マンボウと対峙

水族館の水槽の中をゆうゆうと泳ぐマンボウを眺める、弊息子タケ。

マンボウという魚がそもそも不思議な存在だし、水族館という施設も子どもにとっては謎だろう。ましてや、円柱の水槽が床から天井まで貫通していて、目線の高さまたはそれ以上の高さで魚が泳いでいるというのも、常識から考えたらおかしな世界だ。

しかし、2歳児にとって、「魚というのは、海や川にいるものだ。水槽にいるのはイレギュラーケースだ」ということは全くわからない。また、魚が泳いでいるのを横から眺める体験が自然界においてはいかに不自然なことか、それも全くわかっていない。

なので、彼は淡々と眼の前の事実を受け入れていく。

親が、「魚というのは本当は海や川にいる生き物だよ」と彼にいくら教えたところで、今度は彼は「海」や「川」の概念を彼はまだよくわかっていないので、余計に混乱するだろう。

だから今はただ、水族館や動物園で生き物を見せるだけ見せている。

以前、「学校の授業で子どもに魚の絵を描かせたら、魚の切り身の絵を描いた子がいた」という話題がニュースになったことがある。他に似た事例として、「ニワトリの絵を描かせたら、四つ足のニワトリを描いた」という話もあった。

そのニュースを誰かコメンテイターが論評する際、「最近の子どもは物を知らなさすぎる」という批判になるのだけど、現代の子どもを取り巻く環境を見渡せば、そりゃ子どもはそういう絵を描く、と思う。切り身ではない、一匹まるごとの魚のほうが非日常的であり見慣れないものだからだ。

(2023.05.28)

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