ぎょうざやさん

『肉野菜炒め定食LL』 (千葉県流山市平和台)

流山に「ぎょうざやさん」というお店がある。その名の通り餃子専門店であり、と紹介したいところなのだが、実際はよく町中にある中華料理屋の風情だ。ラーメン、チャーハン、炒め物など、餃子以外にもいろいろな品そろえでお客を出迎えてくれる。

もともと餃子専門店だったのが営業方針の転換で餃子以外も取り扱い始めたのか?とも思うが、厨房のサイズや機器の設置状況を見る限りそういうわけでもなさそうだ。「ぎょうざやさん」という名前の、中華料理屋さんと認識するのが一番良さそうだ。

まあ、ラーメン屋さんであってもちょっとした中華料理を出す店もあるわけで、それは特に違和感がなく世に受け入れられている現実がある。それを考えると、餃子屋と名乗っておきながら中華料理屋、というこのお店のスタイルについて深く考えるべきではないのかもしれない。

ただ、これだけストレートな名前を冠しているからには、きっとお店としては餃子に相当の自信があるのだろう。お前ら全員餃子食え、というくらいの気合いが入っているかもしれない。しかし、現実として、このお店の知名度を高めているのはその餃子ではなく、それ以外の料理なのであった。

このお店は、大変に結構な盛りで料理を提供することで知られている。しかも、良心的な低価格で、だ。

この店名でインターネットを検索すると、盛りに対する感嘆の声とチャーハンの写真を多数発掘することができる。別にチャーハンに限って盛りが素晴らしいというわけではないのだが、最もシンプルな外観であるが故に、そのスケール感を体感しやすいのだろう。その証拠に、大抵このお店を紹介する時に使われる写真は「チャーハンLL」である。その様相たるや、シリコンを入れて豊胸手術をしたグラビアアイドル、といえる。うむ、我ながらわかりにくい例えをしてしまった。

現実的には4合くらいは米の量があるのではなかろうか。なんとも立派な、見栄えのあるチャーハンだ。ご主人が中華鍋を振るう時、米の重さで腱鞘炎になってしまいそうだ。大丈夫だろうか。その盛りを見るたびに心配になる。

今回、クリスマスイブイブということでぎょうざやさんに行ってみることにした。いや、別にクリスマス前々日にぎょうざやさんに行くことに意味はないのだが、まあ、ストレス発散だ。仕事が追い詰められていて、このときの私は、うつ病直前にまでなっていた。休職まではカウントダウン状態だったので、せめて気分転換のためにLLサイズの盛りでヒーリングしてもらおうと思った次第だ。

ここでチャーハンを注文するのは、既に他サイトで取り上げられている事の後追いで全く面白くない。あまのじゃくの私は今回は肉野菜炒め定食を注文してみることにする。うずたかく積み上げられた野菜で、「まるでクリスマスツリーのような肉野菜」を見てみることにしようではないか諸君。

黄色い壁が目立つ店の外観

目指すお店は、流山駅から伸びる「駅前大通り」的な道をまっすぐ進んだちょっと先にある。・・・と言うと聞こえは大変によろしいが、流山周辺は一大住宅地となっており、駅前すぐから閑静な町並みが広がっている。 そんな静かな中に、なんだか目立つ黄色い建物が交差点にある。それが、ぎょうざやさん。

近くに空腹度数MAXの学生が巣くう学校があるわけでもなく、何の変哲もない、中流階級の人たちが平和に暮らす町中に突如として現れる美貌の盛り。全く不思議なことだ。美貌の盛りは、生息場所に法則性が無いようだ。

店の正面

お店の入口には電光掲示板があり、そこには「当店の盛りを前に巷のガキどもはガクガク、ちょっとした大食い自慢は天狗になった鼻をへし折られること必至」なんていう感じの宣伝文句(おかでん意訳)が表示されている。

テイクアウトもできるようで、お持ち帰り受付用の窓がある。美貌の盛りをご自宅にデリバリー、というのも少し魅力を感じるが、自宅だったら自分でたくさん料理を作って盛れば良いわけで、それはあまり意味がない。やはり、お店で、お店のお皿に盛られてこそ意味がある。

ちなみにこのお店、入口脇には聖教新聞が置いてあった。自由にお持ち帰りください、と書かれている。「元気がでる新聞」とも書かれている。腹いっぱいの料理を食べさせて元気をつけさせるだけじゃ飽き足らないらしい。すごいガッツだ。

LLが「想像以上でーす」なんだって。お気楽だ。

お店の中には、目立つ場所にこのような注意書きが出ている。

Lサイズで「ちょっとびっくりサイズ」と言っているのに、値段はたったの50円増し。その僅かな値段に一体どれだけのポテンシャルを秘めているというのか。 ましてや、LLサイズにすると通称「超大盛り」。解説書きには「想像以上でーす」と書かれている。これが100円増し。想像を超える盛りを出すぞ、と犯行予告をしているわけで、何とも頼もしい。「でーす」と語尾を伸ばすことでて軽薄な印象を与え、お客を油断させる策略に違いない。

ただ、チャーハン大盛りであるとかラーメン大盛り(麺の玉数が多い)というのは見聞きしたことがあるものの、炒め物の量が多いというのは正直私自身想像が難しい。ご飯の盛りが多い定食屋、というのは多いが、おかずの量が多いお店というのはそれほど多くはないからだ。埼玉の「古都」もなかなかなおかずの盛りだったが、まだあれは想像の範疇と言える。このお店の場合、「想像以上」と宣言する以上、一体どのような物体が出てくるのかどきどきさせられる。

肉野菜炒め定食LLを注文し、しばらくすると厨房の中でご主人が調理を開始した。じゃっ、じゃっと炒める音がする。その音からすると、さすが業務用だけあってコンロの火力は強そうだ。しかし、その割にはなかなか完成する気配がない。どうやら、炒めている量が相当多いので具材に火が通るまでに結構時間がかかるらしい。一体どんな量なんだ。

肉野菜炒め定食LLの勇姿

待つこと10分ほど、お待たせしました、こちらが肉野菜炒めLL。

山が来た。なにやら、子供が砂場で作った山のようなのがテーブルにやってきたぞ。これが、肉野菜炒めなのか。想像以上という言葉に偽りなしだ。 デパートのお総菜売り場みたいだ。100g198円、なんて値札が付いていたら非常によく似合う。お一人様用でござい、とお盆の上にご飯とスープがセットで添えられていたら、どう見ても違和感がある。

野菜炒め大好き人間にはたまらない盛り

肉野菜炒め、といっても世にいろいろなものがあるが、このお店の場合は豚肉、もやし、にら、にんじん、玉ねぎという組み合わせ。キャベツは入っていない。 うずたかく積み上げられ・・・と形容しようとしたが、いや、「うず」高く、ではない。「すごく」高く、と言うしかない。近くからのどアップ写真を見ると、何かの岩峰に見える。山頂に立ってヤッホーヤッホーしたくなる形だ。もし自分が小人だったら、ぜひあのてっぺんに立ちたい。そして眼下に広がる絶景を満喫したい。そういう盛りだ。

肉野菜炒めを横から見た図。素晴らしい。

横から見た肉野菜炒めLL。自宅のフライパンだったら当然一度では作れない量だ。フライパンのふちいっぱいまで作ったとしても、二回作らないと無理だ。これは、プロの機材と技術ならではの料理といえる。自宅ではお目にかかれない、ハレの料理。 ・・・そう思って見ると、なにやらこの盛りが誇らしげに見えてきた。どうだ、とこちらに語りかけてくる。 それにしてもこれだけで一体何グラムあるのだろう。「野菜不足の食生活を送りがちなアナタにぜひ」なんてお薦めしたとしても、こんなに食べたら野菜不足解消どころか、カロリーオーバーだ。

ご飯の盛りもさりげなく素晴らしい

横に添えられているご飯。 普通、大盛りの店はご飯が偉そううな盛りであるわけだが、このお店の場合は違う。あくまでも、メインである料理に花を添える程度のインパクトしかない。 かといって、盛りが少ないというわけでもない。ラーメンどんぶりより一回り小さいものの、それでも十分に大きいどんぶりにご飯がよそってある。地味ながらも、こちらも手加減なしだ。

完食。大変美味しゅうございました。

肉野菜炒めはにんにくが効いていて、なかなかおいしいものだった。食べすすむにつれて段々口の中が塩辛くなってくるが、大量にあるご飯のおかげで十分それは緩和できた。 見た目ぎょっとする量ではあったが、気が付いたらおいしく食べ終わることができた。

お値段は、730円+LL代金100円の830円。メニューを見たら、このお店で一番高い料理を食べていたことになる。大変に安い。お店としてやっていけるのか、ちょっと心配になる。 駐車場がわかりにくいところにあるとはいえ、車で訪れるには常磐道流山ICからそう遠くないこともあり比較的便利。今後、時々このお店を訪問し、各種LLサイズの料理を食べてみたい。

(2006.12.23)

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