好きこそものの上手なれ(とうもろこし編)

子どもの趣味嗜好、特に食の好みというのはよくわからないものだ。先日まで食べなかったものを急に食べるようになるし、その逆もある。

弊息子タケの場合、きんぴらごぼうは大好物なのに、豚汁に入っているごぼうは残す。料理の作り手としては困惑してしまう。

一方で今年の夏、急速に彼の好物ランキングが急上昇したのが、とうもろこしだ。

これまでも食べてはいたが、そこまで大好物というわけではなかった。食物の「皮」をとても嫌う彼にとって、とうもろこしも一種の皮が含まれた食材だ。

ちなみに「皮を嫌う」というのは、たとえばナスとか、枝豆とかだ。「皮!」と叫んでお皿に吐き出し、「皮、いらないよぅ」と文句を言ってそれ以降は一切食べようとしない。最近はパンの耳さえも「皮」認定して嫌がるようになった。

なのにとうもろこしが好物になったのは、きっと皮むきを体験したからだろう。

そんなわけで、今回もまるごと一本のとうもろこしを、皮むきから手伝ってもらう。

皮を引きちぎるほどの腕力はまだ彼に備わっていないので、付け根のところでまで皮をめくってもらったところで僕が引き取る。

とうもろこしに砂糖醤油を塗って魚焼きグリルで炙った、焼きとうもろこしが完成。

焼き立てなので、当然熱い。

タケは指でちょんちょんととうもろこしをつつき、「あっちぃよ、これあっちぃよ」と言う。

そして、うちわを持ってきてパタパタをあおぎはじめた。できるだけ早くとうもろこしを冷まして食べたい気持ちの現れた。

まだ手首を上手にコントロールするまで彼は成長していないので、うちわの扱いはいい加減だ。それでも、彼は熱心にうちわを仰ぐ。「パタパタ~」と効果音をつけながら。

そしてその後、とうもろこしをまるごと一本食べ始め、ぐるっと360度隅から隅まで食べてしまった。

上手なものだ。

僕から、「ほら、ここにまだ食べられるところがあるよ」なんてアドバイスをしなくても、本当に隅々まで食べてしまったからだ。

とうもろこしって、食べ方が少々難しい。欲張って深く噛みつくと、芯の部分をかじってしまってあまり美味しくない。かといって表面だけかじるわけにもいかない。「深すぎず、浅すぎず」という程度に噛みつく、その塩梅が難しい。

にもかかわらず、タケはちょうどよい深さと力加減でみるみるとうもろこしを食べている。いつの間にその極意を体得したのだろう。これぞ「好きこそものの上手なれ」だな、と思った。

(2023.08.08)

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