回れども回れども悟らない

先日回転寿司に行く機会があった。自宅から数駅先にあるお店なのだが、テレビで紹介されて面白そうだったからだ。

この店、ネタの数が相当多い。50種類以上はあるだろうか。何しろ、イカだけで7、8種類くらいのラインナップを持つのだから恐れ入る。寿司屋に入ってしまうとついつい全種類制覇しちゃる!という気になるものだが、こうも種類が多いと「大人しく好きなものだけ食べさせてもらいます、はい」という殊勝な気になってしまう。

30分くらいの待ち行列の後、ようやくカウンタに陣取って「さあ来る者拒まず去る者追わずで流れてくるもの片端からやっつけてやるぞ」と身を乗り出してベルトコンベヤに取り付くことができた。もちろん、傍らには準備万端の生ビールを従えて。

さあて、どれを選ぼうか・・・こういう時、一発目に何を食べるかが重要。しきりに目玉をきょろきょろさせて最初のターゲットを物色していたら・・・あっ、鶏の唐揚げが流れてきたではないか。

回転寿司でプリンやあんみつが流れてきて、ついついお子様がこの誘惑に騙されてしまうというのはよくある話だ。で、大人は「あーあ、これだから子供ってやつは。寿司屋に来てなんでデザート食べるのよ」なんていいながら苦笑するもんだ。だけど、鶏の唐揚げが流れてくるなんて、初めて聞いたし初めて見た。すなわち、激しく動揺してしまった。

いや、ここは寿司屋だ。取ってはいかん。居酒屋ではないのだから。そういい聞かせるものの、ビールと鳥唐揚げの絶妙なる組み合わせは先祖から受け継ぐ遺伝子レベルで深く刻み込まれた事実。回転寿司初っぱなから脂汗をたらしながらぐっとこらえて唐揚げを見送ることに成功。

しかし、店の人は「これぞいいカモ」と踏んだのか、これでもかこれでもかと次々に鳥の唐揚げを投入。鳥唐物量作戦にはさすがの鋼鉄の意志も突き崩されてしまい、栄えある第一口目は鶏の唐揚げになってしまった。くそっ。

で、ここで満足して終わるわけが無く、勢いが付いたビールは居酒屋のごとく景気良く消費され、それにつられてつまみとなるお寿司の皿はうず高く積まれ。お会計の時、顔が青ざめてしまったのは言うまでもない。

ここで回転寿司屋の皆様へアドバイス。薄利多売でご苦労様です、でも高収入を狙うなら、やはりお酒ですぜ、お酒。あれは数少ない粗利率の高い商品。どんどん売らなくちゃ損。で、売るためにはベルトコンベア上に「鳥の唐揚げ」とか「餃子」「コロッケ」なんて流せば万事大丈夫。お酒も売れるし、お寿司も売上が伸びること間違いないでしょう。ただし、板わさとか枝豆とか、ぽりぽり時間をかけてつまむような食材を用意したら、単なる居酒屋と化してしまいお客の回転率が下がるのでやめたほうが良いかと。

あれ?でもだよ、発想の転換で「回転居酒屋」っつーのを作ってしまえばいいんじゃないか?お茶が出る代わりに、生ビールが出てきて。つまみ類は全部ベルトコンベアで流れてくるっていうの。ただ、居酒屋の場合取扱種類が多いし調理法が様々なので、各席にはコンロが用意されていて、簡単な加熱調理はてめぇでやれ、という形にするっていうのはどうだ。

酔っ払いの服に引火して、火だるまになるという悲惨な事故が起きないことを切に望む。

(2001.03.14)

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