ラーメンをあまり食べていない。
自分の食生活を振り返ってみて、ラーメン類を食べているとすると「ラーメン二郎、または二郎系と呼ばれるラーメン」または「汁なし担々麺」にほぼ集約される。
僕はもともとビールが大好きだったこともあり、ラーメンはあまり食べなかった。ラーメンはビールの肴にならないからだ。その他、丼ものも食べなかったし、カレーも食べなかった。
そういう食生活が、親元を離れてから断酒するまでの二十年以上じわじわと続いていたため、「酒のつまみになるおかず」類中心の食生活となり、「酒のつまみにならない食べ物」は眼中になくなっていった。
そんな中でほぼ唯一ラーメン二郎をこよなく愛していたのは、「今日こそはビールを飲むのをやめよう」と自分を戒めるために使っていたからだ。二郎を食べれば、もう満腹でビールを飲む気力が萎える。飲んだとしても満足感が低い。
そんなわけで、お酒への抗いがたい誘惑を断ち切れない、上品なラーメンは僕にとって興味の対象とはならなかった。せいぜい、激辛のラーメンだったら飲んだシメにいいかな、と思っていた程度だ。
お酒をやめてもう9年が経つ。
この間、飲みたいと思ったことはないけれど、飲めたらいいのにな、と思うことはある。それだけの月日が流れても、疎遠になっているラーメンが食生活に復活することがない。未だに、「食べるならガッツリとして他の欲望を押しのけるインパクトがあるラーメンであってほしい」と思っている。
アルコール依存症は、依存の記憶が脳に刻まれてそれが一生消えることはないそうだ。僕は幸い、「飲みたいなあ」とフラッシュバックすることはないけれど、酒の記憶とともに食生活・食文化の記憶も刻まれて残っているらしい。
たまに二郎系以外のラーメンを食べることがある。ごくたまに。
どれも美味しい。ラーメンってこんなにうまいものだったっけ。
自分が思っていた「ラーメンを食べたあとの満足感」よりはるかに上のものがそこにはあった。
それでも、相変わらずラーメンはたまにしか食べない。やっぱり習性は治らない。
(2022.03.05)
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