門前の小僧習わぬお仕事をする

弊息子タケが、僕がテレワークで使っている部屋に一人で突撃していった。

ゴソゴソしているな、と思ってはいたが彼を放置していたら、しばらくして彼は得意げな顔をして、Bluetoothキーボードとマウスをリビングに持ってきた。僕がいつも仕事に使っているものだ。

「どうしたの?」
「お仕事でーす」

そういって、「僕はなんでも知っている」という手付きでマウスをクイクイと動かし、キーボードをバンバンと叩き始めた。やめろやめろ、僕の商売道具だ。しかも会社から支給されたものではなく、自腹で買ったものだぞ。

これを壊されたら困るので、僕は代替品として電卓を持ってきた。「ほら、これでお仕事できるよ」と言いながら電卓を渡し、彼からキーボードとマウスを回収する作戦だ。しかし彼はますます得意になっちゃって、キーボードの脇に電卓を置いてカチャカチャ叩き、できるサラリーマン像を演出してみせはじめた。

こうやって子どもは親の姿を見て育つのだな。

ちなみに僕が仕事をしている姿を、彼は殆ど見たことがない。当たり前だ、僕は公私をちゃんと分けるので、僕が仕事をしている最中に彼が「仕事場訪問」なんてことはないからだ。でも、なんとなく「これがお父さんの仕事道具だ」ということは彼には理解できるらしい。

とはいえ、「仕事」というのが何なのかというのは全然わかっていないだろうし、わかったとしても、なぜ僕がキーボードをカチャカチャ叩けばそれがお給料になるのか、理解できるのは相当先のことだろう。

近い将来、きっと彼は僕に質問するだろう。「お父さんはどういう仕事をしているの?」と。それに対して、僕はとても答えに窮する。子どもにぱきっと理解してもらえるような仕事ではないからだ。会社運営上必要な業務を担っているのだけれど、いくら説明を尽くしても、子どもが「お父さん、すごい!」とワクワクするような仕事ではない。

そんな仕事だからこそテレワーク三昧な日々が過ごせるわけで、我が家は家事育児のために夫婦どちらかが時短勤務にならず、フルタイムで働けている。もし、僕が出社が当たり前な仕事だったり、頻繁に出張があるような仕事だったら、彼は今よりも悪い待遇(金銭的な面または親と接する時間)で育つことになっただろう。

だから僕は僕なりに仕事を頑張っているんだが、きっと子どもからは全然感謝も尊敬もされず、僕が死んだ後に僕の思い出話をする際には、「なんかパソコンに向かって一日中作業してたよ。エクセルとか。それが仕事って、わけわかんなくない?」みたいに言われるんだと思う。それが残念だ。

(2023.08.25)

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