いしが知人から、瓶詰めのコーヒーを貰ってきた。僕ら夫婦が自家焙煎までやっているコーヒー好きだというのを聞いて、お土産として買ってきてくれたらしい。ありがたい。
買うとかなり高いものだ。僕らは自腹で到底買うことができないものなので、開封する前には「ありがとうございます」と手を合わせて瓶を拝んだ。
そんな高級コーヒーなので、飲み方は失敗できない。説明書によると、3倍のお湯または水で希釈して飲むように書いてあった。いしが慎重に量を測り、厳かにコップにお湯を注ぐ。
「あれ?コーヒーの3倍の量のお湯で合計4倍だっけ?それともコーヒーとお湯をあわせて3倍?」と混乱もありつつ。
飲んでみる。
「うーん、最初の一口目の香りはするんだけど、どうもその後の余韻が薄いような」
「お湯の量が多かったのかな?」
「お湯とコーヒーがうまく馴染んでいないような印象を受ける。しばらく寝かせて、熟成させたほうがいいのかな?」
夫婦ともども、首をひねる。
せっかくの貰い物なので、贈り主に「おいしかったです!」とお礼のメッセージを伝えたい。ならば今度はお湯ではなく水でコーヒーを作ってみよう。
「うーん」
どうも微妙だ。
僕らがこのコーヒーがきっと凄いに違いない、と評価のハードルを高く設定しすぎたのだろうか。
缶コーヒーにしろペットボトルコーヒーにしろ、作り置きのコーヒーは淹れたてのコーヒーと全く別の味になるのは常識だ。でも、コーヒーをわざわざ瓶詰めにしているのなら、きっとそれは素敵な保存技術であり、香り高いコーヒーが楽しめるに違いない、という思い込みが僕らにはある。しかしそれは期待しすぎたのかもしれない。
もしこれが、缶コーヒーやペットボトルコーヒーとの対比で「美味しいかどうか?」と問われたなら、確実に「うん、美味しいです。さすが」と即答していたのだけど、僕らはお店で飲むコーヒーと対比してしまったため、「本当にこの味でいいのかな?」と失礼な疑い方をしてしまった。
水のかわりに牛乳を使ってカフェオレにしても美味しい、と説明書に書いてあるので、カフェオレを作ってみた。ところがこれは牛乳の味が強すぎて、せっかくの高級コーヒーがもったいなかった。
一方で、カフェオレを見た2歳児の弊息子タケは、「これなら僕も飲む!」と言い出し、「いやいや、2歳にコーヒーはまだ早いから」「大きくなったら、コーヒー飲める?」「そうだよ、飲めるよ」などとワチャワチャしたやりとりが始まってしまった。
ドリップバッグのコーヒーなら、お湯の注ぎ方次第で味が変わる。なので、「うーん、淹れ方が悪かったかな。今度はもっと慎重にお湯を注ごう」などと諦めがつく。でも、瓶詰めコーヒーで、お湯で希釈して飲むというものは、なかなかこちらとしては諦めがつかない。どの味が最終ゴール地点なのかわからないまま、「微妙な味だな」「もっと美味しくなるかな?」などと、模索が続く。
(2023.12.04)
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