歯磨き訓練中

弊息子タケの歯が生えてきて間もないころから、幼児向けの歯ブラシでのブラッシングを心がけている。

最初の頃は、「新手のおしゃぶり」と思っていたようだ。ブラシ側はチクチクするからだろう、わざと歯ブラシを逆に向けて、柄の部分を噛んだり舐めたりしていた。「違うよ、逆だよ」と教えても、いたずらっ子の目をして、聞こえないふりをしている。

ようやくブラシのほうを口に入れたとおもったら、そのまま立ち上がって歩き始めるからあわてて静止することになる。歯ブラシをくわえたままうっかり転んだら、死亡事故にさえなりかねない。

かかりつけの耳鼻科の先生から、

「気をつけてあげなさいよ、子どもの上顎って柔らかいんだから。歯ブラシをくわえたまま倒れたら、脳みそに直撃して死んじゃうんだから」

と言われている。

大人にとっては、「歩いていてコケる」というのはそんなに多いことじゃないけれど、まだ1歳の子どもというのは「倒れながら前に進む」生き物だ。コケるのは日常茶飯事なので、歯ブラシをくわえたまま歩く、なんて一瞬たりともあってはならないことだ。

そんなわけで、彼に歯磨きをしてもらう際は、洗面所の扉を締めて父子で中に閉じこもり、タケが気が散らないように眼の前に僕が陣取る、という構図になっている。もちろん、仕上げ磨きも僕がやる。

彼の歯磨きは朝晩僕が手伝っているのだけれど、この営みを始めて以降、僕が体調を崩すことが増えた。彼がゴホゴホ咳き込んだらそれを真正面で受け止めてしまうのと、歯磨きの際に出た唾液が僕の手につくからだろう。ちゃんとマスクや手洗いをやっていれば問題ないのだろうが、ガードが甘いせいで弊息子の体調不良はそのまんま僕に移植されるという有様だ。

しかもだ、子どもは病気にかかりやすいかわりに驚異の回復力も見せるのに、大人はいったん病気にかかると回復力が遅い。僕のような50歳手前ともなるとなおさらだ。そのせいで、タケはピンピンしているのに僕がぐったり、ということもある。なんだこの理不尽。

(2022.08.04)

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