
世の中には「買ってよかったものランキング」という、浅ましいまでの物欲を肯定する免罪符のようなコンテンツが溢れている。
僕もかつて、その波に乗って「電動昇降スタンディングデスク」を導入した一人だ。
理由は、自分がサバイヴするためだ。
「座りすぎは死を招く」なんていう脅し文句に屈し・・・というのは口実で、実際は天板がウィーンと上下するギミックに男のロマンを感じた結果、この高い買い物を決行した。

しかし、人間というのは怠惰な生き物だ。
導入から半年も経てば、デスクは「最も座り心地の良い高さ」に固定され、滅多にそのボタンが押されることはなかった。
高価な電動モーターは、ただの「重たい脚」になった。。
ところが、事態は変わった。
我が家に第二子(通称:弊息子2、あるいはリョウ)が爆誕したからだ。
新生児という生き物は、地面との摩擦を嫌う。
背中が布団に触れた瞬間「背中スイッチ」がオンになる、という本能は、我が子たりとも例外ではなかった。
これに対抗するには、人間側が垂直二足歩行を維持し、ひたすら揺れ続けるしかない。座ったままでの抱っこでは、すぐにバレて「立てオラァ!」と0歳児に泣き叫ばれる。気合が足りないと察知する能力は、動物が持つ本能なのかもしれない。
そんな折、僕はふと、埃を被っていたデスクの「上昇ボタン」を押した。
天板がゆっくりと、僕の胸の高さまで上がってくる。
「これだ。これだよ」
赤ちゃんを抱っこしたまま、腕をデスクの天板に乗せて固定できる。
通常、抱っこというのは腕、肩、腰に全荷重がかかる過酷な労働だが、スタンディングデスクを「肘置き」として使うことで、重力が分散されるのだ。しかも、パソコン画面を見続けることができる。これなら、赤ちゃんに気合不足を勘付かれることはない。
高さ120cmの世界。そこでは、育児の苦行から少しだけ解放された。
なお、当たり前だが勤務時間中に赤ちゃんを抱っこしてあやすことはしていない。そんな暇があったら、早く仕事を終わらせたい。
(2026.03.21)

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