5歳児のローラースケート挑戦に潜む令和の公園事情と財布の危機

弊息子タケが5歳の誕生日を迎えるにあたり、「何がプレゼントで欲しい?」と聞いてみた。

てっきりカプラやレゴといったおもちゃや恐竜の人形でも要求されるかと思いきや、彼の口から飛び出したのは「ローラースケート」という、妙にアクティブな代物だった。

買ってあげること自体は簡単なのだが、親としては別の問題が頭をよぎる。

今の時代、近所でローラースケートを自由に使える場所なんて、相当に少ない。

最近の公園は、火気厳禁・ボール遊び禁止が当たり前であるように、ローラースケートやスケートボードの類いも「危険・迷惑行為」として一律で禁止されている場所だらけだ。
せっかくマイシューズを買っても、我が家の狭い廊下を往復するくらいしか使い道がない未来が容易に想像できる。

彼にその切ない日本の公園事情を説明し、「買ってあげるのは難しいけれど、代わりに思い切り滑れる専門の場所に遊びに行こう」と提案したところ、本人はあっさりと快諾。
というわけで、僕らは東京ドームシティにある「ローラースケートアリーナ」へと向かった。

ここは都内最大級の屋内ローラースケートリンクであり、僕にとっては極めて思い出深い場所でもある。

実は社会人1年目の頃、僕は毎週末のようにここに通い詰め、ローラーブレードを履いて狂ったように滑り倒していたのだ。
当時も「結構いい値段がするなぁ」とは思ったが、当時は身軽な独り身であり、就職したてで金銭感覚がまだブレブレだったこともあって、大した問題ではなかった。

しかし、子連れの親となった今、改めてレジの料金表を見上げて僕は白目を剥いた。

一般の入場料が2時間で1,200円、タケのような幼児(一般の付き添い扱い、または子供料金)でも800円から1,000円ほどかかる。
これに加えて、シューズのレンタル料が1足600円。タケを1人で放置するわけにいかないので僕も一緒に滑るとなると、2人分の利用料とレンタル代だけで、あっという間に3,000円を軽く突破していく計算だ。おいそれと気軽に通える場所ではないぞ、と現実の家計簿が脳内で警報を鳴らし始めた。

さらに追い打ちをかけるように、途中で別行動をしていたパートナーのいしと、第二子リョウがアワレみ隊の応援団よろしく合流。
リンク内に入って見学するためには、別途「付き添い入館料(500円)」が必要になる。あれよあれよという間にお札が吸い込まれ、最終的には4,000円近くの出費となり、我が家の財布のHPは見る見る削られていった。

これだけ身銭を切ったのだから、タケが夢中になって元を取る勢いで楽しんでくれれば、親としては報われるというものだ。

・・・いや、ちがうな。現実は甘くなかった。

人一倍の暑がりである彼は、安全のために義務付けられたヘルメットや肘・膝のフルプロテクターを装着された時点で、すでにへっぴり腰モードに突入していた。

リンクに入っても、少し動いては「暑い!暑い!」を連呼し、滑っている時間よりもベンチで頻繁に休憩している時間の方が明らかに長い。

(おい、こっちは時間単位でお金を払っているんだぞ。頼むから1分でも長く滑ってくれよ・・・)という言葉が喉元まで出かかったが、幼児に大人のコストパフォーマンス論を説いたところで虚しいだけなので、必死に飲み込んだ。

それでも、慣れない足元で踏ん張り続けたのだから、体力を消耗したことは間違いない。
これで帰宅後に疲れてぐっすり昼寝でもしてくれれば、僕ら夫婦にも平和な休息時間が訪れたはずだった。

だが、弊息子タケという男は、「寝ると人生の負け」だと固く信じている節がある。

限界まで疲れているくせに、意地でも寝ようとしない。
けっきょく昼寝を完全にパスした結果、日没頃には脳の制御が完全にぶっ壊れ、意味不明な奇声を発しながら親に延々とウザ絡みをしてくるという、最悪に面倒くさい怪獣へと変貌を遂げた。

彼はいつも、体力の限界を迎えるとこの「限界突破モード」になり、手がつけられなくなる。

大金を払って、挙句の果てに夜に狂暴化される。
あまりの理不尽さにすっかりうんざりした僕は、「ウェーイ」などと奇声を上げるタケに向かって、思わず本音を口走ってしまった。

「もうお前をローラースケートには連れて行きたくない」

5歳の誕生日イベントの結末としては、実にあわれな着地となったのだった。

(2026.03.07)

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