忙しい中ではあるけれど、突発的に何かを作りたくなることがある。便利になったご時世だからこそ、あえて手間がかかることを。そんな気分になること、みなさんもありませんか?僕はあります。ただし食べ物に限るけれど。
なにせ普段ずっとPC相手の頭脳労働をやっている。余暇はこのサイトの更新とか、これまたPC相手。自分の身体性に訴えかけることを、対してやっていない。だからこそ、ちょっと面倒臭いことをやるのが好きだ。
本当に面倒なことはやりたくない。「椅子を、木材から作る」みたいなDIYとか。でも、食べ物の自炊はしっかりと出来上がった直後に「食べるというご褒美」があるから好きだ。
今年1月、パートナーのいし一族に対し、婿殿であるおかでんのお披露目食事会が行われた。結婚式が家族のみの小規模なものだったので、別途親族に紹介することになったからだ。
その時、頭脳労働者おかでんは「自分の人となりを知ってもらおう」と奮起、自己プロフィールのためのパワーポイント資料をガッツリと作り込んだ。さすがにプロジェクターで投影して、レーザーポインタを使いつつプレゼンなんてことはしなかったけど。
で、「こんな趣味があります」というページを今読み返すと、ざっとこんなことが羅列されている。
- 誕生日にはケーキを作ります。
- お正月はお餅をついて、鏡餅を飾ります。
- リビングで野菜を育てています。
- 珈琲豆を週1回自家焙煎しています。毎朝豆を挽いて、淹れたての珈琲を二人で楽しんでいます。
- しいたけ栽培をしていた時期もありました。
- クリスマスはなぜか燻製を自作
- ご飯は玄米から精米、いつも土鍋で炊きます。
- 年越し蕎麦は、20年近く続くおかでん家の風物詩。
- 中秋の名月は、白玉団子をお供え
- 料理は作り置きをあれこれ作ります。
- 朝ごはんは、自家製焼きたてパンの日が多いです。
なんだこりゃ。道理で最近特に忙しいわけだ。人間誰もが等しく24時間しかないのに、何をやってるんだ一体。「白玉団子」とか「鏡餅」なんてのは歳時記なのでいいけれど、野菜を栽培だの自家焙煎だの精米だのパン焼きだの、日常生活の中に面倒なことがすっかり組み込まれて定着してしまっている。実は僕は暇人だったのかもしれない。おかしいなあ。
それもこれも、伴侶がいるからだ。元々の性分に加えて、喜んでくれる人が近くにいるとますます調子に乗ってしまう。
今回、突発的に「漬け」を作ってみることにした。それ自体は大した手間じゃないんだけど、我ながらここまでやるようになったのか、とあきれる。
なにしろ、ワカシ(ブリの幼魚)を一匹まるごと衝動買いしてしまい、その取扱いに困ったからだ。そもそも、「肉のハナマサ」ででかい肉ではなく魚を買った時点でちょっと変わっているのだけど、安かったのだから許せ。税別380円だ。幼魚とはいえ、長さは50センチは優に超えている代物だ。
既に切り身だったら興味は持たなかったはずだ。でも、砲弾のような形をしたワカシを前にすると、むくむくとコイツを三枚おろしにしてみたくなったのだった。出刃包丁なんて持ってないけれど。
一応、長崎県は島原の野鍛冶屋さんから買った鉄包丁はある。こいつでおろしてみよう。
魚のおろし方なんてのは、ネットで調べればいくらでも見つかる。YouTubeに行けば、すごく親切な解説動画だってある。なので僕の写真とレポートは割愛。普通にさばいた。でかい魚なので、案外できるものだな。これがアジ程度のサイズなら、中骨に四苦八苦しているうちに身が崩れていたかもしれない。
半身はお刺身にして食べた。じゃあ残り半身はどうする?
なにせ、それなりのサイズだ。二日連続でお刺身というのはちょっと飽きるし、だからといってしばらく放置しておくと、身が傷む。
そこで漬けを作ってみることにした。
細切りにして、酒と、みりんと、醤油と、ごま油少量。これをジップロックでもみ込み、漬け込んで出来上がり。食べるときに白ごまを振り、刻んだ紫蘇を乗せて食べる。
かなり美味しく出来上がった。素人魚さばきだったので、若干小骨や筋があるけれど。
ただ、煮切っていない料理酒とみりんなので、果たしてお酒を飲まない僕にとってこれを食べて良いのかどうかは怪しい。後になって気が付いた。今更遅い。
ご飯のお供として大変よろしゅうございました。お湯かだし汁を注いで、茶漬けにしてもうまいだろう。「生魚=刺身!」とばっかり思わないで、一匹まるごとの魚やサクで買ってみた魚の身は漬けにするのもありだな。
漬けを作った数日後、今度はなぜかプリンを作ってみることにした。
きっかけは覚えていない。たまたまレシピを見かけたのか、どうだったか。いずれにせよ、冷蔵庫に賞味期限切れが迫る…違った、既に過ぎている玉子が数個あったので、それを消費したかったことは覚えている。
うまいプリンを作るにはいろいろノウハウがあるのだろうが、味にこだわらず、「プリンという料理」を作るだけなら実に簡単だ。食材だって、玉子と、牛乳と、グラニュー糖と、バニラエッセンスだけだった。
製菓というのは理科の実験に近いものだ、という話を聞いたことがある。1グラム単位、いや、それ以下の単位でしっかりと食材を計量し、タイミングや温度も正確でないといけないらしい。僕が苦手とするところだ。何しろ、料理を作るにしても、レシピをざっと見たらあとは適当にやるだけ、という雑な調理法を常としているからだ。
まずカラメルを作る。
カラメルはグラニュー糖を溶かして加熱すればできる、ということを今更知る。
グラニュー糖と、ほんの少しの水。ただそれだけ。
うっかりすると真っ黒になるので、「あっ、茶色くなってきたな」と思ったところで火を止めないと間に合わない。あと、ぐつぐつ煮立っているカラメルに水を注ぐと、当たり前だけどじゃッ!と音を立てて飛び散る。危ない。
容器の底に色づいた単なるグラニュー糖・・・これを「カラメル」と呼ぶ・・・を注ぎ、冷え固まるまで放置する。その間に、プリンの本体を作る。
玉子にグラニュー糖、そして牛乳。これをかき混ぜる。なんてぇシンプルな食べ物なんだ。
玉子は、調子に乗って泡だて器なんぞでかき回すと空気を含んだ泡ができ、この後加熱したら気泡ができてしまう。なので、あまりチャッチャとかき混ぜてはいけないらしい。
ということを実践し、おそるおそるかき混ぜていたら、白身と黄身がよく混ざらないままでプリンを作ってしまった。本当はこの後、ざるなどで卵液を漉して容器に注ぐのだけど、漉し忘れてそのまま容器に入れてしまった。あっ、と途中で気が付いたけど、やり直しがきかない。なにしろ、容器の底にはカラメルが入っているから。ドンマイ。
このあと、フライパンに水を張り、布巾を底に沈め、プリンを入れた容器を載せる。容器にはアルミホイルをかぶせ、フライパンにふたをして弱火で30分。
最後、プリンを冷蔵庫に移し、しっかりと冷やしたら出来上がり。ゼラチンのような凝固剤にあたるものは一切使っていない。
いまだに僕は、「上白糖」「グラニュー糖」「三温糖」「きび砂糖」などの使い分けがよくわかっていないのだけれど、グラニュー糖はこういうときに使う、というのはよくわかった。経験値が上がった。
で、出来上がったのがこれ。大人の男の子あこがれの、大きな容器に作ったプリンだ。
学生であれば「バケツプリンに挑戦」などとオーバーなことをやってうひゃひゃひゃ、と喜ぶだろう。僕だってきっとそうだ。でも、この歳になってくると、現実的なサイズ感で「ちょっと多く作ってしまったぜ」とにやりと笑うのがちょうどいい。今回が、まさにそう。ニトリの耐熱ガラス保存容器にぴったり。
本当は1日くらいしっかり冷やし固めたほうが良いらしい。でも、冷蔵庫に保存しているところをいしに発見され、敢えなく白日のもとにさらされ「試食」することになった。
いしはお菓子を発見する嗅覚にすぐれ、冷蔵庫にあるものやキッチンの片隅にひっそりあるものを即座に見つける。で、ご機嫌になって「オ・レ!♪」などと叫んだりする。そういうのが嬉しくてこっちもやっているのだけど、プリンを冷やす時間を確保するまでもなく見つけられるとは。
なお、お菓子のプレゼントなどはこっちとしても当日まで隠しておきたいので、どんどん隠し場所は巧妙になってきている。いよいよ、クローゼットの奥の毛布の中、などというところにまで隠ぺい工作を図る始末。
それはともかく、プリンの出来は僕も気になるところ。数時間は冷やされたので、食べてみよう。
見た目は、冷え固まって見える。
急いで作ったので、卵液を注いだ際にまだ固まりきっていないカラメルと混ざった。そのせいで、黄色いはずのプリンが若干茶色っぽい。
側面を見ると、タピオカみたいなつぶつぶが見える。
加熱しすぎて「すが立った」わけではなく、卵白と卵黄がうまく混ぜられなかったからできたものだ。見栄えがあまりよくない。これは次からの課題だ。
こうやってプリン表面を見ると、結構でこぼこしているものだな。市販のプリンのなめらかさが、むしろ不思議だ。
いしは、プッチンプリンのつもりでいたらしく、このプリン容器をひっくり返して中身を出そうとした。おいちょっと待て、それはできないし、そもそもこの容器まるごと、一度に食べる気か。
とりあえずこの日は二人で1/2を食べることにした。
固まっていたはずのカラメルは、液体に戻っていた。不思議。これじゃ、冷え固めた意味がない。
プリンは、素朴な味に仕上がっていた。これ以上ないほどのプリンの味で、まあそりゃそうだよな、と思う。増粘剤的なもので薄められた感が全然ない。しかし、個人的にはもう少しねっとりしたタイプが好みだ。どうすればねっとり仕上がるのだろうか。卵黄だけ増やそうか?
いずれにせよ、美味かった。プリンなんてスーパーやコンビニで安く買えるものだけど、こうやって自分で作ったものはなんだか食べ応えがあるし満足感が高い。二人で、美味しいねえ、いいねえ、と言いながらあっという間に食べてしまった。
課題はわかったので、数日後にさっそく第二弾を作成し、またもやいしがそれを見て「オレ!」と叫んでいた。今度はちゃんと漉したので、食感のざらつきはなくなって味が良くなった。あと、思ったよりもバニラエッセンスはちゃんと入れてよさそうだ。かなり癖の強いものなので、ごくごく控えめの使用が良いのだと思っていたけれど。
この話に何も盛り上がりも落ちもないんだけど、まあ、そんな日々を過ごしていましたってことで。
(2020.02.29)
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