需要と供給・そりゃちょっと高すぎる!

なーにが「でふれすぱいらる」だぁっ!

「こりゃどんどん物価が安くなってお買い得になるに違いない」と、毎日近くの自動販売機のジュースが120円から110円に下がらないか、物陰から窺っていたんだけどちーーーっともやすくなりゃしねぇ。

通勤定期の価値が目減りするんじゃないかと回数券で暮らしてみたけど、運賃はいっこうにさがりゃしねぇ。ついつい、「デフレスパイラルはまだですか?」と駅員に聞いてみて、「なんですかそりは?」と逆に聞き返されたりなんかして。

中華料理屋なんかで、「デフレスパイラルはじめました」って張り紙がどこかにされていないものだろうか、と期待するもみごと玉砕。唯一みかけた「デフレスパイラル」が、閉店間際のスーパーのお総菜売場だけだったというから悲しい。やるじゃんサカイヤ経済企画庁長官、景気は下げ止まりつつあるぜ、やっぱ。

とまあ、理不尽な思いこみで勝手に世の中に希望を抱くのは勝手だけど、やっぱりそうはいっても「こりゃちょっと物価が違うんじゃないのか?」というモノが存在するってのも事実。今日は、そんな不埒なものについて取り上げてみたい。

先日、東京ドームでプロレスを観戦する機会があったんだけど、ここで買ったビール、高かったなあ。いっぱい800円ですぜ、800円。ちょっと大きめの紙コップとはいえ、量は500mlは入らない程度。500mlといえば、ロング缶相当だけど、市販ロング缶は300円(実勢価格は270円程度)。ざっと2.6倍のお値段。なんじゃあ、この値段は。

あまりに高いので、「ひょっとして金粉でも入っているのか、それともプレミアム品なのか」と泡の奥を探ってみたりなんかしたが、やっぱりただのビールだった。単なるビールをこのお値段で提供しているだけで、値段が高いなりの細工は何もなされていないと気づくのに、数分を要してしまった。

それくらい、この値段は驚異。いや、正直言って感動してしまったね、「そうか、800円もの大金を払ってビールを飲めるようになるくらい今の日本は裕福になったのだな、ご先祖様アリガトウ」って。だって、いくら物価が上がったご時世とはいえ、今でも800円といえば安くないお金でっせ、旦那。CDシングル1枚買えるし、そこらの食堂で定食を食べたってお釣りがくるくらいだ。なんで手間暇かけた定食がビールいっぱいよりも安いんだろう。なんでそんなお金を払ってまで観客はビールを飲むのだろう。

いやそれはビールには酒税ってのがあってね、価格のうち約半分が国に・・・なんて話はつまらんので却下。ンなうんちく語ったところで、なーんら懐具合が良くなるわけでもなし。

ひょっとして売り子のおねーちゃんがビールの代金のうち相当量を占めているんじゃなかろうか、ってのが真っ先に思い浮かぶ。「・・・ということは、『ねーちゃんこっちきて酌せんかい』とかお尻をぺろんと触るのは料金に含まれているんだろうか違うのだろうか」って気になって気になって仕方がない。さらに、「ひょっとしてビールを売っている彼女たちは『水商売』という枠にくくられてしまうんだろうか」なんて考えこんじゃったりして。

そんな時、相当おもしろいサイトを見つけたのでご紹介。
「TOKYO DOME 元売り子のつぶやき」(既にこのサイトは無くなっています)

東京ドームでまさしくビールの売り子をやっていたヒトの体験記。4年がかりの記録で、裏事情がわかってとてもおもしろい。これを読んでいると、やっぱり売り子さん自身も800円という値段設定はぼったくりだと感じているようだ。売っている側が「こりゃぼったくりだ」って思っているようじゃ、本当にそうなんだろう。

ここまで高い値段で平然と売ることができる、ってのは需要と供給のバランスが800円という値で釣り合っているからに違いない。誰だ、こんな高値で安定させたバカ消費者は・・・と一人腹を立ててみたモノの、腹が立ったらのどが渇いてついつい「あ、ビール1杯ください」って注文する始末。これだからビールは高いままなんだな、とさっきまでの「義憤」が「やりばのない怒り」にシフトしてしまった。

野球場へは危険防止の為に缶の持ち込みは禁止されている。だから、事実上ビールの持ち込みはできない。まさか水筒にビール詰めて持ってくるヤツはいるまい。そんな「無菌状態」の中だから、高値でビールを売りつけても売れるのは当然だ。ビール業者は、居心地の良い環境にあぐらをかいていると言われても仕方がないわな、これじゃ。

だけど、考えてみりゃ、観戦中席を立つことなくビールにありつけるのだから、ある程度高くても当然なのかなあ・・・って面もある。日本人は無形の「サービス」の対価についてはてんで無頓着で、タダだと思っちゃう傾向が強いけど、この「球場のビールは高すぎる」ってのはそこらへんの影響もあるだろう。ピザ屋の宅配みたいなもんだ、少々高くなっても文句を言っちゃいかん。売り子さんがビールを運んでくるサービスに対して、きちっと評価しそのお金は払うべきだろう。

まあ、そうは言っても大酒飲みの俺はちょっとでも安いビールの方がウレシい。ってわけでわざわざ売店の方まで自ら足を運んで、ビールを買おうとしたのだが・・・げふっ、なんじゃこりゃ。売り子さんが売っている値段と1円も違わない、800円でビールを売ってるじゃねーかっ!何だよそれ、売り子さんのサービスの対価だとかなんだかんだ言ってその高値を正当化してやろうとした矢先に。じゃあ何だ、売り子さんの労働ってのは無償か、売り子さんはドレイか。やっぱおかしいぜ、球場の値段は。

ビールメーカーは大至急、ペットボトルや紙パックのビールを造るべきだ。絶対、売れる。炭酸飲料であるコカコーラのペットボトルがあるんだから、ビールでできないわけがない。これなら、心おきなく球場にビールを持ち込んで気持ちよく痛飲できる。そうなったとき、今まであぐらをかき続けてきたビール屋がどういう態度を示すか、非常におもしろそうだ。ビールだけに、泡くって値段を下げてきたりなんかして。

ただねえ、やっぱそこは日本人っつーか裕福な国っつーかだな、やっぱり持ち込むヤツってのはあんまりいないと思うんだな。「面倒だから」とか「冷たいのが飲みたいから」ってお坊ちゃまな理由で、せっかく安いペットボトルビールを持ち込まないに決まってる。くぅぉりゃぁぁぁ、そんな事やってるからビールが安くならないんじゃぁぁ、一致団結して勝利を導きだせぇぇっ!と指導してやりたくなるココロをぐっとこらえる事になる。

そんな事を考えながら九段下から日本武道館に向かって歩いていたら、弁当やビールを売る屋台があった。「武道館内で買うと、お弁当1000円はするよ!安く買うならここしかないよ!」「ここから先武道館までビールは売っていませーん、ぜひお買い求めください!」・・・ビールの値段を見ると、350mlで350円。あーあ。結局こうなるのだなあ。いくら会場内でどーのこーのしたところで、会場まで道すがらの屋台が値段をつり上げて売りゃ、なーんも問題は解決しやしない。やってるこたぁ、ダフ屋と一緒じゃんかよ。

ちなみに、「しゃーない、買うか」とそこで買ったビールを持って日本武道館についたら、武道館売店は一本300円でビールを売っていた。ハメやがった!売ってるじゃねーかよ、ビールを!

あとで思い返してみると、あのときビールの屋台ねーちゃんは「ここから先武道館まで」ビールが売られていないって言ってたっけ。要するに、道中にはビールは売られていませんよ、でも武道館では売っていますよってワケだ。なんちゅー汚い手を使うんだ、と怒る以上に「いやあ見事にやられたな」と感心しちまった。この屋台、「武道館にはビールが無い」と思いこみかねない内容を叫んで、武道館よりも高いビールを売ってたんだから!いやあ、商魂ってのはたくましい。この場においては、燃える闘魂なんて案外大したことがない。燃えるのは商魂だった、ってわけ。

(1999.05.22)

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