コロナ陽性者の生活(東京都の場合:2022年6月)

保育園でコロナ陽性者が出た、ということで弊息子タケは一週間の自宅待機となった。休園になったのに加え、タケ自身が濃厚接触者になったからだ。

保育園主導でPCR検査を行ったし、あとはもう一週間家で過ごすしかない。

あわせて読みたい
自宅でモンテッソーリ(輪投げの要領) 弊息子タケ、保育園がコロナ休園のため自宅待機中。 コロナ休園決定の通知を受けた日の夕方、家族3人でPCR検査を受けて陰性を確認したのでひとまず安心だが、濃厚接触者...

息子に外出禁止令が出た、ということは、連帯責任で保護者である僕も外出禁止になる。なにせ1歳児なので、彼を一人家に置いて僕だけ外出、というわけにはいかないからだ。

いしは普段どおり働きに出ている。濃厚接触者の濃厚接触者は濃厚接触者ではないからだ。何を言っているのか意味がわからないが、そういうことだ。「タケ、自宅待機!」と決まった直後から、あれこれ調べまくってそういうことだとわかった。

内閣府が言ってること、厚生労働省が言っていること、東京都が言っていること、都内の僕が住む自治体が言っていること、他の自治体が言っていること、それぞれ微妙にニュアンスがずれていたりする。そのズレをどう補正して理解するのか、とても難しい。

そして、コロナ対策や政策は刻一刻と変わっていく。調べたページの情報が古かった!なんてことに途中で気づいて、舌打ちしてまた調べ直すことが何度もあった。

いしは働いているけれど、無敵のテレワーカーであるはずの僕が働けなくなった。なにしろ、タケが家にいるからだ。さすがに1歳児を傍らに置いて仕事なんてできるわけがない。それは会社からするとサボりだ。

そういえば会社の制度で、「子どもの休校・休園にともなって業務が遂行できなくなった場合は有給の特別休暇を付与する(年次有給休暇とは別に)」というのがあったな・・・と思って社内ルールを調べてみた。すると、「※緊急事態宣言が出ている時に限る」となっていいてがっかりした。駄目じゃん、今、緊急事態宣言は出ていないぞ。

ベビーシッターを呼ぶことさえできず、かといって仕事が忙しい時期なんだけどなぁ、とぼやいていたら、保育園から電話がかかってきた。園長先生からの電話なので何事かと思ったら、「タケちゃん、陽性です」と。あらら、そうきたか。

さあこれでゲームチェンジだ。

これまで僕といしは「濃厚接触者の濃厚接触者」であり、身柄は自由だった。しかしこの瞬間から、「陽性者の親」であり、つまり「濃厚接触者自身」になってしまった。はい、自宅待機1週間確定。

いしの職場に電話をかけ、タケが陽性になったことを伝えた。お昼時だったけど、当然いしはその時点で業務が強制終了だ。仕事を投げ出して自宅に帰らないといけなくなってしまった。

一方の僕はというと、いしも自宅待機になってしまった分むしろ仕事ができる立場になった。さすが無敵のテレワーカー。

ちなみにいしは時給おいくらで働いている立場だ。一週間働けなくなった分、収入が減ってしまう。しかしその分を補填する制度は国が用意していて、手続きさえすれば休業補償金の給付がある。契約社員やパートであっても、働く予定があった、と客観的に証明できるシフト表、実際にその日は働かなかったので給料は支払わなかった、という雇用元の証明書を用意できればよい。

こういう制度は、知らない人が損をする。本当に不親切だ。今回僕があれこれ調べたから、この制度について申請ができた。

だから、「マイナンバーは個人情報を国に握られるから嫌だ」とかなんとか言ってないで、とっととなんでもかんでもマイナンバーに紐づけてほしい。そして僕らの生活を楽にしてほしい。「知らないと損をする」「手続きがクッソ面倒」「どうすればよいのか判断にこまる」という行政手続きをこの世の中から減らしてほしい。

ちなみにこの日の午後、電話をかけてから小一時間でいしが家に帰ってきた。ガッカリして帰ってきたかと思ったら、なにやら嬉しそうだ。よく見ると手にはケーキ屋さんの袋がある。

「これから一週間の自宅生活だと思って」

いや、ケーキは日持ちしないだろ。今日食べて終わりだろ。

陽性判定されたタケ自体がほぼ無症状で本人がケロリとしているので、親としてはその点心配していない。ただ僕としては、「仕事ができないかと思っていたら、仕事ができちゃう環境キター」ということで、これはこれで負担だ。

Googleカレンダーに日々の行動を書き込んでいる僕は、当然タケの最近の動向も記錄として残っている。何時何分にどこにいた、というレベルで語れるので、さあ保健所からの聞き取り調査かかってこい!と身構えていた。

しかし保健所からはSMSで「COCOAをインストールしてください。COCOAで陽性者登録してください」ということを何度も自動送信で機械的に言ってくる。おい勘弁してくれ、僕のスマホに入っているCOCOAに陽性者登録をしちゃうと、最近僕と会った人に「陽性者が近くにいたぞ!」と通知が行くやんけ。違う違う、僕が陽性なんじゃない。僕の息子が陽性なんだ。

保護者ということで僕に連絡が来ているけど、困ったものだ。

結局、保健所からの督促がうるさいので、自宅に置きっぱなしにしているタブレットにCOCOAを新規インストールして、そこで陽性者登録を行った。肝心の聞き取り調査はまったくなし。電話の一本すらかかってこなかった。

感染者数が多すぎて保健所が手一杯だ、と聞いていたけど、症状がないということで重点モニタリング対象扱いしてもらえなかったらしい。それはそれでちょっと残念な気はする。

陽性患者が自宅療養をする際には、「My HER-SYS」という厚生労働省謹製の体調管理・報告サイトで1日2回のバイタル報告をすることになる。保健所からはMy HER-SYSに入力してくれ、とは一言も言われなかったけど、勝手にログインして勝手に1日2回定時報告を上げた。せっかくなので。

病院への搬送が必要である、と判断されない限り、陽性患者は自宅療養かホテル療養を選択することになる。ホテル療養!面白そう!と思うが、1歳児の付き添いで親がビジネスホテルの狭い部屋に数日間閉じ込められることを想像するとぞっとする。大人はまだ我慢できるけど、子どもが遊びたすぎてストレスを溜め込む。暴れるのをなだめるのが大変だろう。

今回、一家三人とも共倒れで陽性アンド濃厚接触者なので、今更ホテルで隔離する意味がない。自宅療養とした。

東京都は、手続きをすれば自宅療養者向けに食料の配給、そしてパルスオキシメーターの貸出がある。これも、ちゃんとそれを知っていて、正しく情報にアクセスできた人だけが手続きができる。陽性患者を全数把握するのに必死な割には、その後のフォロー体制は患者および家族の任意、というのがいびつだ。

さいわい我が家には一家三人が一週間余裕で過ごせるだけの食料があったけど、これも「せっかくなので」ということで頼んでみた。そうしたら翌日に届いたのがこれ。デカいダンボール2箱、2リットルペットボトルの水6本、そしてパルスオキシメーターが入った封筒。

自分が払った住民税がこういう形で現物還付されるとは。。。と複雑な心境になる。あんまり嬉しいものじゃないな。これ、どれだけのお金と手間がかかってるんだ?ありがたいけれど、財政のことを考えるとゾッとする。

なお、配達は一般の宅配便業者ではない。陽性患者宅にお届けする、ということで特殊な配送らしい。都の委託を受けた運送会社だと思うけど、詳細は不明。少なくとも、ダンボールには配送伝票がついていない。対面で手渡し。

ダンボール2箱分の配給は強烈だ。中には食べ物がびっしり。

「新型コロナウイルス感染症 自宅で療養されるみなさまへ」と書かれた東京都のパンフレットが入っている。

パンフレットの下から、いろいろ出てくる出てくる。

ウィダーインゼリー、ポカリスウェット、レトルト味噌汁、パン、フルーツ缶、サバ缶、ツナ缶、コーン缶、ふりかけ、ナッツ、栄養バー・・・。

もう一つのダンボールにはアルファ米とかレトルトとか、カップ麺とか。

おっと、下からはそうめんも出てきた。ご丁寧にめんつゆ付きだ。

メーカーに脈略がない。どこか特定の食品メーカーや流通業者に丸投げでお願いしていたり、タイアップしているというわけではなさそうだ。これ、誰がどのように選んでいるのだろう。むしろ、これだけバラエティに富んだ内容をぎっしり箱に詰め込んだのは才能だと思う。

だって、UCCのペットボトルコーヒーまで入っているんだぜ?「病人はおかゆでも食ってろ」という単純な解釈ではなく、「自宅療養だと気が滅入りますよね。リフレッシュのためにコーヒーでも飲んでくださいね!」という心遣いがある。いしは「すごいすごい」と言いながら箱の中をひっくり返し、その後「さてこれ、どこに仕舞おうかなあ」と置き場所の心配を始めた。療養者の家庭状況とは思えない呑気さだ。

とはいえ、家族揃って一週間自宅軟禁なのは事実だ。こういう料理をありがたくいただいて、家で大人しくしていよう。

肝心の陽性患者は我が家では1歳児なわけだが、1歳児向けの食事はさすがに入っていなかった。とはいえ、おかゆやパン、レトルトなど大人向けのものでも食べられるものは多い。タケが飢えるという事態にはならなかった。

パルスオキシメーター。

噂には聞いていたけど、実物を手に取るのは初めてだ。メカ好きの僕にとってはワクワクする瞬間。

指に挟んでしばらくすると、心拍数と酸素飽和度が液晶画面に表示された。モードを切り替えると、心拍数がグラフで表示されてなんだかかっこいい。

普段使っている体温計も、これくらいメカっぽいと体温を測るのがワクワクするのに。素っ気なさすぎなんだよ、体温計。最近、保育園からの要請で園児の両親も毎日体温を測定しているから特にそう思う。(ちなみにいしは女性なので、「毎日親の体温を報告させるって、基礎体温を保育園にチェックされているようでいい気分はしない」と言っていた。なるほど・・・)

「おい陽性患者、君のためのメカだ。測ろう測ろう」

とタケを招き入れて測定してみるが、これがとても難しい。軽い力とはいえ、クリップのようなもので指を挟まれることに抵抗し、すぐに引っこ抜こうとする。ぜんぜん測定にならない。

引っこ抜かれないように反対の手を抑えていると、今度はパルスオキシメーターを挟んでいる人差し指をクイッと折り曲げて測定の邪魔をした。「大人しくしてくれ!指を曲げないでくれ!」と懇願しても、言葉がまだ通じない幼児を相手に伝わるわけがない。

寝ている間にこっそり測ろうとして勘づかれて泣かれる、なんて親と子の駆け引きがこのあと数日続くことになる。

数値は家族三人まったく問題なし。

「なんだよ面白くないな、本当にちゃんと測れているのか?」なんて言ってしまったが、もしこれで値が低かったら大変なことだ。健康で何よりだ。

(2022.06.04)

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください