
我が家の冷凍庫は、常にパンパンだ。
もちろん、僕の晩酌(炭酸水)用の氷や、賞味期限が怪しい冷凍食品も鎮座しているけれど、それ以上に圧倒的な勢力を誇っているのが「保冷剤」だったりする。
ケーキを買えば付いてくる。魚を買えば付いてくる。
そんな、世間一般では「いつの間にか溜まって捨て時に困るゴミ」扱いされる彼らが、我が家では「現代の万能薬」として弊息子タケの専属ドクターの役割を担っている。
タケへの保冷剤の出番は、なかなかに高い。
熱を出したときに脇の下を冷やす、なんていうのは序の口だ。
ちょっと柱に頭をぶつけた、椅子から転びそうになって膝を打った・・・そんな「小規模な悲劇」が起こるたび、彼は泣き叫ぶよりも先に冷凍庫へダッシュする。
そして、慣れた手つきで保冷剤を取り出し、患部に当てる。
保育園の先生方も、何かあれば保冷剤を多用する方針で、タケの保冷剤リテラシーは日々磨かれている。
最近のトレンドは、「かゆみ」への転用だ。
虫に刺されたのか、あるいは裏起毛の服で蒸れて痒くなったのかは定かではないが、タケが「皮膚がかゆい!」と訴え始めた。
普通なら、ここで「ムヒ」の出番だ。
しかし、タケは断固として拒否する。
「ムヒ、いやだ! 保冷剤がいい!」
・・・いや、薬を塗ったほうが早いでしょ、という僕の正論は信用されず、保冷剤の冷たさのみが信用されるのだった。
彼は、服の上からかゆい場所に保冷剤を押し当て、それをゴムバンドでぐるぐる巻きにして体に固定している。本人曰く、「冷たいほうが治る気がする」とのこと。
打撲、発熱、そして炎症によるかゆみ。
人類が長年かけて開発してきた医薬品の数々を、タケは保冷剤という万能薬で対処していく。
結局、タケは保冷剤を体に巻き付けたまま、満足げな顔で眠りについた。
かゆみにも痛みにも効き、熱まで下げてくれる。
そんな便利な保冷剤だが、明日の朝、布団の中でぐにゃぐにゃになった保冷剤を回収するのはどうせ僕の役目なんだろう。
(2026.01.23)

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