お正月の料理で縁起物の代表格、有頭海老。
縁起の良さの塊みたいな生き物で、「長いひげ(=長寿)」「目が飛び出している(=めでたい)」「茹でると赤くなる(=紅白でめでたい)」「茹でると丸まる(=腰が丸くなるまで長寿)」とされている。
毎年、まだ生きている海老を捕まえ、背わたを抜くのは我が父の役目だった。母は海老が跳ねるたびに「きゃああ」と悲鳴を上げて飛び退くからだ。
しかし今年は、背わたを抜く前にハサミを手にして、ひげや足をチョキチョキ切り始めた。
「えっ、ひげを切るの?」
驚いて聞いた僕に、
「切ることにした。食べるときに邪魔だから」
といとも簡単におっしゃる父君。あまりに清々しい、縁起よりも食べやすさ重視の有様に感動した。
ならば、ということで、海老の加熱調理担当を仰せつかった僕は、竹串をグイと海老に刺し、背筋を伸ばした状態で海老の塩焼きとつや煮を作った。
背中が丸まっている方が縁起が良いのだろうが、あえて違った解釈をしてみた。最近、両親とも歳のせいで腰が痛いなどと言っている。なので、「腰が曲がってしまわないように。いつまでもシャンとしていられますように」という願掛け、だ。
出来上がったお海老様は、どうだとばかりに腰がまっすぐに伸びたものだった。僕的にはとても縁起が良い、そんな2022年の元旦となった。
(2022.01.01)
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