農薬・メタミドホスが混入した中国の天洋食品製冷凍食品。
他人事かと思っていたら我が家の冷凍庫にもありましておめでとうございます、というびっくりな事態になった。
メタミドホス試食会を開こうと何度も逡巡したが、危険と分かっていて食べるのは大人がやることじゃない。せいぜい高校生までのノリだ。苦渋の選択として、原因究明の一助となればと思い、販売元であるJTフーズに送り返したのだった。本当に、食べる気満々だった。今は食べなくて良かったと思っている。
ここまではこのコーナーで既報の通り。
返品したのが2月9日だったが、それから1カ月後の3月7日になって、JTフーズから郵便物が届けられた。
現金書留。
これにはちょっと驚いた。久々に見たぞ、現金書留封筒。ネットバンキングなどでの振り込みが当たり前になっているこのご時世、ほぼ死滅したと思っていたけど健在なのね。まあ、そりゃそうか。
てっきり普通の郵便物がくるものだとばかり思っていた。商品代金の返金をするということだったので、株式の配当金受領の時みたいに郵便振替書が入っているんだろう、と考えていたらなにやら仰々しいですぞ、現金書留。
こりゃあお詫び代としてお札でも入っているんだろうか、と思って振ってみたら、ちゃりんちゃりんと音がする。硬貨ですかい。現金書留の料金って、送付量や保証額によって変わるけど一通400円は下らないはず。それだけのお金をかけて数百円の返金をするとは、必死というか酔狂というか粋というか。まあ、純粋に考えればJTフーズご愁傷様です、としか言いようがない。でももう少し違った返金の仕方もあったんじゃないかと思うが、どうか。
内容物は写真の通り。
お詫びの手紙、封筒の中に100円玉3枚、そして500円の図書カードだった。
この300円のためだけに現金書留か。送料よりも安い中身って一体何。図書カード500円分1枚で「お代+お詫び代」とすることができれば、送料はぐっと安くなったのにねえ。でもそれだと、中にはクレーマーじみた人がいて「図書カードなんていらねーんだよ、それよりも現ナマでよこせよ、さあよこせほらよこせ」なんて言い出すんだろうな。
おかでんとしては300円と図書カード貰えてラッキー、という気持ちよりもJTフーズが気の毒で、そっちが気になる。まあ、「誠意」っていうものは相手が「もういいですから。どうか頭をお上げになってください」と言わせたもん勝ち、って事なんだろうけど。その点ではJTフーズの誠意は十分に伝わった。
お詫びの手紙には以下の内容がしたためられていた。以下転載。
お客様各位
弊社商品に関するお詫び
ジェイティフーズ株式会社
謹啓 春寒の候、お客様におかれましては、日頃より、弊社商品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
さて、このたび弊社が販売する商品の一部をお召し上がりになったお客様の中に、嘔吐、めまい等を伴う重大な健康被害が発生し、大変なご迷惑をおかけいたしました。
お客様におかれましても、多大なるご迷惑とご心労をおかけ致しましたこと、あらためて深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。
このたびの自主回収に伴うお問い合わせに際して、電話がつながり難い状況となり、ご不便をおかけしましたこと、また、ご返金が遅くなりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
千葉県警察等の発表によれば、当該製品より、有機リン系殺虫剤が検出されたとの報道がなされております。その原因等は、明らかになっておりませんが、万全を期すために、当該商品を製造した「天洋食品」製造品の全商品を自主回収させていただいております。
このたびの自主回収にご協力いただきましたこと、心より御礼申し上げます。
弊社は、現在、関係当局への全面協力を行いつつ、全力を挙げて因果関係を含めた原因等の究明を行っておりますが、これら調査結果につきましては、判明次第お知らせいたします。
今後このようなことがないよう品質管理体制を一層強化し、再発防止に努めてまいる所存でございますので、ご理解の程何とぞ宜しくお願い申し上げます。
謹白
2008年3月
だ、そうで。
入念に推敲したであろうことを伺わせる、そつがなく正しい文章。ここでうっかり「まあ返品したって事は、体壊さず、大丈夫だったって事でしょ?良かったねアンタラッキーだよ」なんて書いてしまったら返品者の感情を逆撫でするので絶対に書いてはダメだ。当たり前だが。
しかしだな、「原因等は明らかになっておりません」ということなのに、「今後このようなことがないよう品質管理体制を一層強化」ってどういうことだ。製造業なら、QCサークルでやったでしょう、「問題解決型QC」って。まず原因を特定しないと対策フェーズに移れませんよ。恐らく、このお詫びの文章を最後締めくくるのにカッコ良くするためにも、お決まりの文句として「今後より一層」うんぬん、という一文を入れたのだろう。苦肉の策、といったところか。
また、そこはかとなく「うち(JTフーズ)も被害者なんスよ、もーひどいっすよね中国製品は」という雰囲気を醸し出している文章であり、当事者意識を出しつつも若干腰が引けている絶妙な塩加減がとてもおいしゅうございます。このあたりも、取締役会に諮られたりして文言微調整された結果だろう。「全面的にうちが悪ぅござんした」と土下座するわけにはいかんぞ、というお達しが上層部から文章作成担当者にあったに違いない。
そういう全てを勘案して、今回の一件はなんとも微妙であり、えもいわれぬむずがゆさを感じるんである。
今回の話にオチなし。以上。
(2008.03.12)
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