弊息子の記念写真を撮った際に感じた、写真館ビジネスモデルのモヤモヤさについて語る

以下の内容は、『新写真論 スマホと顔』などの著述がある、フォトグラファー・文筆家の大山顕さん宛に送った文章をほぼ転載する。(若干の改変あり)

大山さんが配信している番組「都市を現像する」へのお便りとして送ったものだ。大山さんもこの文章は興味深く読んでくださったようで、今後の配信の中で取り上げられるかもしれない。

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最近モヤモヤしたことを共有します。

先日、弊息子が1歳の誕生日ということで、ある多舗展開している写真館で記念写真を撮影してきました。

お宮参りのときも利用したので、この手の写真館ビジネスが商売っ気たっぷりなのはわかっていました。それでも今回改めて「おおぅ・・・」と思わされました。

お店にある衣装は何着選んでもOK、撮影料は一律3,000円(税込3,300円)。

あれもこれもと衣装を選ぶと、当然撮影枚数が増えます。撮られた写真はどれも良い出来なので、ついプリントする枚数が増えてしまい、それでお店が儲かる仕組みです。

ここまではよくわかる。

そして、写真のデジタルデータを単品売りせず、必ずプリントやアルバム、キーホルダーへの印刷といった「物理的な商品」とのセット売りになっています。これもまあ、納得はできないですが理解できます。商売ですし。

しかし、「50,000円以上のプリントのお買い上げがないと、そもそもデジタルデータは売らない」と言われたのには驚きました。えっ、僕らが欲しいのはデジタルデータであって、プリントなんておまけなのに。

デジタルデータがほしければ、

  • アルバム作成やプリントなどで50,000円以上の注文をし、さらにダウンロードなら3,000円、CD-Rなら5,000円を別途支払う
  • データ提供もサービスのうちに組み込まれた、お得なセットメニュー(アルバムやパネル作成がセットになったもの。七五三向けやお宮参り向けなど様々なセットがある)を注文する
  • 撮影から1年たったのち、画質が落ちたデータ(1MB/枚程度)を1データ400円で購入

の3択になります。

そして、お店では聞かされなかったのですが、後で調べてみるとjpgファイル1つにつき5,000円という値段でバラ売りもやっているようです。

結局、この写真館はお店推奨のセットメニューにお客さんを誘導し、さらに「両家の実家用に」と追加注文を積み上げ、客単価を50,000円以上にしたいのだと思われます。

僕ら夫婦は、デジタルデータ欲しさにセットメニューを選択せざるを得ず、大して欲しくもないアルバムを作ることになりました。デジタルデータがもらえないなら撮影した意味がない、とまで思ったからです。

・・・そこで気がついたんですが、もはや写真というのは「プリントしたものは従」であり、「デジタルのほうが主」だな、ということです。そして、デジタルデータを人質として写真館に押さえられてしまうと、客は従順にお金を出してしまうんだな、とも思いました。

昔から、写真館の撮影ではネガをもらえないことがありました。それは特殊なフィルムを使っていたり、プリントが特殊なので写真館にお願いせざるをえないのだろう、と理解していました。

しかし今やデジタル撮影の時代。

デジタルデータの提供に条件が付くのは完全に写真館側の都合なので、モヤモヤさせられました。

デジタルデータの必然性は、デバイスの発展に依る要素が強いですが、「写真をアルバムに保存しても、見返す機会がなかなかない」という問題もあると思います。でかくてごついアルバムを押入れに仕舞っても、見たい時に見られない。

情報過多の時代に生きていく中で、重たくて大きなアルバム、サイズが大きい四つ切り写真といったものをわざわざ引っ張り出して見ようと思わない。

今や、写真もすぐに検索ができる対象でないと、他の様々な情報に埋没してしまう存在だと思います。

それよりも、すぐに過去を検索できるデータ形式の写真のほうが便利ですし、Googleフォトのように勝手に「1年前のあなた」みたいなレコメンドがあれば「おお、懐かしいなあ」と思えてありがたいです。自分の記憶と思い出をGoogleが勝手にコントロールすることへの抵抗感はありますが。

人々の「過去を懐かしがりたい」という気持ちは今も昔も変わらないと思います。

しかし、過去を懐かしがる余裕が日常生活でなかなか確保できないので、「いかに手軽に過去を振り返ることができるか」は大事なことだと僕は考えます。

前回お送りしたお便りの追加。

専門知識がないので適当ですが、僕が考える写真と利用者の関係性というのは以下のように変化していったと思っています。

(1)写真館で撮影
家族がキメたポーズで撮影
出来上がった「印画紙の写真」「写真を綴ったアルバム」が成果物
ネガは成果物として納品されない

(2)個人所有カメラの普及
撮影場所、撮影対象の自由化
ネガとポジ、両方が成果物
「焼きまし」したプリントを写真に写った人に配る/焼きましのリクエストに応える
※ネガを個人で保管し、焼きましに備えておく

(3)写ルンですの登場
(2)の深堀り。スナップ写真増加、キメたポーズ以外の写真も増える
写真撮影の大衆化、撮影枚数の増加
現像・プリント時間の短縮。フィルム預けから30分で仕上がる店登場
「写真屋さん45」のようにフィルム無料の店舗も登場
※撮影から画像確認までの短縮化、現在の「プレビュー」への道筋

(4)デジカメ・ガラケー写メの登場
デジタルデータでの保存
撮影後すぐに閲覧可能
ネットで共有は可能だが、環境がまだ未成熟

(5)スマホ(およびスマホカメラ)の登場
SNSで写真を共有。
時間や場所、写っている人が自動的にタグ付け。整理された状態で保管。
プリントしたければ家電量販店の機械や専門店、コンビニのマルチメディア端末を利用
そもそも写真をやたら撮影するようになり、プリントアウトを前提とした撮影はしていない

技術の進歩でじわじわと変化していき、今やすっかり「データが写真である」と思い込んでいます。そんな中、子どもの節目ということで(1)の写真館を利用したら、「データが欲しければ条件がある」と言われてびっくりした、というわけです。

なぜなら、僕らは「プロが撮影したデータを貰いに」写真館で撮影してもらったつもりだったのに、写真館は「プリントやアルバムを買ってください。その後にオプションとしてデータを別売りします」と言う。それで頭が混乱したわけです。

しかも、アルバムに採用する写真を選ぶ際、目の前のタブレットに撮影された写真がずらっと並ぶわけですよ。

「えっ、これ今すぐ欲しいんですけど?」と思うわけですが、くれない。

「良いと思った写真に印をつけてください」
「それ以外の写真は?」
「アルバムには使わないので、破棄します」
「破棄しないで、データだけ欲しいです」
「それはできません。アルバムやプリントに使ったデータだけをお売りしています」
※しかもデータの提供は、アルバム引き渡しと同じタイミング(約2週間後)。

これは切ない。

今回の写真館も、たぶんデジタルデータこそが客が欲しい商品だということをわかっているのでしょう。だから敢えて

「大して欲しくもないであろうアルバムなどをたくさん買ってもらう」

ということを先にやって、その後にデジタルデータを提供するのでしょう。
写真業界の抱き合わせ商法。しかも、抱き合わせになっているのはデジタルデータではなく、プリントされた写真という主客逆転した状況です。


冒頭の、「自分が考える写真の変遷」の中には、敢えて
「ポラロイド/チェキ」と「プリクラ」の話は入れていません。ややこしくなるからです。

プリクラについて考えてみると、「撮影一回限りのポラロイド的要素」と「写真が何枚もプリントされたシールで他人と共有できる、デジタルデータ的要素」の中間に位置しているように思えます。

でも、今だったらわざわざシールにするのは面倒で、データを友達とシェアした方が便利なのでは?・・・と思って調べてみました。

すると、ああやっぱり。今のプリクラってデータダウンロードが出来るんですね。
今更かもしれないですが、知らなかったです。

https://puri.sega.jp/purikuraon/

↑のセガのサービスも、「データを全部ダウンロードしたかったら、有料会員になってね!」というビジネスモデルになっています。

スタジオアリスにしろ、セガにしろ、「データ提供は当然基本料金の中に含まれています」という形にはせず、別料金にする、というのが興味深いです。

(2022.03.13)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • ながさん>
    お客の立場としては、料金積み上げ方式だとサッパリしてわかりやすいんですよね。
    ・撮影料1カットにつき●円
    ・レンタル衣装1セットにつき●円
    ・データ提供料●円
    ・プリント料 △サイズだと●円、◇サイズだと●円・・・
    といった感じで。

    そうなると、消費者は最初から財布の紐を絞ってくるのがわかりきっているので、「衣装は何着でも無料」と撒き餌を撒く。

    衣装1着ならそんなに高額にならないかな?と思っていたら、その衣装1着でもセットやアングルを変えてもう一枚撮ったり、子どもだけではなく親も一緒に入ったり、バリエーションがどんどん増える。
    「えっ、1枚じゃ済まないの?」と大人としては唐突感を覚えるわけです。

    で、プロが撮った写真なんだから、そりゃあどの写真も欲しくなりますわ。

    結果、お店の思惑通りにまとまったお金を支払うけれど、顧客満足度としては結構低い、というギャップが生まれています。

    だって、アルバム収納用に四つ切り写真3枚がプリントされたんだけど、それってアルバムに挟んだあと1度たりとも見返していないです。なんのために撮影したんだ?状態です。なんのため?そりゃもちろんデジタルデータのためですよお!

    ここまでしてゲットしたデジタルデータは、ダイニングにおいてあるAmazon Echo Showのデジタルフォトフレームで繰り返し投影され、何百回も見て僕らを微笑ませてくれています。アルバム写真とのギャップたるや!

  • zennさん>
    この写真館がコスプレ衣装を充実させている意味がよくわかりました。
    zennさんおっしゃるように、「だったら自分で撮るわー」という人が出てきてもおかしくない。それでも写真館に優位性がまだあるのは、「気軽にいろいろなコスプレができます!」という要素があるからです。

    あれ?つまり、「家族の記念写真」というのが、まるでハロウィンの仮装のように、お祭りであり虚構の世界に変化していっている、ということか。記念写真ってなんだろうな。素の子どもを写すのではなく、コスプレさせた子どもの写真こそが「記念」なんだから。
    でもまあ、還暦の方が赤いちゃんちゃんこを羽織って写真を撮る文化が日本にはあったし、それと一緒と思えば違和感はないか。

  • いつも楽しく拝読しています。
    今、写真代はこんなに高いのですね。十年前も、大手は画像データ入手にはセット購入が必要だったけど、こんなにしなかったと思います。
    個人経営の写真館だと、撮影の合間に個人のカメラで撮影するのもアリでした。
    今はご指摘の通りスマホの時代で、運動会や卒業式にカメラやビデオを持ち込む人は少数派となってしまいました。
    記念写真の需要が下がる中、生き残るための一つの方法なのでしょうが、価格高騰で顧客を失うのもどうかなと思います。
    読んでいて色々考えさせられる記事でした。

  • そんなことになってましたか。全然知らなかった。
    逆に言うと(多分にうがった意見ですが)一眼をはじめとするカメラ所有者の優位性が高まる?かもしれませんね。これを機にみんなカメラを買おう!需要が増えればきっとボディもレンズも今より安くなるはず。(安易かつ自分勝手な意見だなぁ)
    まぁそれはともかくセルフ撮影の素晴らしさが見直されるといいですなぁ。その実践者の一人おかでんさんにはこれからも精進を期待します。
    なお二宮和也君主演の「浅田家」は必見?まもなくAmazon Primeで無料配信されるらしい…

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