二代目医療用インソール作成【インソールはいいぞ!という話その2】

僕にとっての2024年は、充実した山歩きができた1年だった。

塩見岳→間ノ岳→北岳、と「日本の山で標高の高さが10位、3位、2位の山を一挙に縦走」できて最高の日々を過ごせたし、五色ヶ原から薬師岳まで縦走、という山好きなら憧れるルートを歩いたりもした。

・・・で、その結果、左膝を痛めた。具体的には、北岳山頂から八本歯のコルを経由する急な下りで、これまで蓄積されてきた疲れのせいで膝が痛くなった。

膝の痛みはそう簡単に治るものではなく、その後の薬師岳縦走や利尻富士といったガッチリした登山には膝のサポーターを装着して登山を続行していた。半年経っても治ることはなく、子どもと公園で追いかけっこができない状態になってしまった。

信頼を置く整体師に歩きを見てもらったところ、「右足と比べて、左足は歩いて着地する際につま先が開いている」という指摘があった。要するに左足のほうがガニ股っぽいらしい。その左右差のせいで、膝に負担がかかったようだ。

こういうとき、整形外科に行ってもできることはほとんどない。湿布の処方と、キシロカインの筋膜注射程度だ。

レントゲンで膝の撮影をしてもらったところ、「軟骨がすり減っていることはないですね」と先生はそっけなくおっしゃる。ちょっとまってくれ、そろそろそういう心配をしなくちゃいけない年頃なのか!

結局、整形外科のお医者さんは、レントゲンで視認できる「骨」の異常については熱心なのだけど、それ以外についてはあまり興味を持ってくれない。体の痛みというのは神経や筋肉、その他いろいろな由来があるはずであり、それをどうにかしたくて患者は病院にやってくる。でも、整形外科というお仕事がその訴えに寄与できる範囲は、一般人が思っている異常に狭い。

「湿布を大量にもらってくる老人」が昨今、批判の対象になる。健康保険の無駄遣いだ、と。まったくその通りだと思うが、湿布で解決を図るしか打つ手がない医療、というのも問題がある。

ただ、僕の場合はまだ「インソールを作り変える」という手が残されていた。膝の軟骨がほんとうに破壊されて再生不可能になる前に、インソールで姿勢の矯正をしておこう。

以前、2023年の1月に医療用インソールを作ったのはまだ記憶に新しい。

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この医療用インソールのおかげで、内反小趾による痛みはずいぶん解消した。とても効果があったと思う。ただ、登山ののせいとはいえ、膝の痛みが出てしまったのだから、今の足にフィットしたインソールを新たに用意した方が良いのだろう。足の形は刻一刻と変化するのだから。

インソールを保険適用させるためには、前回製造から1年半が経過している必要がある。このため、最短で2024年夏には整形外科で制作をお願いすることが可能だった。

しかし、インソールは保険適用でもかなりお金が高い。だから、思い立った日が吉日とはいかない代物だ。

具体的には、医療費控除が使えるようにしたい。

というわけで、医療費控除適用の10万円に到達しそうにない2024年のインソール制作は我慢し、2025年に入ってからインソールの制作をお願いした。2025年は虫歯の治療とか、いろいろ医療費がかかる見通しだからだ。

その間、登山の際には左膝をサポーターで固めて登っていた。足が曲げにくくて、岩場をよじ登るときには不便だし危険だった。


装具士によるインソール制作には、整形外科医は立ち会わない。医者に指示書を書いてもらい、それに基づき装具士は「じゃあインソールを作りましょう」と準備をする。理学療法士の治療に整形外科医が立ち会わないのと一緒だ。

指示書には、「症状名:足部アーチサポートと下肢アライメンメント矯正が治療上必要である」と書かれていて、「装具名:両足装具(足底装具)」と書かれていた。

自分の体がいよいよ加齢とともに無理がきかない体になってきたんだな、としみじみこの指示書を見て感じる。

お医者様は、僕の土踏まずを触りながら「このハイアーチじゃァ・・・痛みもでますよね」なんて仰る。整形外科医をもってしても、僕の甲高は行き過ぎの領域らしい。

それはともかく、装具士への指示が上記程度の記載しかないのに、装具士は意図を汲み取ってよくもまあ、補正用のインソールを作れるものだ。僕との会話も大してなく、ちゃちゃっと計測して、ものの数分で一回目は終わりとなった。これは前回も同じだ。

僕としては、整体師から指摘を受けた「左足が回外足であること」などを聞かれてもいないのに装具士に語り、なんとか自分の体調や意向をインソールに反映させようと必死だ。でも、装具士はそういう話をメモるでもなく、淡々と足を計測してその場を終わりにした。

「トリッシャム」とよばれる、反発しないスポンジに足を沈め、足型を取っておしまい。非常にあっけない。

足型を採取して、その足にピッタリなインソールを作ることは簡単だ。でも、やるべきことは、As-IsからTo-Beにすることだ。どのようなインソールを作れば、患者である僕の足が改善するのか、というのが大事。

そのあるべき姿について、まったく打ち合わせがない、というのがとても興味深い。おそらく、整形外科も装具士も手抜きをしているのではなく、そんな打ち合わせは必要がないと思っているからだろう。「これぞ正解」という体の重心や傾き、というベストプラクティスが存在し、それをめがけて矯正すればよい、ということなのだろう。

2週間後、新型インソール到着。

測定時、「今使っているインソールを登山にも使ったら、クッション性がなかったのでむしろ膝に負担がかかったんですよ」という話をしたら、装具士さんは「次はもっと分厚いものになりますよ」と仰る。「しっかりしたものになるので、一度履くともうもとのインソールに戻れなくなりますよ」とも。

それって、装具士さんが腕によりをかけてイイモノを作りますよ、という意味なのか、「お前の足は相当な矯正をかかえないとダメなので、おもいっきりクセの強いインソールを作るぞ」という予告なのか、わからない。

新しいインソール、すでに30キロほど歩いた状態のものを撮影しているので、すでに指の形がくっきりとついてしまっている。これを見てもわかるとおり、ハイアーチの僕はかなり足の指で踏ん張って体重を支えていることがわかる。

新型インソールは旧型とほとんど見た目に変化はない。商用品と違うので、無骨な作りになっている。

履いてみると、オーダーメイド品であることは一目瞭然だ。右足と左足で、インソールが足の裏を突き上げてくる場所が違う。この出っ張りのズレがあることで、体の歪みを少しずつ是正していくのだろう。

旧インソールも、当初は「足の裏に当たるなあ、違和感があるなあ」とずっと感じていた。しかし1年もすればまったくその感覚はなくなった。おそらく、体の歪みが修正されたのだと思う。で、今回はより難易度の高い課題が与えられた、というわけだ。

土踏まず部分、かかと部分はこれまでのものと比べてよりクッション感の強い感触がある。

上が旧型、下が新型。

こうやって見ると、かかと部分は新型のほうがむしろ薄く見える。しかし、新型のほうが四層構造になっているし、土踏まず部分の作りが若干複雑になっている。

いずれにせよ、このインソールは装具士さんが手作りで削って作ったわけで、この層の厚みとか形は全部意味があるはずだ。僕はよくわからないので、「へえー」としか言いようがない。

左が新型、右が旧型。

足の中央にある、足指の付け根よりやや真ん中よりにある出っ張りは中足骨サポートという。僕のように足の指に負担をかけてしまう人向けに、ここを持ち上げることで負荷軽減を図る意味がある。

これを見ると、新型のほうが中足骨サポートが大きくなっている。

レントゲン検査によると、僕は縦方向の足のアーチは高いものの、横方向のアーチは扁平だ。それを補助するためのものなのだろう。

あと、インソールの見た目ではわからないけれど、一番の突き上げを感じるのは立方骨のあたりだ。このあたりの荷重にもきっと課題があるのだろう。とにかくこのインソールを履き続けて、足に身に付いてしまった変なクセを早く是正させたい。

歩けなくなったら、一気に老けてしまうだろうから。

医療用インソールはお金と時間がかかるので誰にでもおすすめできるものではない。しかし、膝や股関節、または足首などに負担がかかっている人は、早めの対策として制作を医師に相談してみるのは良いと思う。本格的に軟骨がすり減ったとか神経が圧迫された、となってからでは打つ手が限られてしまうから。

現状は医師にかかるほどの症状がない・・・という人は、医師を通さずに装具士にインソールを制作してもらうことも可能だ。そういうサービスをやっているお店がある。

たとえばこのサービスとか。(別にスポンサードを受けているわけではないので、ほんとうに良いのかどうかはしらない。ネットで検索して見つかったものを一例として紹介)

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みなさんが今後も健やかに歩けますように。

(2025.02.26)

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