紙風船も時期尚早だった

父親として、現時点でもっとも嬉しいと感じるのはタケが一人遊びをすることだろう。

親の手が掛からない、という利己的な理由だけじゃない。それだけ夢中になれるコンテンツを親が用意できた、ということに対する喜びと、タケが何かに夢中になっていることの嬉しさだ。

何かそんなキラーコンテンツはないだろうか、と思って探しているのだけど、ピンとこない。タケはなんでも口にいれて舐めたがるので、何を渡しても舐められて終わりになるからだ。

今のところ、彼が偏愛し狂ったようにしゃぶり倒しているのは木工細工のおもちゃ・・・の紐だ。

↑は「いも虫」だけど、我が家にあるのはこれと形がちょっと違う「キリン」だ。でも、

祖父母が「紐がふやけていずれほどけて、木のパーツを飲み込んでしまうんじゃないか」と心配するくらい、ひたすら舐めている。どうやら舐めてよし、握ってよし、振ってよしでお気に入りらしい。振るとジャラジャラ木が音を立て、取り付けられた鈴がチリチリと鳴る。

とはいえ、親としてはもっとアクティブなおもちゃと親しんでもらいたい。まだ時期尚早かもしれないが、キャッハウフフとオモチャを追いかけたり追いかけられたり、そんな運動を伴う何かがいい。

試しに風船を渡してみた。きっと、ボヨンボヨンと跳ねる風船にタケは興奮し、「あーあーあー」とうなりながらハイハイして追いかけるんじゃないか。または、座ったまま、親とつたないバレーボールをやってくれるのではないか。そんな期待があった。

結果は大外れ。大して興味を持ってもらえなかった。どうやら、風船がポーンと跳ねて動くと、ゼロ歳児の動体視力では追いきれないらしい。彼にとって、「視界から見えなくなる」ということは、即興味を失うことに等しい。なので、興味が持続しなかった。なにしろ、親が「いないないばぁ」をやろうとして顔を隠している間に、タケはよそ見をしているくらいだ。

結局、風船は縛った口の部分が「疑似おっぱい」としてタケに吸われる程度の存在となった。これは予想外。

風船はしばらく諦めていたのだけど、ある日マスキングテープ屋に行ったら店頭で紙風船が売られているのを発見した。

紙風船!今どきレトロだけど、ホワンとした動作はタケでも追随できるかもしれない。しかも、地球儀の柄なのがいい。

いしが言う。

「これ、家の食卓に置いておきましょうよ。国の名前を覚えていけるといいですね」

なるほど、親も子も楽しめそうだ。

これまで、中南米の珈琲豆を日替わりで食卓に上げてきたけど、なんとなく場所がボヤンとしてなかなか記憶につながらなかった。今度から、地球儀を片手に珈琲を頂く優雅な朝になりそうだ。

2022年のお正月。タケへのお年玉も兼ねて、紙風船を与えてみた。

タケははちきれんばかりの笑顔で大喜びした。うん、殆ど飛び跳ねない紙風船は、タケの視線にとても優しい。しっかり追随できているぞ。

ただ、彼が喜んでいたのは、「丸いものがポンポン飛ぶ」こともさることながら、「風船を弾くたびに、ボスボス・カサカサ音がする」方だったようだ。いざ、タケに紙風船をトスしてみると、器用にキャッチするやいなやバリバリと音を立てて風船を潰してしまった。

いやちょっとまって、そこは打ち返してほしいんですけど。ああ、地球が、地球が!

「持続可能性な社会」が叫ばれる現代というのに、地球がくちゃくちゃにされてしまった。タケは大層ご満悦で、鼻の穴を広げて大興奮。自分の手によって、ガサガサと小気味よい音が立っているからだ。

赤ちゃんはビニール袋や新聞がガサガサいう音が好き、というのが一般的だが、我が子もまさにそうだった。ビニール大好き。事故防止のために安易にビニールを渡せないけれど、この世に「子供でも安全かつ飽きの来ないビニール」があればぜひ買い求めたいくらいだ。

紙風船は、和紙で出来ているので少々ガサガサやった程度では破れないだろう、でも危なっかしいな・・・と思って傍らで様子を見ていたら、バリバリバリっと音を立てて破れた。

あー。

子供のちからを侮っていた。やっぱり敗れるか。

地球滅亡。

破られてしまった地球儀をセロハンテープで修復するいし。

地球儀の裏側からテープを貼って、慎重に修復していった・・・のだが、球体の宿命として完全に地球の裏をテーピングするのは無理だ。そもそも、立体的な構造で修復がとても難しい。

タケはいしの足元で、自分が瞬間湯沸かし器のように愛した紙風船の回復をじっと眺めていた。いやあ、正月早々地球滅亡を目の当たりにするとは。むしろ縁起が良い、ということにしておこう。これ以上最悪のことはない。だから向こう1年は良いことしか起きないだろう。

回復途中のまま一時放置されていたこの地球儀は、遅れて帰省してきた姪の目に止まり、地球の表から雑に修復された。「せっかく丁寧に裏からテープを貼っていたのに・・・」と嘆くいし。

でもまあ、姪は姪なりに青いテープで補修をしていた。目立ちにくいように修理をしたんだろう、とポジティブに捉えよう。

どっちにせよ、ちぐはぐにテープを貼った紙風船はこの後も復活することはなく、以降は「タケのおしゃぶり道具(ガサガサ音がする)」になったのだった。

それも、数日後には空気穴のあたりを唾液でふやかし、紙をちぎってしまったので回収・破棄へ。破れて小さくなった紙は誤飲の可能性がある。もうこれ以上地球をリサイクルするのは無理だった。

(2021.01.01)

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