断髪式

生まれたての赤ん坊でも髪の毛がフサフサな子がいれば、ほとんどハゲている子もいるという。

我が子はほぼハゲだった。この差はなんなのだろう。遺伝子によるものなのか、胎内での栄養状態なのか、それとも別の要因があるのか。

そのせいもあって、生後しばらくの写真と今(生後1年近く)とを比べると、昔の方がオッサンっぽい顔立ちだ。ほっぺたがふくよかということもあって、作業着を着せたらやたら貫禄がありそうだった。

お陰様でその後健やかに成長し、今や「そろそろ散髪をしなくちゃ」と夫婦で話し合うくらいにまで伸びた。ちょうど年末年始に帰省するので、弊息子の弊祖母がいるところで「断髪式」を敢行することに決めた。

年末の12月31日。今年無事に過ごせたことにお礼を述べつつ、伸びた髪の毛をカットする。

本格的な散髪じゃないので、爪切り用のハサミで、ちょっとだけ切る。耳にかかっている髪と、前髪をちょこっと。

初めての体験で何事かと驚き、暴れるタケ。

そうか、散髪というのは子供が嫌がるものなのだな。今頃になって知る。

一人が押さえつけ、一人がカットする。羊飼いが一人で器用に羊毛を苅る光景を見たことがあるけれど、それより難易度が高い。何しろ、刃先がどこかに当たって怪我をしては困る。初体験の僕らも、へっぴり腰だ。その弱腰な雰囲気がタケにも伝わったようで、余計に嫌がるのだった。

カットした髪の毛は、この程度。

よく、「生後最初にカットした毛を束ねて、筆を作る」というサービスがあると聞く。

僕も一瞬だけそれを考えたけど、やっぱり筆を作るのはやめにした。たぶん、筆を作っても単なるタンスの肥やしになるだけだと思う。本人が大人になってからその筆を受け取っても、「はあ、そうですか」程度にしかならない気がする。

へその緒は大事に桐の箱に入れて保管しているけど、これだって保管していることにどれほど意味があるのかわからない。邪魔、とまではいわないけれど、あってもあまり出番がなさそうだ。「お食い初めの時に使った歯固めの石」とかもそう。

そんなわけで、「毛先が断面になっていない、一生で一度かぎりの髪の毛」は切り落とされ、毛はそのままごみとして捨てられた。

で、仕上がったタケの髪型。

我が子に対して失礼を承知で、大笑いしてしまった。ありゃりゃ、素人が散髪するとこうなるのか!

「前髪はちょっとつまむ程度」のはずだったのに、左右のバランスを取ろうとした結果、ぱっつんとした坊ちゃん刈りになってしまった。

こうなると、「可愛い子ども」だったはずなのに、なんだか「面白い子ども」に。いや、我が子に面白さは求めていないぞ!

あと、サイドとうなじの毛もピシッと切られ、なんだかヘルメットを被っている人みたいになったのも面白みの要因。

ああ、思い出した。僕は小学校卒業するくらいまでずっと「坊ちゃん刈り」と呼ばれる前髪ぱっつんの髪型だったっけ。それで、一部の同級生から「ヘルメット」というあだ名で呼ばれていたものだ。もちろん侮辱の意味を込めたあだ名で、僕は腹がたったものだ。

我が子よ、お前には「ヘルメット」呼ばわりはさせない。待ってろ、次の散髪のときはもうちょっと髪型を考える。

(2021.12.31)

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