季節の風物詩はできるだけ生活に採り入れたいと思っている。
川崎大師が風鈴市をやっているという話を聞き、多摩川を越えて川崎大師までやってきた。東京に住んでいる僕らにとって、神奈川県の川崎大師は決して近い場所ではない。それでも、風鈴を愛でに行く、というのがなんだか風流な感じがする。ひとまず行ってみた。
いしは言う。「今年はあちこち行ってみれば良いんじゃないですか。その中で合う・合わない、来年はもう行かなくていいんじゃないかな?というのが見つかると思うので、来年は厳選しましょう」
ということで今年はイベントの見本市状態。右へ左へとあちこち本当によく移動している。
川崎大師の境内にテントが設営され、その下で大量の風鈴が吊り下げられて売られていた。チリンチリン、と涼やかな音がする。
全国各地の風鈴が売られているのが珍しい。陶器が有名な地域の風鈴だと土鈴だったり、金属が有名な地域だったら鉄鈴だったり、個性豊かだ。
鉄の風鈴が特に涼やかな音を立てている。ものによってはキンキンした音に聞こえる鉄鈴があるが、絶妙に柔らかい金属音を奏でる鉄鈴もあり、そういうのには心惹かれる。
ただ、我が家は普段ずっと窓を締め切って生活している。夏場、窓を開けていると熱風と砂埃が室内に入ってきてしまうからだ。「風鈴が吊り下がって良い音色を奏でている軒先」なんてものは我が家にはない。かといって、室内に吊り下げておく場所もない。買っても、置き場所がないのが現実だ。
そうか、マンションに住むということは風鈴さえもまともな置き場所がないのか、と驚いた。これまで風鈴を買おうなんて思ったことがないので、そんなことさえ気が付かなかった。
壁のピクチャーレールからぶら下げることも考えたが、2歳の子どもがいる家にとって風鈴が頭上にあるのは危ない。ガラス製ならなおさらだ。風鈴が落っこちて、割れて、その破片で子どもが怪我するというのは十分に考えられるシチュエーションだ。さて、どうしたものか。
特に解決策が思いつかなかったものの、ひとまずガラス製の風鈴を1個買った。川崎大師にて厄払いを受けているという公式の風鈴だ。縁起をかついで、というよりもこれが値段が安かったから選んだ。他の風鈴は、5,000円くらいはザラで、10,000円近くするものも売られていたのでびっくりした。風鈴って案外高いものなんだな。
色は様々あったけど、弊息子タケに選んでもらった。最近の彼は青色をとても好むので、結局青いダルマさんの模様のガラス製風鈴を買った。
他の商品より安い、といっても2,000円ちょっとの値段だった。子どもに風鈴は夏の風物詩だよ、と教えるための教材価格として買った。夫婦ふたり、または独身だったらとてもじゃないが買わない値段だ。
そんな風鈴を箱から取り出して、しげしげと眺めているタケ。
「慎重に持ってよ。落ちたら割れるからね?」
と声を掛けるが、この写真は彼が手を滑らせて風鈴を割ってしまう数秒前のもの。
つまり、この直後に風鈴を落っことして、割った。あーあ、一回も飾ることなく、2,000円がだめになっちゃった。教育効果も何もあったもんじゃない。たぶん彼は数日後にはこの風鈴のことを忘れてしまうだろうし。
「ごめんなさい、と言いなさい」
と彼に指導したけど、彼は泣いて断固としてごめんなさいを言おうとしなかった。最近の彼は「ありがとう」は言えるようになってきたのに、なんで「ごめんなさい」が言えないんだ?「ごめんね」と一言いえばすぐにその場は収まるのに、なかなか口を割ろうとしない。
2歳児にして、謝るということは嫌なことだ、という理解が頭の中にできているらしい。本当に不思議だ。
(2023.07.17)
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