ひみつのケンミンSHOW、という番組がある。日本テレビ系列で木曜21時から放送している人気番組だ。この番組は、各都道府県ごとの独特の文化を紹介するもので、狭い日本なのにこんなに多様性があるのかと驚く事が多い。「えっ、他県ではそんなことしていないんですか?うそだぁ!」と驚くご当地ケンミンの皆様のリアクションが毎回のお約束だ。特に食べ物に関する独自性というのは地域差が際だっている。
日本でさえこのありさまだ、広い国土を持つ国になったら、もう同じ国とは思えない差があるだろう。その点、「中華料理」と、あの中国をひとくくりにしてしまったジャパニーズ中華料理店は凄い。平均化しすぎだ。しかし、それがすっかり馴染んでしまい、今や「中華料理」の定番、肉野菜炒めなんぞは日本の家庭料理としてしっかり定着している。
料理は幅広い。一時「無国籍料理」を標榜するお店があちこちに見かけた時期があったのがその典型例だ。ただ、この「無国籍」とは、「どこにも属さない、今までにない新しい料理」ではなく、いろんな国の料理のチャンプルーだった。10年くらい前は、「無国籍」と名乗ることが何だか格好良い時代だった。
2009年の今となっては、無国籍ってのはノンポリシーのようで、あまり格好良い印象はない。現在のトレンドといえば、差し詰め「地産地消」チックなお店だったり、「有機野菜」といったところか。「無国籍」と入れ替わりに出てきた「創作料理」というのは、どうもいかがわしいイメージが出てきてしまい、賞味期限が早かった。
そんな栄枯盛衰が激しい飲食ビジネスだが、中には悠然と世界規模な事を語っている店も存在する。以前から気になっているお店が、これだ。
インド&タイレストラン。
おい、待て、隣国なら兎も角、間にミャンマーが挟まっているぞ。海では隣同士かもしれんが。しかもインドといえば超巨大な国家。南部と北部で食文化が違うというのに(といっても、カレーの調理法だったりするが)、それに全然異文化のタイを足すか。これを強引と言わず何という。
店名のサブタイトルに、「Herb&Spice」と銘打たれている。はい、おかでんどっちも大好きです。そういう点では、このお店は最強タッグだ。ハンセン&ブロディのタッグ並に強い。しかし、いずれも奥が深い料理のはず。安易に両立できるんだろうか。それが心配だ。両国の料理をまねして作ってみました、という素人料理だったら相当がっかり。
日本人って、「ウチはこの料理(特にラーメンなど)にひたすら専念してます」という専門店を格上を見なす。だから、こういう手広さは正直、食指がのびない。
メニューを見ると、見事にマサラだとかカレーといったインド料理各種と、トムヤムクンをはじめとするタイ料理が並んでいた。でも、メニューに「タイ風ラーメン」というのはどうかと思う。タイ料理店を名乗る以上、堂々としていればいいのに。「風」をつけた時点で、遠慮と自信のなさが見え隠れする。
んな店のすぐ近くに、新規開店で「スパイス王国」というカレー店?インド料理店?がオープンしたのはなかなかに面白かった。「インド人が作るインド料理」、と、バーンとキャッチコピーがまぶしい。タイとかと一緒にしている店とは違うぜ、という気持ちの表れだ。さあ、純インドVSアジア混成軍、どっちに軍配があがる。
しかし、もっと凄い店もある。
なんと、「インド&アフリカ料理店」という看板を掲げているのだった。むちゃくちゃだ。インドとどこかの国を結びつける時点で相当手広くやっているが、それに加えて「アフリカ」ときた。アフリカってアンタ、一体何カ国あるのよ。全世界の地上の何割を占めている大陸なのよ。スケールデカすぎ。
そのお店にはランチに一度、ディナーに一度訪れた事がある。ランチはバイキングだったが、カレーの他に何だかわからない謎のシチューみたいなものがいくつかあった。これがアフリカ料理なんだろうか。店の周囲は普通の住宅街だが、どこからともなく黒人の方々がお店にたくさんやってくるので、何だか異次元にいる気分だった。夜?いや、ビールが高かったですね、ということでほとんど記憶にない。麦酒飲みだから、ビール消費量が多い。となると、マニアックな現地のビール(=お値段高め)しか置いていない店だと、がぜんコストパフォーマンスが悪くなり、おかでんご機嫌斜め。これはもう、仕方がない。お店のせいではない。
今回、この記事を掲載するにあたって、上記の究極の大風呂敷店を再度訪問しようと思った。というわけで、わざわざそのお店までお出かけしてみたら・・・ああ!なんてこった、なにやら看板が新しくなっていると思ったら、「インド料理&ハラルフード」の店に変わっていた。イスラム圏はターゲットにしつつも、アフリカ侵攻は断念したようだ。店頭の電光掲示を見ると、インド&パキスタンの料理を出すようだ。一気につまらなくなった。残念。
しかし、以前の店名は「GREAT INDIA」だったのが、新店名は「GREAT ASIA」に規模拡大。どうしたいんだこのお店は。
ネタが得られなかった腹いせに周囲を散策して、見かけたお店。
「我家的厨房 ASIAN KUNGFU-DINING」
名前が格好いい。中華料理をベースにしているものの、おしゃれなバーのような雰囲気が良い、20代後半からのカップル向け店舗といった感じ。料理もおいしいっすよ。
「我家的食卓」なら、アットホームな雰囲気で食事が楽しめます、という意味になる。しかし、「我家的厨房」って一体なんだ。100Vの電気コンロ1つしかなく、炒め物揚げ物全てイマイチ、せいぜいお湯を沸かす事くらいしかできないおかでん家のキッチンを思い出してしまった。まさかそんな厨房がお店にも・・・なわけはなかった。そりゃそうだ。
(2009.05.21)
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