報酬がないと階段は登らないものだな

タケがコロナ陽性となった結果、一週間半に及ぶ自宅足止めとなった。

外出がまったくできないというのはタケにとって相当なストレスだろう。なにせ本人は元気なのだから。いくら母親が遊んでくれるといっても、朝から晩まで家の中というのは面白くない。

「公園に連れて行くくらいなら良いのでは?」
「もしご近所さんや保育園の人に見られたらどうなんだろう、さすがにまずいのでは」
「夜が更けてからなら外出は?」
「不審すぎる」

などと、あれこれ話し合いをしたが、結局全く家から出ないということになった。

2022年初夏ともなれば、街中至るところにコロナ陽性経験者が溢れていて、1年前・2年前ほどの差別意識はなくなっている。「あの家、コロナ出たんだって」と後ろ指を指されることはない。でも、だからといって外出をするのは気が引けた。仮に、誰も接しないとしても。なにせ、肝心の陽性患者タケはマスクをしていないからだ。

「せめて、人の気配がないときにマンションの階段を上り下りするくらいなら」

ということにした。エレベーターに乗せると、中の空気を汚染させてしまい、住人に迷惑をかけるおそれがあるからだ。

そんなわけで、タケを連れて階段の上り下り。

最近の彼は、公園のすべり台の階段を器用に登る。また、階段を下るときは「よいしょ!」と声を出して体中を使って一歩一歩歩く。きっとこの階段歩きも気に入ってくれるはずだ。

・・・と思ったら、2階くらい登ったところで完全にへこたれた。疲れたらしい。

これまでの階段は、「登った先にはすべり台というご褒美がある」という構図だった。しかしマンションの階段にはそれがない。ひたすら同じ段が続く。まだまだ最上階までは遠い。これでは彼のやる気が失われるのも仕方がない。

嬉々として階段を登ったのは最初の1日だけで、翌日以降は「また疲れることをやらされる!」と勘づいて階段を登らなくなった。

(2022.06.04)

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください