知っている人は知っている、知らない人は知らない情報として、「ミスタードーナツには食べ放題プランがある」というものがある。
すべてのお店で実施しているわけでなく、やっているお店は限定的だ。ただでさえ最近はミスド店舗が少なくなっているので、お住まいの地域の近所に食べ放題プランを提供しているミスドがあればラッキーだ。
とはいっても、50歳にもなった人間にとって「ドーナツ食べ放題!うおおおお!」とテンションが上がる話ではない。常識的に考えて、摂取カロリーが尋常ではないことになるのが目に見えているからだ。
焼きドーナツでもおからドーナツでも、お腹いっぱい食べたら体重・血糖値・血圧をはじめ体のあらゆるパーツや性能に支障をきたすにきまってる。それをましてや、油で揚げたドーナツでやるなんて。
そもそも、ドーナツを5個10個と食べて幸せなのだろうか?自傷行為で気晴らしする、リスカみたいな病んだ喜びではないだろうか?
僕はこの「ミスド食べ放題」の話を聞いた時、「いやー、勝ち筋がないわー」と思って放置していた。
が、何の気の迷いか、訪れてしまった。
駄目だな、一度頭の中に情報としてインプットされてしまうと、それが自分のToDoになってしまう。なので、そのToDoを終わらせないと気が済まず、ソワソワしてしまう。
この日は何かスカッとしたい気分だった。マッサージを受けに行くのでもよかったけど、選んだのはミスド。我ながら、マッサージと食欲が同じレベルの扱いであることに驚く。
ミスタードーナツの食べ放題実施店は、おそらく店頭に「ドーナツビュッフェ」ののぼりが掲げられているのでそれとわかる。値段は税込1,800円(2024年11月時点)。
まずはレジでビュッフェに挑みたい旨店員さんに伝えて、1,800円を支払う。その後、店員さんから諸注意の説明を受ける。
- 店内のメニューの殆ど(ドーナツ、ドリンク)は自由に選べる。飲茶などのメニューは選択不可。
- 一度に選べるドーナツは最大6個まで。
- ビュッフェ専用のトレイ、ビュッフェ専用の紙皿にドーナツを盛って、必ずレジでチェックを済ませてから食べる。
- 食べ残し禁止
- 制限時間は60分
だ、そうだ。
その説明を受けながら、少し恥ずかしい気持ちになる。ああ、いい歳なのにドーナツをがっつきたいやつだと思われているんだろうな、と思ったからだ。気にしすぎだけど。
この「おかわりの都度、毎回レジを通す」というのが曲者だ。
ミスドはレジ前が混むお店だ。お土産にしようとして10個以上買う人もザラだし、どのドーナツを買おうか悩んでいる人もいる。
レジを通過するのに時間がかかる可能性があるので、このドーナツビュッフェを楽しむなら、客が少ない時間帯にいくのが望ましい。混んでいる時間帯だと、ストレスが溜まるけど胃袋は溜まらない、という悔しい状況になってしまう。
一回目。
「いつもなら買っているであろうドーナツ」は敢えて外した。
たとえば、いちごチョコが乗った「ストロベリーリング」なんて、たぶんこれまでの人生で一度も食べたことがない。それよりも僕は、素の状態である「ハニーディップ」の方を好むからだ。
同様に、ポン・デ・リングも小細工が施されているものよりもプレーンの方が好きなのだが、今回は違うフレーバーのものを選んでみた。
6品全部甘いものだと、味がくどい。だからお口直し用に1品、パイを入れておいた。
ドリンクはホットのカフェオレ。
いつも冷たい飲み物を飲んでいる僕にとっては珍しいチョイスだが、ガブガブと冷たい飲み物を飲むとお腹がいっぱいになるので、今回はやめておいた。
あと、ドリンクバーがあるわけではなく、店員さんにオーダーして飲み物を頼む方式だ。ドリンクがでてくるまでソワソワして待っているのは時間が勿体ない。ドリンクはできるだけちびちびと飲んで、レジ待ち時間を少しでも短縮したい。
ドーナツなんて、その気になれば6個を食べる時間はあっという間だ。
すぐ次に向かう。
昔、僕がまだ大食いをやっていた頃は、「満腹中枢が作動する20分までの間にどれだけ食べられるか?」ということを真剣に考えていたものだ。それを思い出した。
でも今回は違う。ドーナツって片手で気軽に食べられるものだし、一人の訪問だし、パクパク食べてしまい間が持たないのだった。食べ終わり次第、「じゃ、次行くか」となる。
昔、といってもわずか10年ほど前だと、ミスドのドーナツってセールとして100円均一で売っていることが頻繁にあった。その頃のことを知っているので、今のドーナツがとんでもなく高く感じる。
身も蓋もない言い方だが、「小麦粉と砂糖を混ぜたものを、油で揚げただけだぞ?」と思う。
もちろん、値上げせざるをえない経済状況なのは理解しているので文句はない。でも、こうやってドーナツを何個も何個も食べていると、久しぶりにそういう気持ちになった。
そして、今更ながら、「ああ、いろんなドーナツがあっても、結局はどれも小麦粉なんだな」ということに気づく。
ハニーチュロのような硬い食感、オールドファッションのボロボロした食感、ポン・デ・リングのモチモチ食感、どれも僕の好みだが、やっぱり「小麦粉だなぁ」という感想に行き着いてしまう。食べているうちにどんどんその気持ちが強くなってくる。
「甘いなあ、くどいなあ」という感覚が強まってくるかと思ったが、まさか「小麦粉だなあ」という感覚を抱くとは、想定していない展開だ。
3巡目。
外は小雨が降っていることもあって、店内がお客さんでごった返すことはなかった。そのおかげで待ち時間なくすぐレジを通過できたのは幸運だった。
時間はまだ十分ある。
とはいえ、この3巡目、すなわち18個食べたところでこのドーナツビュッフェを終了することにした。
満腹になったというより、「もう満足。もういいや」という気持ちになったからだ。
ミスドのドーナツ類はメニューが豊富で、18個食べたくらいでは全メニュー制覇とはならない。しかし、ベースとなるドーナツは一緒で、フレーバー違いの亜種が大勢あるので、3巡目に入ると選ぶものに困り始めた。
「まだ食べていない」ものは数多く残っていても、「まだ食べたい」ものが少なくなってくる。
18個食べたところで、お店に感謝の念を捧げつつとっとと退却した。単独男性客が、1時間ダラダラとドーナツを食べているのは店の雰囲気として良くない。サッと食べてサッと店を後にできたのは、我ながら良かったと思う。
店を出て、自分の体調を確認してみる。
満腹感はあるようでないような。フカフカしたドーナツばっかり食べていたので、腹は膨れたし血糖値も上がったのだけど、ドスンと重たい満腹感はない。これはご飯物の大盛りを食べたときの感覚とは真逆だ。なんとなく空虚な、満腹感。
そしてそれ以上に感じているのが、「当分はドーナツ、食べなくていいな」という感覚だ。派生してバウムクーヘンなどの小麦粉系お菓子全般を食べなくてもいいや。小麦粉に飽きた、という感覚を抱いたのは初めてだ。
(2024.10.28)
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