ドル!ユーロ!ポンド!ペソ!ウォン円元、バブリーーーーーー!!!

9月に上野公園噴水広場で開催された野外屋台イベント「UENO.de パンダ中秋節」のステージでは、15分や20分刻みで次から次へとアイドルグループが登場し歌と踊りを披露していた。

僕はアイドルにまったく興味がなかったし、夕食のために屋台料理を食べるのが目的で家族で訪れていたのでアイドルのパフォーマンスはBGMの扱いで聞き流していた。

しかし、その日のステージのトリを務めていた、「ジュリアナの祟り」というグループがとても楽しく、すっかり魅了されてしまった。

他のアイドルグループが若い女性ばかりで構成されてるのに、このグループはメインボーカルが男性1名と女性1名、そこにマイクとダンスで客を煽るパフォーマー3名、バックダンサーの女性2名という構成だからびっくりした。この人たちは・・・アイドルなのか?バックダンサーを除くと、「アイドル」と呼べる年齢とはいえない。

しかしパフォーマンスは本当に素晴らしい。「令和にバブルを呼びおこす」をキャッチコピーに活動している、ということで、ピンクを基調とした派手なステージ衣装と、トランス系の音楽+パラパラの要素が入った振り付け、さらには客とのコール&レスポンスが実に堂々としている。場数を相当に踏んでいて、自分たちのやってることに自信があるということが客席に伝わってくる。

初々しい、といえば聞こえがいいが、実際は危なっかしい未熟なエンターテイメントのアイドルグループとは全く格が違う。「なんでこんな凄いグループがこんなステージに?」と不思議に思ったものだ。

しかも、「普段はバンド活動をやっている」と自己紹介をしていて、頭が混乱する。えっ、誰が何の楽器をやってるの、と。そして、えらくお金をかけて活動をしていて、客席に自分たちのバンド名と合言葉「バブリー!」が書かれたピンク色のうちわを大量配布していた。それもますますわけがわからない。

極めつけに、「現在4ヶ月連続で無料ワンマンライブを新宿でやっている」と言っていたこと。ライブ会場のキャパ数は不明ながらも、「無料」で「4ヶ月連続」もライブをやるというのは耳を疑った。そんなこと、ありえるのか?

人気があるのかないのか、儲かっているのかいないのか、さっぱりわからない。こういうステージに上がるアーティストは、僕の知らないところでエコシステムが成立しているのだろうか?

このピンクのうちわは、貰ってとても嬉しいものだった。なんだかテンションが上って、僕ら親子も曲にあわせてジャンプしたりうちわを振り回したものだ。

この日はそのまま終わったのだけど、僕が感じた「一体何者なんだ、このグループは?」ということを調べ始めて、どんどん泥沼にはまっていった。公式サイトを見ても、全ての疑問に答えてくれる内容ではない。どこまでが冗談でどこまでが本気なのかわからないレベルだ。

このため、いろいろな情報を断片的に集めていくと、「東京国際フォーラムや渋谷公会堂でワンマンライブをやったことがある」という話や、「赤坂BLIZでライブをやったときは、無料どころか、来場者一人につき1円を配った」などと驚く話しかでてこない。

じゃあ単に僕が無知だっただけで、実はものすごく有名なアーティストなのか?と思ってYouTubeで動画を探してみると、健康ランドの休憩所となっている大広間のステージでパフォーマンスをやっていたり、イオンモールの吹き抜け広場でパフォーマンスをやっていたりと、ものすごく地道な活動を各地で繰り広げている。一方で、東京国際フォーラムでのライブのダイジェスト映像を見ると、ビッグアーティストのステージセット並の演出が施されている。そのちぐはぐさがミステリアスだ。

映像をあれこれ見てみて、「実際はバンド」というのはその通りだったのだけど、楽器がドラムとベースだけで、メインボーカル1名、その両脇にパフォーマー2名というのは型破りのバンド構成だ。

ダンサーではなく、コーラスでもなく、場を賑やかすための要員がバンドにいるのって、少なくとも日本ではほとんど例がないはずだ。僕が知っているのは米米CLUBで、他には電気グルーヴ、初期の東京スカパラダイスオーケストラくらいだ。

この不思議なグループを調べているうちにどんどん魅力に惹き込まれ、10月末に上野で行われた野外イベント「シタマチ.ハロウィン2023」に登場した「ジュリアナの祟り」のステージを見に行った。しかも、3日の開催期間中、2ステージも。

僕がこのグループを家族団らんのときの話題として頻繁に取り上げていたので、2歳の弊息子タケもすっかり「ジュリアナの祟り」が好きになってしまった。「ばんばんバブリー!」と言いながら、家でもピンクのうちわを振り回している。

そして、ジュリアナの祟りは観客の掛け声としてこういう言葉がある。「ドル、ユーロ、ポンド、ペソ、ウォン円元、バブリー!」。彼は舌足らずの状態ながらも、この言葉をなんとか喋ろうとしている。

「ドル!ユーロ!」までは言えるのだけど、その後はわからなくなって、最後は「バブリー!」と叫んで帳尻をあわせる。

僕が一緒になって掛け声をかけようとすると、「待って!お父さん待って!タケちゃんがやる!」と言って僕を静止する。その静止の言葉をかけている間に曲はどんどん先に進んでいってしまうので、彼はとても悔しそうだ。

1ヶ月ちょっとで、タケは合計3回も「ジュリアナの祟り」のステージを見て、家ではYouTubeの動画を見ている。今後彼がどんな音楽やパフォーマンスを好むようになるのか、親としてとても気になる。

(2023.10.27)

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