
世の中には、センスの塊のような人間がいる。
僕のような、事あるごとに「コスパ」だの「合理性」だのを振りかざして生きている人間には、逆立ちしても思いつかないような贈り物をさらりとやってのける手合いだ。言い方を変えれば、「若気の至り」を至り続けられる才能の持ち主、ともいえる。
先日、いしの友人たちから、第二子リョウの誕生祝いをいただいた。
第一子タケの時もそうだったが、彼たちの選球眼は、もはや地上にはない。
届いた封筒を開けて、絶句した。
そこには、仰々しい証明書とともに「星の命名権」の文字が躍っていた。
星、だ。あの、夜空に光る、核融合反応の塊だ。
かつてタケが産まれた際、同じ友人たちから贈られたのは「シーランド公国の男爵(Baron)」の位だった。
わずか数千円でイギリス沖の海上要塞跡に出来た「自称独立国家」の貴族になれるという、ネタとしては最高峰の逸品だ。
おかげで我が家には、「おかでん(平民)」「いし(平民)」「タケ(男爵)」という、歪な階級社会が爆誕した。
親がせっせとオムツを替えている相手は、爵位持ちの貴族様なのだ。
このサイトでは「弊息子タケ」と呼称しているが、実は貴族なので「弊」呼ばわりするのは正しくない。
そして今回、リョウに与えられたのは「宇宙の構成要素の一つ」としての名前だ。
貴族の次は、天体か。
この友人たちのインフレ率はどうなっているんだ。次があるとしたら、もう八百万(やおよろず)の神の一人にでもなるしかない。
送られてきた座標を確認する。
もちろん、肉眼で見えるような一等星ではない。天体望遠鏡を駆使してようやく「あ、これかな?」と特定できるレベルの、ささやかな星だと思う。ネーミングライツが売りに出るくらいだから、天文台クラスの天体望遠鏡でようやく見える化見えないかレベルの星じゃなかろうか。
だが、それがいい。
「あそこに、リョウの名前がついた星がある」
そう思って夜空を見上げる時間は、プライスレスだ。いや、実際には命名権という対価が発生しているわけだが、それを野暮と言ってはいけない。
それにしても、困ったことになった。
我が家のカーストがさらに複雑化したからだ。
・リョウ:星(天体)
・タケ:男爵(貴族)
・おかでん・いし:平民(納税者)
天体 > 貴族 > 平民。
生物学的な親子関係など、宇宙の理(ことわり)の前では無力に等しい。
僕がいそいそとあやしている相手は、今や全宇宙にその名を刻んだ「星」なのだから。
むしろ、リョウが大きくなった時、この証明書を見せてやりたい。
「お前が産まれた時、お母さんの愉快な友人たちが、お前のために宇宙の一部を切り取ってくれたんだぞ」と。
タケには領土(公称)があり、リョウには星がある。
一方、その父親である僕はといえば、借金こそあれ、資産はぜんぜんない。
いずれ、息子たちに老後の世話をしてもらおうと思う。そのためにも、今あるお金は「宵越しのカネは持たねぇ」と使い切ってしまい、いさぎよく息子たちのお世話になるのが吉だ。
(2026.01.27)

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