近所のマダムから、「あたし、ファミレスに行ったことがないのよ。今度連れて行ってよ」と言われたので、ガストにご案内した。
僕らおかでん家も、ファミレスにはあまり行かない。車を持っていない&繁華街に住んでいないせいもあって、郊外ロードサイド店も駅前好立地店も縁遠いからだ。なので、マダムからの提案は僕らにとっても渡りに船だった。
ガストは、2024年11月に「高級フレンチのシェフ監修のもと、フレンチのコース料理を提供する」と報道発表した。僕はテレビ東京の経済ニュース番組「ワールドビジネスサテライト」でその話を知ったのだが、そういうニュースになるくらい、このメニューは驚きをもって迎えられた。
https://www.skylark.co.jp/gusto/menu/menu_detail.html?mid=100_21999
低価格ファミレスとして長らくその名を馳せてきたガスト。最近はその勢いにも陰りがでてきて、カフェの「むさしの森珈琲」、飲茶の「桃菜」、しゃぶしゃぶ食べ放題の「しゃぶ葉」などに業態変換するお店が増えている。どうやって客を繋ぎ止めるかが経営課題となっているが、その答えの一つが1,990円のフレンチとは驚いた。
せっかくなので、そのマダムとともに僕ら家族はフレンチのコース料理を頼んでみることにした。
ちなみに、大人のコース料理1,990円とは別に子ども用フレンチもあったのだが、3歳の弊息子タケは「いらない」と言った。彼はハンバーグが食べたくて仕方がなかったらしい。普段ファミレスに行かないので、ファミレス料理が驚きと興奮の対象となっている。
タッチパネルで料理をオーダーする。
フレンチのコースなので、マダムはグラスワインを頼んでいた。コースだけなら1,990円だけど、飲み物を別に頼むとなると客単価はもっと上がる。
料理は一度にドカッと運んでくるのか、それとも一皿ずつ運んでくるのかが気になったが、一皿ずつ運んでくるスタイルだった。「ワールドビジネスサテライト」で報じられていたのと一緒だ。あれはテレビ用の演出だと思ったけど。
店内はネコ型配膳ロボットが動き回っていたが、フレンチコースの場合は店員さんがわざわざお皿を運んできていた。
「おまたせしましたー」という店員さんの声でフッと振り向いたら、そこには髪の毛の一部をアッシュブルーに染めている店員さんがいてちょっとびっくり、という状況に。
「ざっくばらん」と「形式張った」が混ざった時間と空間。それがむしろ面白い。
最初に届いた料理は「3種の前菜盛り合わせ」。
サーモンマリネのグジェール
アンディーブの柚子ビネグレット和え
帆立のバターソテー
「ん?3種の前菜?」
と届いたお皿を見て何か違和感を感じた。なんで違和感を感じたのか、すぐによくわからなかったのだが、お皿が焼き魚でも盛り付けるかのような和風なお皿だったからだ。
ガストの既存のリソースを極力使っているので、悪く言えば「不釣り合い」、よく言えば「コラボ」「マリアージュ」という組み合わせが生じる。
でも、このシシャモでも乗ってそうなお皿にアミューズが乗っているせいで、フレンチ感に乏しく、なんか量が少なくて物足りない料理に見えてしまったのは残念。アミューズだからちょこっとした量なのは当然なのに。
カリフラワースープ
∼カリカリパンチェッタとクルトン添え∼
優しい味。添えられているパンチェッタで塩けをコントロール。
カトラリー類はテーブルに置いてあるカトラリーケースから自分でガシャガシャと音を立てて取り出し、配膳する。
ガストなのでテーブルは狭い。お皿の左右に、優雅にフォークやスプーンを並べる余裕はない。また、一皿ごとにカトラリーを交換することはできない。店員さんに言えば新しいカトラリーを持ってきてくれるだろうが、基本的にはコースとはいえ、最初から最後まで同じカトラリーを使う。
ビーフ100%ハンバーグ ペリグーソース
~ごぼうのチップをのせて~
ライスorパン
ごぼうチップ、赤ワインで漬け込んだポーチドエッグが美味。
ペリグーソースは濃厚でパンによく合う。パンをちぎって、ソースを浸しながら食べるととても満足度が高い。そもそも、ハンバーグ自体が心地よい粗挽き肉でとてもうまい。
なお、次の料理がでてくるたびに、一旦目の前のテーブルの上を片付けないといけない。場所がないからだ。なので、食べ終わったら店員さんが下膳しやすいように、お皿を集めて積み重ねておくという手間があった。
「フレンチのコースを食べている」といいながら、お皿を重ねて片付けておくというのは、とても面白い体験でとても嬉しい。嫌味で言っているんじゃなくて、こういうスタイルで気軽にいろいろな料理が食べられるご時世、ということにワクワクするんだ。
なお、ナイフとフォークを使っていると、建付けの悪い机がグラグラ揺れる。また、店員さんが配膳するときは、ドン!とお皿をテーブルに置く。店員さんがガサツだからではない。隣の席との間隔が狭く、店員さんが身を乗り出して配膳しなくちゃいけないのが問題だ。
こういう、「フレンチのコース料理でございます」というのとミスマッチがある、というのがガスト版フレンチの面白いところだ。
これを楽しめる人ならば、いい。でも、「もう少しちゃんとして欲しい」などと眉を潜める人は、てんでこのお店は向かない。ガストに来ないで、高級店に行けばいい。値段相応のサービスが期待できるだろう。
最後。
ブランマンジェプラリネ
牛乳プリンみたいなやつ。
ガストのテーブルには広告のステッカーが貼ってあるのだけど、それが低コスト投資信託のeMAXIS Slimだというのがこれまた、味わい深かった。はい、おたくには我が家も大変お世話になっております。
食後のコーヒーというのはメニューに存在しない。頼もうと思ったら、ソフトドリンクバーを注文し、セルフでカウンターまで取りに行かないといけない。食後ちょっとゆったりしたいのに、ソフトドリンクバーを頼むのもねぇ・・・と興ざめし、みんなお冷で最後を締めくくった。
コース料理を頼んだ人はコーヒー1杯500円でもいいから、食後にお持ちします・・・ってやれば、頼む人は結構いるんじゃないかと思うんだがどうなんだろうか。ガストの客層からして、それはちょっと高いか?
今後ガストはどうするんだろう。客層とか客の反応とかお店の負担感とか、いろいろデータは取れるだろうから、今後の店舗運営に活かして欲しい。とても意欲的なチャレンジで、僕は存分に楽しめた。
ただ、願わくば限られた店舗スタッフの負担が増えないようにして欲しい。「客のタイミングに合わせて料理を作り、人力で配膳・下膳」というのは今のガストのスタイルでは現場にしわ寄せがきそうな気がする。僕らは「おもてなし」を1,990円コース料理に期待していないので、ネコ型配膳ロボットで全然構わない。
最近、飲食業をはじめとした接客業で、とても良い接客を受けた際、「ありがたいなあ」「嬉しいなあ」という気持ちよりも「心苦しいなあ」と感じることが増えた。ちょっと無理していませんか?会社側が無理をさせていませんか?という心配が強いからだ。お願いだから、持続可能性のあるサービス形態にしてほしい。そのためには、UIがひどい自動食券機でもメニュー表でも我慢するので。
(2024.12.20)
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