1歳児にして変態紳士

弊息子タケがハイハイするようになり、歩くようになり、だんだんと家庭内における勢力圏は変わっている。

分別がつかないまま行動可能範囲だけが広がっていくので、親としてはその行動の阻止に必死だ。

まず最初に、家電類のケーブルが狙われた。なので、彼の手が届く場所にあるコンセントは使用不可となった。ずいぶん不便だ。高い位置にコンセントがあるなんて、キッチンまわりにしかない。あとは、いかにコンセントを家具などで隠蔽するか、だ。

ほかにも、触られたくないものがある棚や扉にはチャイルドロックを取り付けた。たとえば洗面台下の扉とか。洗剤を舐められたら大変だ。あと、乾電池やカッターが収納されている棚も。

ただ、このチャイルドロック、全ての扉に取り付けていると大人の生活に支障が出る。だから、「まあここはタケに触られても、事故にはならないな」というものが入っている収納庫の扉はノーガードになっている。

それが洗面所の戸棚。衣類やタオルが入っているので、散らかされると面倒だけど、まあ許せる範囲だ。

そんな大人が設けた盲点をみすみす見逃すタケではない。歩けるようになって2ヶ月程度でこの家のマップを完全に頭の中に記憶した。今や暗闇でもずいずいと歩けるし、親がリビングからいなくなったら、トイレや寝室まで探しにやってくるようになった。

なので、洗面所の戸棚は当然「いつでもバタンバタン開けられる楽しい場所」として彼の脳に記憶された。

最初のうちはいしの母乳パッドが狙われた。袋からむしりとって、洗面所周辺にばらまくのがお気に入りのムーブとなった。

しかし、じきにいしの授乳頻度が下がってきた。そのため、昔のように「授乳間隔が空くと母乳が溢れて服にシミができる」ような状況ではなくなった。母乳パッドよさらば。

じゃあ、タケはどうするか。母乳パッドが置いてあったすぐ近くの、いしのブラジャーをおもちゃにし始めた。子どもは「引っ張る」という行為が大好きだけど、このブラは引っ張りがいがある。ゴムがあって伸びるし、長いし、軽いし。で、棚から引きずり出し、さらにはそれを首にひっかけて得意げに家を歩き回る。大人のブラは1歳児にとって持て余すサイズだけれど、首からぶら下げれば我が物、という認識なのだろう。

また、ブラ独特のレースなどの装飾が、子どもにとっては「なんだかさわり心地の良いもの」と感じるらしい。とにかく、気に入ったのは間違いない。

僕はタケが保育園に行く前、いしが仕事に出かける前にすでにテレワークをはじめる日々だ。で、「さあ今日も仕事を始めるぞ」とPCを立ち上げ、メールをチェックしはじめた頃になってタケがドドドとやたてきて、鹵獲品であるブラを自慢げに見せてくる。僕はせっかくの勤労意欲がふにゃふにゃと崩れてしまうのだった。

このエピソードを保育園の保護者会で自己紹介の際にして、「子どもが変態紳士にならないよう、親としてしっかり育てて行きたいと思っています」と語ったら、同席していたマダムたちから無表情&失笑という扱いを受けてしまった。

それで悟った。ああそうか、「我が息子がブラを頭から被って歩いているので変態紳士」なんていう比喩表現を使う時点で男子校的発想であり、世のお母さんたちにとってはセクハラ事案になりかねない話なのかもしれない、と。

気をつけないと、と我が息子のことよりも自分の立ち居振る舞いを反省した。

(2022.04.15)

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