの指示通り進んで、目的地に到着したあたりで天ぷら油の臭いがぷーんとしてきた。あ、蕎麦屋があるな、というのがすぐに分かる。えーと、でもお店はどこだろう?

先にお店に入っている知人からは、「神社の銀杏が見える席に座っています」というメールが届いている。ええと、神社は確かにあるし、銀杏も大きなのがあるな。これが見える場所といえば・・・

交差点の真ん中で、ぐるりと360度周囲を見渡す。んー。

怪しいのは、白い建物だ。細長い窓が、見える。あれのことかな?とはいっても、入口に暖簾が下がっていないし、お店を示す看板も何も・・・あ、あった。小さな行灯が床に置いてあった。「玉笑」って確かに書いてあるぞ。わかりにくい!やられた!

蕎麦売切れの為17時より開店致します

何で暖簾がかかっていないの、と思ったら、「蕎麦売切れの為17時より開店致します」とのことだった。今、時刻は15時半。ありゃ、いったんお店を閉めちゃったのか。

こういうところに「どもー」と入店するのは大変に気が引けるのだが、なにせ知人が既にお店の中にいるので、中に入らないわけにはいかない。意を決して暖簾が下がっていない入口を開ける。

玉笑店内2

「待ち合わせです」と店員さんに告げたら、快く案内してくれた。知人と合流。

店内は、4人がけの席1つに2人がけ2つ、そして窓際のカウンター席が4席、だったかな。

お店には時々予約の電話が入っているのが厨房から聞こえてきたが、席の都合上3人以上で予約を取るのは結構大変だと思う。何しろ、4人がけテーブル1つの争奪戦になるわけだから。

「神社の銀杏が見える窓際の席」だが、格子状に竹が編んであることもあって、何か捕らわれの身になったような気になる。もしくは、目の前の神社を警備するための特殊部隊か。

このお店には17時半ころまで、2時間の滞在となったわけだが、その間どんどん暮れていく外の景色をずっとノンストップで楽しむ事ができて良かった。ここは昼下がりから夕暮れ時がおすすめの席だろう。週末は通し営業をしているのでありがたい。

酒器1
酒器2

お値段は結構高めなので、何を選んで良いか財布と要相談。せっかくの知人との会食だから、とかいってあれこれ頼んだりいいお酒を頼んじゃうとえらいことになるので注意が必要だ。

ちなみにお酒だが、一番安いのは天狗舞純米酒の945円、一番高いのが鄙願(ひがん)大吟醸で2,525円。われわれは「天狗舞ってありきたりすぎるんだよなあ」と言いつつ、別のものをチョイス。おかでんは「菊姫(菊)純米酒」1,050円、知人は「雪だより にごり」945円。

届けられた徳利とお猪口は、それぞれ別の形をしていた。しかも、こだわりのありそうなひと癖もふた癖もある作りになっている。面白い!これは酒が進みそうだ。・・・いや待て、酒の飲み過ぎ注意。おかでん、この後病院だぞ?常識的に考えてやっちゃいけないことを今やっているわけで。うひひ。禁断の昼酒よのぅ。

お通しはおからだった。おからが入っている小鉢は普通のものっぽいのだが、わざわざ欠けた部分を金つぎしているので、良いものなのだろう。マ・クベ大佐だったら、キシリア様に届けているかもしれない。

とうふ

このお店、おつまみについては随分潔い。11種類だけで、そのうち1つ(揚げそばがき)は要予約なので、実質10種類。その多くが、にしんとか板わさ、焼き味噌といったオーソドックスな蕎麦屋のつまみであり、「いろいろなメニューをそろえる最近のニューウェーブ蕎麦屋」とは一線を画している。

さてわれわれだが、まずはとうふを頼んでみた。630円。

「蕎麦屋の豆腐って大概が美味いんですよ」

と知人に説明する。お品書きに「自家製湯葉をのせた冷や奴です」と注釈がつけられているのも魅力的。

1つ頼んだつもりだったのだが、届けられたのは2つ、つまり一人1つづつになっていた。あれれ、と思ったが、確かに1つのサイズがとても小さい。さすがに大の大人二人がこれを肩を寄せ合ってシェアするのはみっともない。一人1つで正解だった。

豆腐はエクセレントというほど美味いとは思わなかったが、醤油はとてもおいしかった。

えびの味噌漬け焼き

えびの味噌漬け焼き。1,050円。

もともと2本で1セットの料理なので、わざわざ店員さんが「一人一本ずつにおわけしますか?」と聞いてくれた。そこで、ありがたく一人一本にシェアして貰った。

「頭から食べられますから」と言われ、ちょっとびっくりする。結構ごつい海老だぞ、これ。頭かじったらチクチクして痛そうなんだけど。しかも、殻が全く外されていないし。でも、言われるがままにかぶりついてみたら、あら不思議、サクサクと食べられるよママ!

これが相当美味いんだな、ええ。なんなんでしょう、一体。お品書きの注釈によると、「西京味噌に才巻きえびを3日間漬けて焼きました」という事。味噌の漬け加減も絶妙なれど、焼き加減も素晴らしい。焦げが全く無いのに隅々まで柔らかく仕上がっておいしく食べられるんだから不思議だし、素敵。これはおすすめしたい。知人と二人で「おいしいなあ、これは」と嘆息。

白陰正宗山廃 純米酒

お酒のお代わりをする。今度は「白陰正宗山廃 純米酒」1,050円。酒器がまた独特なセンスのものが出てきたぞ-。なんだこのカモノハシみたいなのは。つくづく面白いな。

蕎麦猪口

頃合いを見てお蕎麦を頼む。このお店は「熱もりせいろ」が有名なのだが、現在蕎麦が売り切れ中。店員さんによると「冷たい蕎麦ならお出しできますが、温かい蕎麦は0.6人前ずつくらいしかお出しできません」だそうだ。どうやら、温かい蕎麦と冷たい蕎麦で麺が違うようだ。今日は寒いから、温かい蕎麦がよく売れたんだろうな。

さて、その冷たい蕎麦だが、「粗挽きせいろ」がメニューのトップを飾る。お値段1,050円とお高め。ノーマルのせいろそばは無いのか?と思ったら、小さく「細かく挽いたせいろあります」と書いてあった。お店としては粗挽きの方がおすすめというわけか。なら、奇をてらわずにその粗挽きせいろとやらを一枚、所望します。

蕎麦を待つ間、薬味や猪口が届けられたのだが、猪口がまたデザインが憎い。普段、この手のものには興味が無いと公言してはばからないおかでんだが、ついつい手に取ってじっと見てしまった。でも、コレクションしようとは思っていないぞ。そっち方面に向かってしまうとお金が本当にいくらあっても足りなくなるぞ。

粗挽きせいろ
粗挽きせいろアップ

しばらくして届けられた粗挽きせいろ。

聞くところによると、茨城の名店「慈久庵」と共同で蕎麦の生産をしており、慈久庵と同じ蕎麦粉を使っているという。ということは、手刈り、天日干しの蕎麦というわけだ。相当貴重なものだろう。

食べてみると、これがとても美味い。鼻に抜けるさわやかな香りを楽しんだあと、蕎麦を噛みしめたら甘みがぎゅっと奥歯のあたりに広がる。そのせいで唾液がにじみ出てくる。ああ、いいなあ、こういうの。今シーズン食べた蕎麦の中で3本の指に入る美味さだな、いや、1本の指、といっても良いかも知れない。素晴らしい。

蕎麦湯の器も独特

最後、蕎麦湯が出てきて、蕎麦茶が供されておしまい。

蕎麦湯が入っているこの器も面白いもので、最後まで器で楽しませてもらった。

蕎麦は非常においしく、立地条件の悪さなんて吹っ飛ばすくらいのインパクトがあった。ただ、お値段の高さと量のすくなさが結構なものなので、蕎麦の美味さをあまり理解していない人を連れて行くには無理なお店だと思う。これは、蕎麦を知っている人が、道楽で訪れるお店だと思った。

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