エナジードリンクでお馴染みのレッドブルは、エクストリームスポーツや音楽にいろいろスポンサードしていることで知られる企業だ。
知名度は低くても良質なエンターテイメントにメセナ活動をするので、ファンからすると「俺たちのレッドブル」という意識が芽生える。
高尚な芸術やボランティアを支援することが、企業イメージを高める・・・そういう考えが80年代頃からあった。それは企業の社会貢献という点では重要だけど、えてして「お高く止まっている」感が出てくる。
その点、レッドブルはよくもまあこんなところに、と感心させられるところまでスポンサードしている。
今回、レッドブルは音楽スタジオを東京・青山に作ってしまった。で、レッドブルと関係のあるミュージシャンはそこを無料で使えるのだという。
はっきりいって、1ドリンクメーカーがやる必要はない事だ。でも、そういう事をやるのがレッドブルらしいし、ファンやミュージシャンからすれば「レッドブルすげえ」とレッドブルのファンになるのだった。
そのレッドブルスタジオ東京のオープン記念で、DE DE MOUSEとChip Tanakaのコラボライブが開催された。
僕は元々坂本龍一の奏でる複雑な和音とメロディが好きで、音楽をあれこれ聴いた口だ。 でも、坂本龍一がピアノに傾倒し、社会的な活動に注力するにつれて興味を失っていった。昔はリリースされている全曲をそろえていないと気が済まないくらいだったのに。
でもこれはしょうがない、子供の頃好きだった食べものが、大人になるとそれほどでもなくなった、というのと一緒だ。
その代わりに今結構気に入っているのが、DE DE MOUSEだ。
坂本龍一とはちょっと違うメロディメーカーだけど、EDM系のミュージシャンの中でも和音が特に心地良く、楽しい。そしてキュートな音楽だ。
世界の民謡や子供の歌声をサンプリングし、ぶつ切りにしてメロディに乗せるというやり方はDEEP FORESTを彷彿とさせる。 DEEP FORESTも僕が影響を受けたミュージシャンの一つだ。
一方、Chip Tanakaというのは今回初めて知ったのだが、元々任天堂にいてファミコン時代のゲーム音楽を数多く制作した有名な人だった。 DE DE MOUSE曰く、「靴をなめろと言われたら、なめます」という巨匠。
2時間のステージパフォーマンスは、ほぼノンストップで演奏。二人が交互にパフォーマンスを行うのだが、相手の演奏中もフォローしたり、お互いが楽しんでいる感じ。こっちもつられて、かなり楽しい。
基本、ステージ上に置かれたMacBookでトラックを流し、それにエフェクトを加えていくという演奏法なのだが、DE DE MOUSEはステージパフォーマンスを意識してシンセサイザーを持ち込んでいて、その場で生演奏もする。
一方のChip Tanakaは、時折往年のゲームミュージックを8bit風のチップチューンで流す。メトロイドのエンディング曲が流れた時は、不覚にも目頭が熱くなった。ああ、過去と現代はつながってるんだな、と自分のルーツを見た気がして。
2時間殆どが強烈なビートと照明、そして大音量。 こういうライブを、その日の思いつきで気軽に、低廉な価格で楽しめるのが東京という場所の強みだ。
(2015.02.28)
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