
京都を訪れた際、「お昼ご飯はどこにする?」と問われたので「豆腐が食べたい」と答えた。以前京都で食べた豆腐は、偶然か必然かものすごくおいしかったからだ。京都の豆腐は美味い・・・そういう印象が強かったので、「京都でお昼ご飯」を決めなければいけないときに、とっさに「豆腐」となったのだろう。
「では、湯豆腐かな」
相手は即答した。相手、といってもこのサイトでは時々登場するジーニアスだが。
なぜ南禅寺において湯豆腐が有名なのかはよくわからない。そういえば、清水寺の周辺でも湯豆腐を食べさせてくれるお店があったな。清水の舞台から飛び降りたら、そこは湯豆腐屋だった、という。豆腐が精進料理として寺社に持て囃され、自家製造していたという過去があるのかもしれない。
南禅寺に到着してみると、確かに「ゆどうふ」と書かれたお店が結構ある。われわれは、南禅寺の参拝なんてこれっぽっちも思いつかず、ひたすらお寺の周囲をうろうろしてお店を決めた。
おじゃましたお店は、お店というよりもお寺だった。お寺が湯豆腐屋をやっているのか、お寺だった建物を湯豆腐屋として利用しているのかは不明だが、とにかく門の作りからしてすごい大げさだ。恐る恐る中に入ると、そこには立派な庭園が控えている。場違いなところに来てしまったような気になってしまう。飲食代、ではなくて参拝料をとられそうだ。

下駄箱で靴を脱ぎ、廊下を歩く。店員さんにつれられて通されたところは、まるで京都の夏の風物詩・川床のようなところだった。客席はずらりと縁側に並べられているのだが、それと別にこの「川床式座席」が、庭の中に延びている。

縁側の客席。
このように、みんな庭の景色を間近に眺めながら、湯豆腐をいただいている。
ただし、雨が降ったときは吹きさらしになるため、このお店は事実上利用できなくなってしまうだろう。部屋の中はお店としては使われていないようだった。

メニューは一番安い湯豆腐コースで3000円だったと記憶している。お昼から3,000円とは結構強気の価格設定だが、この庭を見せられると文句のつけようがない。料金のうち、庭の整備代としていくらか含まれているのだろうから。
湯豆腐の鍋が届くまでの間、小皿料理で飢えをしのぐ。
この訪問は3月に行われたのだが、小春日和で快適だった。そうだ、雨以外にも、酷暑であったり厳寒の時期だと、このお店は商売あがったりだな。ちょうどいい時期に訪れたのかもしれない。
お昼時なので控えめに、二人でビールを1本、軽くぐいっと。

天ぷらなんぞもでてきました。
もちろん精進揚げ。海老などの生類は含まれていなかった。

さて湯豆腐。
コース料理のメインとして湯豆腐を食べるという機会はこれまで無かったのだが、いやぁしみじみとしてますな。いや、ふつうメイン料理って肉とか魚とか、それなりにおなかにずしんとくるものがでてくるわけだ。それが、今回はお豆腐。かしこまって、つゆにつけていただくが、あまりメインという気がしない。
そうか、最近食べた湯豆腐って何か、と記憶をたどってみると、旅館の朝ご飯の一品だからか。
でも、豆腐はとてもおいしかった。庭園に囲まれて、静かに時を過ごし、体に負担がかからない食事をとる。こういうのも、たまにはいいと思う。
(2005.08.22)
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