
大手町。
ビジネスの最前線、シュッとした大人たちが闊歩する街だ。
そんな街の片隅に、一見すると小洒落たニューヨークスタイルのカフェレストランがある。
「グランドセントラル」。
名前からして、なかなかに格好いい。
オイスターバーで有名な、同じ名前の店があるが、それとこれとは関係ない・・・のだろう、たぶん。

ここはランチタイム、ビュッフェをやっている。
店内で優雅に楽しむもよし、一回盛り切りのテイクアウトでオフィスに戻るもよし、という仕様だ。
事前情報では「とにかく炭水化物ばかりだ」という口コミを見かけた。
ふーん?それは単にタイミングが悪かっただけじゃないのか?
僕はそう思った。
運悪く肉料理が切れていたとか、そういう不運に見舞われた人の嘆きだろう、と高を括っていた。

入店して、ビュッフェ台を仰ぎ見て、僕は現実を知ることになる。
そこにあったのは、潔いまでの「炭水化物祭り」だった。


ピザ、パスタ、ドーナツ、ラスク・・・。
ラインナップのほとんどが、胃袋を最短距離で膨らませるための「重し」で構成されている。
たんぱく質はジャークチキン、それに自分で作るタコスのトッピング用ひき肉だけだったと思う。
だが、これが不思議と嫌じゃない。
「腹だけ膨らませりゃいいんだろ?」という投げやりな態度は微塵も感じられない。
どれもこれもディスプレイからして食欲をそそるし、実際ちゃんと美味い。
この「炭水化物への全振り」、僕はむしろ清々しくて好きだ。
そして、特筆すべきはサラダバーだ。
普段、僕がビュッフェでサラダを手に取るのは、あくまで「義務」に近い。
「一応、野菜も食べとかないと見苦しいよな」程度の消去法。
結果、後回しにして食べそびれるのがいつものパターンだ。
なぜなら、多くの店のサラダ用皿は、あまりに無力だからだ。
平らな皿にコーンをのせてみるといい。
トレイの上にポロポロと脱走兵を出すのが関の山だ。
しかし、ここは違った。
用意されているのは、なんと「丼サイズ」のお椀である。
これだよ、これ。
これならドレッシングを和えても、コーンを山盛りにしても、一粒たりとも逃さない。

何がどう素晴らしかったか。
詳細な味の記憶は、爆速で上がった血糖値のせいで忘れてしまったが、とにかく美味かったことだけは確かだ。ドレッシングがおいしかったような。
僕はその巨大なサラダボウルを、あっさりと2杯平らげてしまった。
「スコーン!」と、心地よい音が聞こえた気がした。
満腹の境界線を、音を立てて踏み越えた合図だ。
丼2杯のサラダと、執拗に迫りくる炭水化物の波。
気がつけば、僕は食後数分間、お店の椅子から立ち上がることができなかった。
この歳になって、ここまで「食べすぎて苦しい」という純粋な体験をすることになるとは。
「しゃぶ葉」で、取ってきすぎた野菜が煮え立つ地獄の鍋を前に、厭戦気分を味わうのとはわけが違う。
実に、あっけらかんと、清々しく満腹になった。
また、あの「丼サラダ」の感触を味わいに来たいと思う。
苦しくはなりたくないけれど。
(2026.01.09)

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