何の検査場だ?

僕がその発想と着眼点に舌を巻き、敬愛してやまない方が写真家・ライターの大山顕さんだ。

彼は言う。「今のうちにPCR検査場を撮影しておくと、将来的に資料的価値が出てくるかもしれない」と。なるほど、その発想はなかった。

PCR検査ができる施設、というのは2020年から急にはじまったもので、いずれは消滅する可能性がある。瞬間的に現れて、そして消えていく施設というのは大変に興味深い。特に、その検査施設がもともと何だったのか、Googleマップのストリートビューを見ながら答え合わせをすると「あ、昔はこんなテナントが入っていたのに・・・」と驚かされる。

たとえば、僕の近所だと、「美容整形外科が商売の片手間に検査をやっている」とか、「中国人による、中国人向け携帯電話ショップがPCR検査場に化けた」という様子が観察できる。

今じゃ、検査数を増やして稼ぎを増やしたいから、と検査した人にはAmazonギフト券500円を配布する検査場がある、なんて話も聞く。どこだそれ。羨ましい。というか、人間は欲が深いな。経済原則というのは常に誰かが得をするように、瞬時に最適化されるものなんだな。

大山さんの「PCR検査場の写真を撮っておくと面白い」という話を聞いてから、僕も街で検査場を見かけたら意識するようになった。

そんな中、町中を散歩していて見かけたのがこれ。何の変哲もない、住宅街の路地だ。一旦通り過ぎて、「えっ、PCR?」とびっくりして思わず立ち止まってしまった。とてもじゃないが、そういうようには見えないからだ。

これはんだ。もともと民家かなにかの駐車場だったのだろうか。

露天ではないにしろ、外にむき出しの検査場というのは初めて見た。冬は寒いだろうなぁ、特に検査結果が出るまでしばらくその場で待つ、抗原定性検査を選択した場合はなおさら。

「東京都認証検査場」と書かれた万国旗みたいな横断幕が天井から吊り下がっていて、それでようやく信用する気になった。認証されていない野良検査場なんてないとは思うけど、この外観だと「まじかよ?」と思えるからだ。

しかも、軒先には

「スタッフ不在の場合はこちらのボタンでお呼び出しください。」

とボタンが置いてある。実際に会場にはスタッフが不在だった。ボタンをピンポーンと押したら、奥からスタッフの人(=この家の住人?)が出てくるのだろうか。まるで個人経営のクリーニング屋さんみたいじゃないか。

こういう、「えっ」というPCR検査場は全国各地にあるのだろう。2020年代特有の景色として、記録として残しておこう。コロナが今後長期化して、PCR検査場が日常生活に定着するなら、それはそれでもっと駅前とかロードサイドといった利便性の高いところに集約されていくことになるはずだ。

(2022.07.03)

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