
弊息子タケ、エピペンを処方される。
食べものを食べた際にアレルギーでアナフィラキシー症状を呈した際の緊急処置用の薬だ。
液状のアドレナリンが注射器に入っていて、アナフィラキシーショックの際には本人による自己注射、または本人が注射できる状況ではない場合は家族など周囲の大人が太ももに注射を打つことになる。
薬の外箱には「劇」と赤字で書かれていて、ドキッとする。
医師や看護師といった、注射器に慣れていない人がこのエピペンを使うことが想定されている。そのため、箱にはエピペン本体と、それを形が似た「練習用トレーナー」という模擬注射器が入っている。いざという時のために訓練をしておいてくれ、というわけだ。
病院で処方箋を書いてもらって、薬局で処方されるものだと思っていたが、病院の先生から箱を手渡されたのでびっくりした。院内処方どころか、先生処方というのは体験したことがないからだ。
なんでこんな特殊なことをやるのかというと、エピペンの危険性を十分に理解しました、という承諾書のようなものに医師と保護者が連盟でサインしなければならないからだ。そしてエピペンの製造番号は控えられ、どのエピペンが弊息子タケのものなのかが管理されることになる。それくらい、危険な薬だ。
2箱処方されたのは、エピペン1本は護身用としてタケと行動を共にし、あと1本は保育園に預けるためだ。これは、今後ずっと彼の人生において続くことになるのだろう。
僕ら両親や保育園は、彼の食事に対してかなり警戒して日々接しているし、親として「危険な料理」の勘所はわかってきたつもりだ。なので僕らの目の届くところに彼がいるときは、比較的アナフィラキシーのリスクは低い。
一方で怖いのが、第三者によるゲリラ攻撃だ。「友だちからお土産を貰った」とか「持参したお弁当を分け合った」など、命にかかわるから絶対にやめてほしい。今のうちからタケには「人から貰ったものは絶対に食べないこと」と教えているけれど、どこまで彼が行動を徹底できるかは疑問だ。
お年寄り、とくばあさんが「あらー、かわいいわねぇ、これあげる」と初対面にもかかわらずタケに食べ物を渡してくるのは、ゾッとする行いだ。今はまだ彼の傍らに必ず僕ら親が控えているので、「貰ったものをタケに与えない」というコントロールができる。でもいずれ彼が一人で行動するようになると、彼自らが判断しなくちゃいけなくなる。
「たぶん大丈夫だと思う」という子どもの判断任せだと、取り返しがつかないことになる。なので、「貰ったものは絶対に食べない。そもそも貰わない」という基本動作を徹底していくしかない。
エピペンを携帯していれば大丈夫、というわけではない。これはあくまでも死なないように応急処置するためのものだ。エピペンを使ったら、救急車で病院に行かなくちゃいけない。なので、この伝家の宝刀は使わないまま、宝の持ち腐れで終わってもらわないと困る。
ただ、エピペンが処方されたことによって、親としてはやや安心した気持ちもある。山奥や離島といった医療へのアクセスが難しい場所に旅行した際、エピペンがあることで応急処置が可能になるからだ。これまで、彼は頓服薬として「アレグラ」しか処方されていなかった。アレグラといえば、花粉症や鼻炎の薬でおなじみの、まさにあの薬のことだ。抗ヒスタミン薬。年端も行かない子どもの場合、そんな薬しか飲めないので、万が一があったときはお手上げに等しかった。それが今回、エピペンが処方されたことで「保険を手に入れた」感はある。
今後も引き続き、彼の食事には注意を払いつつ、子どもの成長を見届けようと思う。
(2024.02.28)
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