半世紀ぶりに日の目を見た服

実家帰省にあたり、弊息子タケにはジャケットを着せた。

昔、実家の母から「もしタケちゃんが着てくれるなら」と送られてきた古着だ。もともとは、僕の兄が3歳のときに着たものだという。七五三かなにかで、服を買ったのだろうか?

僕の兄貴が着たということは、そのお下がりを僕も着たはずだ。でも、全く記憶に残っていない。

昔は、お祝いごとがあればこういう服をわざわざ買ったんだな、と感心する。そしてファストファッションなんて存在しない時代だからしっかりした生地の服で、そのお陰で半世紀が経ってもぜんぜん着用に支障がない。

また、そんな服をわざわざ保管していたというのも驚きだ。僕らの親世代くらいまでは、やたらと物持ちがよく、捨てずにものをとっておくことをやっていた。その恩恵を今こういう形で受けるとは。

僕の兄には、二人の娘がいる。なので、この服が日の目を見ることはなかった。また、僕自身は45歳まで独身だったため、親としては男の子が生まれることは諦めていたはずだ。そんなときに僕が電撃結婚で、弊息子タケが生まれたのだから、母は相当嬉しかったはずだ。半世紀寝かせていたあの服が日の目を見る!と。

ダブルのスーツで、昔の服らしく肩がシャキッとしたラインに仕立ててある。素人の僕が今見ても、今風ではないデザインで、だからこそ新鮮なかっこよさがある。

この服を彼が着られるのは、せいぜい1年がやっとだ。彼がどんどん成長していってしまうからだ。一方で、その1年の間でもこの服を着る機会というのは限られる。さすがに普段遣いでこの服は使えないからだ。

汚れてもいいからこの服をジャンジャン着てもらおう、という考えはあるにはある。しかし、タケにとっては、「重たくて暑い」と感じるようで、この服は不評だ。隙あらば脱ぎすてようとする。

(2023.12.28)

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