「トンボ、やだ」

弊息子タケはトンボが嫌いだ。

保育園帰りの夕暮れ時の路上で、ものすごく高速に飛び回る黒いトンボに遭遇するからだ。いや、あれはトンボではないのかもしれない。あまりに動きが早すぎて、飛んでいる生き物の本体が目視できないレベルだ。

そんな生き物をトンボだと思っているので、彼にとってトンボは恐怖の対象だ。

そうでなくても、昆虫というのは今どきの子どもにとってキモい存在だ。彼にとっては、アリとダンゴムシは馴染みがあってお友だちだ。ダンゴムシはよく捕まえて転がしている。セミは「怖い存在だったり、そうでない存在だったり」とときによって判断が変わる。地面に転がっている死骸をツンツンすることもあるし、恐れて大人の背後に隠れることもある。

キャンプ場を訪れた僕らを待っていたのは、数多くの赤とんぼだった。謎の黒とんぼと違い、のんびりと空を飛ぶ。一本指を空中に差し出せば、しばらくするととんぼが一休みしに飛んでくるくらい、フレンドリーだ。

そんな中でも、「とんぼ、やだ」と何度も独り言をつぶやいていた弊息子タケ。

やだといっても、そこら中をとんぼが飛んでいるし、危害を加えるわけではないのでだんだん見慣れてきたようだ。

最終的には、自分の頭の上にとんぼが止まっても追い払うことなく、じっと唇をかみしめてとんぼの触感を受け止めていた。

単に彼がとんぼの存在に気がついていなかっただけ、かもしれないけれど。

その後、彼のいとこが捕まえたとんぼを自ら掴み、とんぼがジタバタしても手を離そうとしない強心臓っぷりを発揮した。人間、慣れって大事だな、としみじみ思う。

やっぱり幼少期からいろいろな体験をさせることは大切だと思った。「見る」「聞く」は今の御時世、自宅でも学べる環境がある。しかし、「触る」とか「食べる」、「臭う」というのは、実際に現地にいかないとわからない。

わからないだけならまだ良いのだけど、彼が当初「とんぼ、やだ」と言っていたようにリジェクトするのは惜しい。体験したことがないからよくわからない、気持ち悪い、やだ、という発想だと、親としてなんだか申し訳ない気持ちになる。

なので、野外体験的なことは彼の生活に組み込んでいきたいと思っている。遠くないうちに、彼をちゃんとしたキャンプに連れていくのが当面の目標だ。

(2023.08.26)

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