花より公園

6月になったので、僕ら家族は堀切菖蒲園で花菖蒲の鑑賞に出かけた。

僕らが菖蒲を見るのが大好き、というわけではない。菖蒲に限らず、ネモフィラでもヒマワリでも、お花畑に大して興味がないのが本音だ。

しかし、毎年決まった時期に決まったことをやり、そこで一家揃って写真を撮る行為がとても素敵なことだと思っている。おかでん一家の定点観測ができるからだ。

また、その思い出や撮影した写真を基に、家族であれこれ昔話や未来に向けた話ができるのも好きだ。情報過多な時代に生きている僕らは、目の前の情報を自分の脳で処理するのが精一杯だ。だから、意識的に過去や未来に思いを馳せるきっかけを日常生活に仕込んでおく必要があると思っている。

6月の定番行事は、花菖蒲の鑑賞。堀切菖蒲園はそこまで広くない空間だし、入場無料なので、サッと行ってサッと帰ってくるには便利だ。

親の僕らがそれくらいの感覚でいるので、2歳の弊息子タケは僕ら以上に花菖蒲に興味を持っていない。僕ら夫婦はどの品種の花菖蒲が一番お気に入りか?という議論をするけれど、タケは僕に抱っこを求め、無言で花をぼんやり眺めているだけだった。

せめて彼が園の中を走り回るとか、やんちゃな素振りを見せるならば可愛げがある。しかし彼は「ここは自分が楽しい場所ではない」とそうそうに割り切ったらしく、省エネモードで「抱っこ!」と僕にしがみつくのだった。

そんな彼が、急に僕からスルスルと離れ、走って行った。この堀切菖蒲園には児童遊園的な場所が併設されていて、そのすべり台が目に入ったからだ。

こうなると彼は俄然やる気を見せ、さっきまでの無気力とはうってかわって笑い声を上げながら走り回っていた。

日本には、古来から「花より団子」ということばがある。お花見をするよりも、お花見宴会を口実に買った団子のほうが実は嬉しい、という意味だ。主客逆転。

2歳の弊息子タケにおいても、まだ花菖蒲鑑賞よりも滑り台遊びのほうが楽しい。だから、「花より滑り台」だな!と僕は思った。

こういう思い出も、我が家のこれからの人生における定点観測の1トピックになる。

(2023.06.10)

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