「あっ、ゼレンスキー大統領だ!」と美術館で4歳児は叫んだ

最近、弊息子タケにはNHK7時のニュースを見せるようにしている。

世界情勢に明るくなってもらいたい、という高邁な精神で見せているのではない。それよりも、「そろそろ春ですねー、夏ですねー」という季節感や、風物詩を彼に見せたいと思っているからだ。

家からすぐのところにある保育園に毎日登園している彼は、そのままだと「家と、保育園の往復だけで一日が終わる」状態だ。「本当にこのままで良いのか?」と心配になって夫婦で話し合いをするほど、だ。

で、NHKのニュース。ヘッドラインニュースなので、シンプルな構成で良いと思っている。

とにかく、生後4年のタケにとって、「見てないものは知らない」。保育園に預けてさえいれば彼の知力や巧緻性が高まる、なんてことは期待できないので、家庭でなんとかしなくては。

ということでまずはニュースを見せることにした。できるだけ、毎日。

最初は、日本海側で大雪が降って日々大変だ、というニュースに彼は反応した。ニュースを見るときは必ず僕が彼の横に座り、映像の解説をする。雪のニュースのときは、「大変だね!」「ほら!こんなに積もったよ!」などと僕が声を大にして煽るので、彼も興味を持つようになった。

その次に、タケが気になり始めたのは、何やら自信満々の顔をしているアメリカ人だった。そう、トランプ大統領だ。

毎日、ニュースを見始めるときに「トランプ大統領、今日は出るかな?」「まだかな?」というし、番組冒頭のニュース見出しでトランプ大統領のサムネイル画像が小さく写っていると、「トランプ大統領だ!」と叫ぶ。子供心に、なにか惹かれるものがあるらしい。

これは実は重要なことだ。一方で、石破茂首相については、1ヶ月以上ニュースを見ても未だに名前を覚えようとしないし、「誰?」と言っている。そんな傍らで、プーチン大統領、ゼレンスキー大統領を次々と、しかも自主的に覚えていったのに。さすがに「ネタニヤフ大統領」は発音が難しすぎて無理だったけど。

それだけ、日本の政治家というのは子どもにとって魅力的に映らない、凡庸なものだということだ。もっと政治家がヒーロー然としていないといけない、と僕は思った。

ちなみに、ときどき日本政治で「各党の国会対策委員長が会合を開き・・・」などと報じられるが、それを見たタケは「おじさんばっかり」と一刀両断。ああ、子どもは素直だ。さらに追い打ちをかけて、「なんでみんな怒った顔をしてるの?」と言っていた。

そういえばトランプ大統領は、怒った顔というより得意げな顔をしていることが多い。日本の政治家で、「俺に任せろ!」的な顔をしている人って・・・いたっけ?そういう顔は日本の有権者にウケないのかもしれないが、無垢な子どもが「なんかスゲー」と言えるような政治家が日本にも現れて欲しい。

そんなある日、タケを連れて国立西洋美術館の企画展、「西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」に行ってきた。

ルネサンス期の西洋画が多いため、「聖母マリアとキリスト」とか「三賢人」とか「はりつけ」といったキリスト教をモチーフにした絵、さらにはギリシャ神話をモチーフにした絵が多い。

タケからすると、「天使」という、鳥と人間のどちらでもない存在が当たり前のように登場して、不思議がっていた。「これは何なのか?」と聞かれて、僕も答えに窮する。ええと、「神様の使い」という言い方をしても「使い」という日本語が通じないし、そもそも三位一体説のことはどうしようか、などと頭がグルグル回る。

絵を見て回っているうちに、タケがある絵を見て言った。「あっ、ゼレンスキー大統領だ!」

見ると、短いあごひげをたくわえた男性が大きな剣を持ち、こちらを見ているものだった。確かに、ゼレンスキー大統領に似ている。僕はしばらく笑ってしまった。

タケは、「なんで黒い服を着ていないの?」と言う。いや違うんだ、これはゼレンスキーじゃないんだ。

ええと、絵のタイトルは・・・「ダヴィデを装った若い男の肖像」だって。

(2025.03.28)

コメント

コメントする

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.