ジャポネ

『ジャリコ横綱』『バジリコ親方』『ジャリコ理事長』
(東京都中央区銀座)

最近、「路スパ」がひそかなブームだという。「路スパ」とは定義が難しい言葉だが、起源としては恐らく「立ち食いそば」からの派生系なのだろう。

蕎麦屋には、立ち食いっぽい店構えだけどスツールが用意されていて、実は立ち食いではない・・・といった中途半端なお店が非常に多い。そんなお店を表現するために、「路傍の蕎麦屋」ということで「路麺」という言い方を提唱する動きが一部であった。「路麺」が主にそばやうどんを意味する言葉だったので、その展開系で、スパゲティを提供するお店は「路スパ」というわけだろう。

この路スパ、の特徴は、全然イタリアンな感じではないという事だ。やれアルデンテだの、麺のゆで汁をトマトソースに若干からませながら、だのといった技法とは百万光年離れたスパゲティ。町の洋食屋風、といえば聞こえはいいが、要はジャパニーズナイズされたスパゲティが提供される。ナポリタンが路スパの代表格にあたるらしいが、確かにあのケチャップ味はB級グルメの本流を突き進んでいる気がする。 ハンバーグの付け合わせに添えてあるケチャップスパゲティを、大まじめに主役格の料理として取り組んでみました・・・それが路スパ、と呼ばれる料理(及びお店)だ。

別に「路スパの店」が最近になって増えた、というわけではない。昔からあったB級グルメな洋食屋が、最近になって再評価され、発掘されているに過ぎない。そんなお店の中で、ひときわ知名度を誇るのが東京大手町の「リトル小岩井」と、東京有楽町の「ジャポネ」だろう。

私は、そもそも路スパ、と呼ばれるものに興味は無かった。しかし、「ジャポネ」というお店では盛りのシステムが面白い、という情報をキャッチし、「盛り」見たさにお店に出かけたのが事のきっかけだった。そこで、味、盛り、店の雰囲気といった飲食店において重要な3要素で激しく感じ入るところがあり、今では足繁く通うようになっている。全メニュー制覇したい、そんな気にさせるのがこの「ジャポネ」だ。

ジャポネ立て看板

イメージから、路地裏にひっそりとたたずむお店かと思っていたのだが、JR山手線有楽町駅から徒歩1分ちょっと、という駅前立地にある。ソフマップの隣だ。

「銀座INZ」という首都高速のガード下にある小さなショッピングモールの中にそのお店は居を構えていた。歩道に目立たない看板がでている。

INZ3号館の中。穏やかな雰囲気

中にはいると、オーダースーツの店、理髪店、包丁店、旅行代理店、内科・・・と無秩序なジャンルで店が並んでいる。今風な作りではなく、なんだか10年-20年くらい時間が止まっているかのような印象を受ける。こういう雰囲気って、ありそうでないよなあ、と思ったが、でも既視感があるのも事実。どこだろうと思ったら、ニュー新橋ビルもこれに近い雰囲気を醸し出していたっけ。

それにしても、こんな静かなところにジャポネは果たしてあるのだろうか。飲食店があるというイメージはあまりないのだが。

この一角だけ熱気むんむんのジャポネ

INZ3号館の一番奥に、目指すジャポネがあった。カウンターだけの席で、通路に面している。シャッターが存在しないことから、夜営業終了したら食材とか現金はどうやって管理してるんだろう、と気になる。

メニューはスパゲティ10種類+カレーライスがメインで、あとはサラダや牛乳などのサイドメニューが少々。

客層はほとんどがサラリーマンだ。場所柄、学生さんの数は少ない。時折女性も混じっているが、だいたい9割が男性といった印象を受ける。

カウンター席ということもあって、客の回転は早い。ぱっと食べて、さささっと出ていく。この店において、「きれいにパスタをフォークで巻き取りたいからスプーンよこせ」などという行為は認められていない。どちらかといえばフォークは、「パスタを巻き取るため」にあるのではなく、「山を突き崩し、麺をほぐす」ために存在している。お上品な食べ方は無用だ。故に、みなさん食べるのも早い。

お昼時になると行列ができるが、案外早く着席できるというのがここの特徴といえる。

お昼時のジャポネは大行列なのだ

とはいっても、この長さは・・・。

ジャポネは、手前の内科の向こう側、左に折れたところにある。行列は左に折れた先にもあるので、この状態で約20人待ちといったところか。

2月22日12時15分時点でこんな感じ。最近、雑誌や新聞で取り上げられる機会が増えたらしく、急激に行列が長くなってきている。

さすがにこの状態だと、お昼休みが終わる13時までに食べ終わる事は不可。この時は、着席できたのが13時だった。

通路剥き出しのお店なので、近隣の店舗に臭いが移りそうな気がする。何しろ、隣は内科、向かいは文具屋だ。しかし、強烈な換気扇を回しているのか、不思議と周囲には臭いが漏れていない。さすがに臭い対策は万全か。

※後注:マクドナルドができてからは風の流れが変わったのか、INZ3号館全体が香ばしい臭いに包まれるようになった。マクドナルドの臭いなのか、ジャポネの臭いなのかは不明だが。

バジリコレギュラー

ジャポネにどのようなメニューがあるのかについては、別サイトで詳しく説明しているところがあるので、そちらを参照願いたい。ここでの説明は長くなるので割愛。

まず、こちらはバジリコレギュラー。

このお店は、それぞれのメニューにおいてサイズが3通り選べるようになっている。一番少ないのが「レギュラー」、まさにこの写真のサイズになる。レギュラーといっても、結構なボリュームがある。お上品に食べるパスタ屋のパスタでいったら、2-3人前くらいあるかもしれない。

私の胃袋キャパにおいて、レギュラーを食べると言うことは絶対にあり得ないので(自慢して言う事ではないが)、今回は女性の方に同行頂いて、ようやくレギュラーの写真を撮ることができた。

ちなみにレギュラーで物足りない人は、150円をプラスすることで「ジャンボ」になる。レギュラーの1.5倍程度に量が増える。

ジャリコ横綱

ジャリコ横綱レギュラー<ジャンボ、ときて、三段階目の盛りは「横綱」となる。ジャポネにおいて、メニュー上の最大の盛りということになる。レギュラーから250円増し。

写真はジャリコ横綱。お値段は800円。

比較対象物が無いからいまいちぴんと来ないと思うが、先ほどのレギュラーと比べるとだいたい2倍強あるのではないか。プレートの端から端までがだいたい30cmくらいある。

ジャリコ横綱を横から見たところ

横から見たところ。幅もあるが、高さもある盛りつけだ。

奥にタバスコの瓶が見えるが、われわれが一般的に認識しているタバスコの瓶とは大きさが全然違う。よく見て欲しい、お茶が入っているグラスよりもごついサイズを。成人男性の手首くらいの太さがある。スパのボリュームが豪快なので、消費されるタバスコの量も必然的に大量となるのだろう。

ちなみにパルメザンチーズの容器も同じく大きく、子供の二の腕くらいのサイズはある。

麺がものすごく太い。なんでも、2.1mmの麺を使っているらしいが、そんなものスーパーでは売られていない。うどんや蕎麦を食べ慣れてきた日本民族にとってはちょうどいい太さ、という事なのだろうか。そういえば、名古屋の「喫茶マウンテン」も凶悪なまでに極太なスパゲティを使っている。B級スパの条件は、太麺なのかもしれない。

具が特徴的だ。和風アレンジというのが、「路スパ」の特徴なのだろうが、たとえばこのジャリコの場合、小松菜、トマト、しその葉、豚肉、玉ねぎ、しいたけ、えびが入っている。そして、全体の味付けはしょう油。完全に和風テイストだ。美味いのか?と言われると、これがジャンクに美味い。しょう油が香ばしく炒められていて食欲をそそる。ただし、塩味と油っぽさはつきまとうので、量の多さも相まってあまり体には良くなさそうな気配。

バジリコ親方

さて、レギュラー<ジャンボ<横綱、というメニュー構成が「表メニュー」だとすると、「裏」も存在する。
メニュー上の記載はないのだが、横綱で物足りない方のためにさらに上級者コースが用意されている。

写真は、「親方」。横綱の上位に位置する。レギュラーから横綱までは同じサイズのプレートで提供されるのだが、親方以上になるとプレートが変わる。オレンジ色の縁がついた、幅45cmくらい?・・・もう少し短いか?・・・の巨大さ。

でかいことはいいことだ、とビグザムを建造したジオン軍の栄華が忍ばれます。

もうこうなると、狭い店内、自分の肩幅と同じくらいの皿幅になってきて隣の客と干渉してしまいそうだ。これ以上でかい皿は、このお店では無理だ。

量は、横綱の1.5倍程度といったところか。レギュラーと比較したら4倍近くは量が多いんじゃないか。

親方とレギュラーの比較

レギュラーとの比較。奥のプレートがレギュラー。ただ、レギュラーの方はある程度食べられているため、単純に量の比較はできない。皿の大きさだけ、参考になる。

遠近法のような気がするが、決してそうではない。まさにこれだけサイズが違う。レギュラーのプレートだと、皿を受け取る時に「手に持つ」という感じなのだが、親方の場合「両手で抱きかかえる」というかたちになる。

まるで、立食パーティーやホテルのバイキングにおけるスパゲティのようだ。これを一人で食べようとしている、恍惚と恐怖。さすがにこのクラスのボリュームになると、どのメニューであっても良いというわけではない。具がシンプルであればあるほど、「量が少なくなって食べやすいだろう」と考えるのはまだまだ二等兵。具がいろいろ入っていて、味に飽きが来ないものを選んで初めて一等兵だ。

ちなみにこのお店で一番ハードルが高いのは、カレールーがかけれているだけ、という「インディアン」だという。途中で激しく味に飽きるという説あり。

親方のさらに上には「理事長」と呼ばれる盛りも存在する。プレートは親方と同じだけど、この幅に加えて「高さ」があるので、絶望的なビジュアルになる。あれは無理だ、とほとんどの人が思うだろう。

先日、その理事長にチャレンジしている人がいたが、案の定玉砕していた。いつの日か、理事長を制覇したい・・・そう思うが、別に食べきったところで何かもらえるわけでもなし、体調を壊すのがおちだ。やめておいた方がいいのかもしれない。

理事長のさらに上として「横綱審議会」というメニューがある、という情報も一部流れていたが、これはどうやらギャグであって、事実ではないらしい。さすがに、これ以上の盛りをフライパンで作るのは物理的に無理か。

(2005.10.03追記)

いよいよ、最後の牙城であった「理事長」にチャレンジしてみることにした。「親方」を食べても限界感は特にこなかったので、理事長でも行けそうな気がする。

昼下がり、ちょっとだけ店内に余裕ができている時間に訪問。店員さんに「ジャリコ、理事長で」とオーダーする。店員さんから「親方までは食べたこと・・・ありますよね?」と念のために聞いてくる。この店員さんからの確認行為は、親方オーダー以上の条件でフラグが立つようだ。もちろん、こちらは深く、そして無言でうなずく。

理事長を頼む際、さすがにジャリコ以外は選べなかった。単調な味の料理だと危険すぎる。味に飽きる、というのが陥落する一番の原因となるので、できるだけ具の種類が多いスパゲティを選ばないといけない。間違っても、カレーを上からかけただけの「インディアン」なんて頼んでは駄目だ。

理事長の調理が厨房では始まっていた。見た目、特に何ら変化はない。・・・いや、違う違う、普通、一つのフライパンで二人前のスパゲティを調理するのだが、今回は厨房スタッフが「ジャリコ理事長入りマース」と言ってゆで置きしてあるスパゲティをフライパンに投入していたけど、それがまさに一人前。そうかぁ、あれを一人で食べるのかぁ。

他人事のように感心してしまった。

ジャリコ理事長

しばらくして、マスターから「はい、ジャリコ理事長お待ちどう。気合い入れて食べてね」とお皿を手渡された。

以前、親方を注文したときは「残さず食べてね」と言われたが、理事長クラスになると「残さず食べる」ということはお店としてもあまり期待していないのかもしれない。とにかく気合いで頑張れ、と。

ジャリコが手渡された瞬間、カウンター席にいる全てのお客さんのフォークさばきがぴたっと止まり、空気がどよめくのが判った。

「理事長って何?」
「そんなオーダー、メニューにないぞ?」

なんて声も聞こえる。それ以上に、

「うわ、あんなの食えねぇ」
「よく食べるなあ、信じられないよ」

という奇人変人を見るような発言がぼそっ、ぼそっと聞こえてくる。ほっとけ。

さて、理事長。言うまでもなく素晴らしい盛りなのであるが、お皿が大きい分ボリューム感が非常に掴みにくい。親方と比べてどうだったっけ?

ジャリコ理事長側面。

お茶のグラスと高さが同じこのページの上にある親方の写真と見比べてみるとよくわかるのだが、お皿の大きさは親方・理事長ともに同じ。ただ、盛り上がり方に違いがあった。

親方は、この黄色縁の皿にのっぺりと盛りつけましたという感じ。理事長は、こんもりと丘を作るほどの量を盛りつけてある。なるほど、確かに理事長と名乗るだけあって、えらそうなボリュームだ。

何グラム使っているのだろう、麺を?

乾燥重量で考えると、500gは余裕で越えていると思うのだけど、2.1mmだか2.2mmだかの極太麺であるがゆえに、量がどれくらいなのかわかりにくい。普段食べ慣れない麺の太さだからだ。

いずれにせよ、完成品は1kg以上あるし、カロリーは2,000kcal以上はあるんじゃないか。ジャンクだねぇ、無謀だねえ。

でも、おいしく頂く事ができた。味の飽きが懸念されたけど、まずはノーマルで食べ、途中から粉チーズをふりかけ、最後にタバスコを投入したらばっちり。飽きもせず、最後までするするっと食べることができた。

これでお値段、900円。お昼に食べたら、確実に夕食はいらない。腹持ちがとてもよろしい食事だ。900円で夕食代が浮くことを考えればこれはラッキーとしかいいようがない。

・・・おい、いい加減にしとけよ。そんな不摂生やってたら、体壊すぞ。

と、いうわけで帰宅後、夜12時近くに夕食を食べました。やっぱり一日三食が健康の基本でしょ。

バカもん、だからといって寝る直前に食べるやつがいるか。逆効果だ、逆効果。

(2004.11.18ほか)

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