おかでん家実家では、毎年お正月三が日の朝だけ、南部鉄器の燗瓶と漆塗りの盃が登場する。
燗瓶といっても、お酒をお燗するわけではなく、単なる常温酒の徳利がわりだ。とても重たく、中にどれだけお酒が残っているのかさっぱりわからない。
わからないから、
「おや、まだ出てくるな」
「じゃあなくなるまで飲んで、それで終わりにしよう」
「おっと、そう言っているうちに終わってしまった」
「それじゃあ寂しいじゃないか、もうちょっと足そう」
なんて会話が親子でなされ、酒量が増えたものだ。
今となっては僕はお酒をやめてしまったので、お正月の盃は形式だけいただいている。飲んだふり、だ。父親も、高齢になって飲む量が減った。
漆塗りの盃と、盃台。なにやら高級な予感がするが、これは僕が物心ついた時点ですでに我が家にあった。おそらく、半世紀以上使われているはずだ。
良いものを大事に使っていれば、かなり長期間使い続けることができるものだな。
こうして、たった3日間、家族の中だけで数回お酒のやりとりが行われただけでまた酒器は片付けられるのだった。来年、また日の目をみるまで。
(2022.01.01)
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