ヘルパンギーナ罹患と聞いて、新潟から甘酒を買って帰る

新潟県の巻機山に登ってきた。結構きつい山だったので、山頂近くの避難小屋に一人っきりで一泊する、静かな山旅となる・・・はずだった。

夕方、東京の家から、弊息子タケがヘルパンギーナ罹患のため発熱し寝込んだ、という連絡が入った。

登頂を諦めて下山しようかとも思ったが、数時間早く帰宅したからといって彼の病状がよくなるわけではない。「子どもの体調を心配しているポーズ」で家族の内外に誠意を見せることができる程度だ。結局、予定通り巻機山を登頂し、予定通りに下山した。ただ、その間にベビーシッターの手配をどうするのか、などといしと何度もやりとりし、デジタルデトックスで気分転換とはいかなかった。これは仕方がない。

子どもがかかる病気というのは、何やら気持ち悪い名前の病気が多い。「手足口病」とか、「ヒトメタニューモウイルス感染症」とか。ヘルパンギーナ、というのも不気味な名前だ。

今回タケがかかったというヘルパンギーナは、発熱とともに咽頭部に炎症が起き、水疱になったのちそれが潰れて潰瘍になるという特徴がある病気だ。この潰瘍のせいで、飲んだり食べたりする際に激痛が走り、それが酷いと何も飲めない、食べられない状態になって衰弱することがあるという。

症状が悪いと唾液を飲むことさえ辛い、という状態になるヘルパンギーナ。できるだけタケには喉に負担がかからず、水分補給ができて、さらには栄養が摂取できるものを与えたい。そう思った僕は、新潟で甘酒を買って帰った。

新潟の銘酒として知られる「八海山」の醸造所が作る、「麹だけで作ったあまざけ」だ。

これは東京界隈のスーパーでは時々陳列されている商品であり、新潟でないと買えないものではない。たぶん、我が家の近所でも探せば売っているお店があるだろう。

しかし、僕が新潟から帰ってくるにあたって、息子の病気そっちのけで新潟のスイーツをお土産で買ってきました、と能天気でいるわけにはいかない。「遠く新潟の地でも息子のことを心配していたよ」という証として、甘酒を買った。これだったら、帰宅したその日すぐにでも彼に飲ませることができる。

いざ、山から東京の自宅に戻ってきたら、家の中から笑い声が聞こえてきた。ベビーシッターさんと楽しく遊んでいて、キャッキャと盛り上がっている真っ最中だった。どうやら、彼のヘルパンギーナは軽症で済み、発症の翌日にもかかわらず家の中で遊べるほどには回復しているようだった。

夕食時、さっそく彼にあまざけを与えてみる。

あまざけは、その名の通り甘い。しかし、飲んだことがない子どもからしたら、砂糖の甘さとは違う、何だか薄気味悪い甘さに感じるだろう。さすがに、このあまざけを彼がすんなり飲んでくれるとは思えない。なので、牛乳と混ぜたカクテルにして、与えてみた。これだったら、あまざけ独特の癖が緩和されるだろうから。

しかし、彼は一口飲んで「いらない」と言ってカップを押し返してきた。喉が痛いとか食欲がないとか関係なく、単に甘酒の味が気に入らなかったようだ。

せっかく新潟から重たい荷物として自宅に持って帰ったんだから、僕としては彼にぜひ甘酒を飲んで欲しい。ぜひ甘酒を気に入って欲しい。この日から数日間、「おいしいよ、飲んでごらん」「いらない」の押し問答を毎日繰り返すようになった。

結局彼は、甘酒を受け入れようとしなかった。子どもには甘酒は受け入れ難い味だったか。

でも、病気はそうそうに回復したので、その点は良かった。

(2023.06.19)

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