門前の小僧習わぬ合掌をする

実家は弊息子タケにとって遊び場の宝庫だ。

和室で構成された家の場合、モノが低い位置に置いてあるからだ。

しかも日常的に小さい子どもがいるわけではない家なので、モノの配置が無防備だ。もちろん危ないものは高いところに避難されているものの、手を伸ばせば触ることができるものがいっぱいある。

我が家の場合、子どもが移動する場所には極力モノを置いていない。開けられそうな扉にはロックをかけ、触られそうな書類は棚の上のほうに置いている。そしてキッチンは入れないように柵が設けられている。

タケにとっては、砂漠の中にいるようなものだ。

いっぽう、実家だと状況は変わる。

まず彼が目につけるのは、お仏壇だ。ろうそくが立っているし、線香立てという「ミニ砂場」があるし、なによりもチーンと良い音がなるお鈴がある。そりゃあ、すぐに触りに行きたくなるのは当然だ。

親のマネをして線香を手に取り、力加減を誤ってボキボキに折る。子どもにとって、繊細な線香を指でつまむ行為はとても難しい。なんとか状況を理解し、折れた線香をかろうじて持って線香立てに立てようとすると、今度は線香の火がついているところに触れてしまい、熱くてベソをかく。

仏具は完全に片付けてしまいたいところだが、法要のために帰省しているのでそういうわけにはいかない。しかもお供えのお菓子や果物が仏前に飾られ、ますますタケの好奇心を喚起する状態。彼を抑え込むのが大変だ。

しかし、親や親戚が仏壇に手をあわせているのを見て、タケは「手を合わせる場所なんだな」ということは理解したようだ。殊勝にも、手をあわせることを覚えてくれた。ご先祖様もきっと喜んでくれているだろう。

で、手をあわせたら、その後にお楽しみのお鈴を鳴らすご褒美がある。チーンと鳴らし、たいそうご満悦だ。

(2022.10.21)

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