はすぬまのひもの屋

『でっかい!ジョッキ生』 (東京都大田区東矢口)

蓮沼御膳各680円

JR京浜東北線の蒲田駅。繁華街として雑多な店が数多く並ぶ。そのためか、外食すると比較的安く収まるのでありがたい街だ。ただ、風俗店の勧誘がうるさいのと、暴力団の事務所がたくさんあるといううわさがあって少々怖いので、住む場所として適しているかどうかはその人の感性次第だろう。

ただ、蒲田を始発駅とする東急池上線(五反田行き)に乗ると、繁華街の明かりはほどなく消えていき、閑静な住宅地の中へと入っていく。蒲田から一駅、「蓮沼」駅を降りると、そこは完全な「人が住む場所」と変化を遂げていた。 まず、駅前にスーパーがない。蒲田で買えば良かろう、ということか。私は人生経験の浅さ故に「最寄り駅の駅前にスーパー(もしくは食料品店)が無い」という事が無かったため、この光景は新鮮であった。

代わりに目に付いたのが、焼き鳥の店、もつ鍋の店、そして干物を焼いて提供する店だった。スーパーは無くても居酒屋系だけは軒を連ねているから不思議なものだ。

駅前のもつ鍋の店は、飲み放題食べ放題で3,500円だった。しかも3時間制というロングスパン。3時間ももつをかみ続けていたら、あごが翌日筋肉痛になりそうだ。もともとが安いもつ鍋とはいえ、この価格設定はお得だと思う。いずれは食べてみたい。

時刻はすでに22時。終電に間に合うよう帰宅したかったので、残された時間はあと1時間程度だった。もつ鍋で3時間はあんまりだし、焼き鳥屋で飲み食いを始めたら1時間で終わるわけがない。消去法として、「はすぬまのひもの屋」なるお店を夕食場所とした。連れいわく、ここは夜でも定食をやっている、という。外見どうみても居酒屋であり、昼は店を遊ばせておくのがもったいないので定食営業、夜は本業の居酒屋・・・といった風情である。

私はおおいに訝しんだ。本当に夜でも定食をやっているのか、と。答えは是、だった。店頭に「蓮沼御膳」と書かれた定食メニューが置いてあり、食事目的の来店も歓迎であることを無言でPRしていた。 値段はどれも680円ととても安い。まさに「居酒屋のランチメニュー」価格だ。

ランチ営業やっているお店で多いのが、「昼と夜とでは、同じ物を頼んでも夜の方が値段が高く付く」ということだ。ランチとディナーでは店における原価の考え方が異なるので、このような現象が起きる。

ちょうど今読みかけである、吉本佳生著「クルマは家電量販店で買え!」に全く同じ事が書いてあったな、と思い出す。生活シーンのあれこれを経済学的観点で解説する本で、前著「スタバではグランデを買え!」の続編にあたる。理論を語り出すと「平均コスト」と「固定・追加コスト」の概念を紹介しないといけなくなるので、この場では割愛するが、興味があれば買って読んでみると、なかなか面白いのでお勧めしておく。中身はあまりない本だが、具体的事例の取り上げ方が旬なものをそろえているので、とても興味深い。

定食の前菜

吉本佳生氏の著書は兎も角、680円で、居酒屋で、夜も定食が食べられるとなればこれは喜ばしいことだ。ただ、私のような飲み助の場合、このお店の暖簾をくぐったが最後、「今日は食事だけ」のはずがそれだけでは済まないこと間違いなしだ。お冷やを頼むつもりが、ジョッキを頼んでしまう。ちょうちんアンコウみたいなものだ、光で小魚(このばあい私)をおびき寄せておいて、ぱくっと食べてしまう(私がお酒を注文してしまい、結局結構な出費となる)。

居酒屋定食となると種類は自ずと限定されそうなものだが、ここは豊富な品そろえだった。「ひもの屋」と名乗っているので当然干物(魚)が中心だが、肉も取り扱っている。さすがに肉はビーフジャーキーのような干物ではなく、瑞々しい肉を使っているようだ。

メニューをざっと列挙すると、

あじの開き、サンマの開き、文化サバ、塩鮭炭火焼き、サーモンハラミ、鮭の親子丼、大山鶏香味炙り焼き、豚バラ肉わさびポン酢、豚ロースみそ焼き、今日の日替わり御膳。

さすがにお得だからといってこれらを毎日ローテーションしていたら、口の中が塩辛くなりそうではある。とはいえ、普段使いには良い品そろえだ。

店に入ると、まず玄関先に大きな囲炉裏があり、大きな網が敷かれた下に炭火が置かれてあった。見た目のプレゼンテーションばっちりだ。今日はぜひビールを飲もう。

いや待ち給え、終電まで時間がないはずだ。蒲田あたりのカプセルホテル一泊は遠慮したい。

「ひもの屋」について後で調べてみたところ、結構な数でチェーン展開がなされていることが分かった。首都圏近郊だと、特に珍しくないお店といえる。とはいっても店ごとにある程度の自由裁量があるようで、オフィシャルサイトを見ても「ひもの屋共通メニュー」という表現に留まっている。よって、上記680円ランチ、そしてこれからさらに追加で頼む品について他店でも同様に提供している保証はない。

注文をするために店員さんを呼ぶ方法だが、店が長細いため「すいませーん」と呼んでもなかなか気付いてもらえない。どうしたものか、と思ったらふと柱にスイッチがあることに気がついた。よくファミレスにある、卓上の呼び出しボタンの類ではない。単なる、ごく普通の家庭にある、照明のスイッチ。 てっきり最初はこれが電灯の電源なのかと思ったが、それにしてはやけにユーザーフレンドリーな位置にあるし、各テーブル毎にある。もしや、と思ってスイッチONにしてみたら、しばらくしたら店員さんが登場。やはり呼び出しボタンだった。こんなさりげないボタンは初めて見た。

定食の注文をしてしばらくすると、まずは小鉢類が卓上に届けられた。炭火焼きの干物はでき上がるまでしばらく時間がかかるので、まずはこれを食べてお待ちください、というわけだ。たっぷりのサラダと、冷や奴。この時点で680円ランチの域を超えている気がする。

もっとも、都心に居を構えていない人からすれば、「680円もあれば結構なもの食えるべ」という意見もあろう。あくまでも私は東京の物価、という観点でこの定食を観察し、そして感嘆しているということをご配慮願いたい。

サーモンハラミ定食

しばらくして届けられたのが、私が頼んだサーモンハラミ。サーモン「ハラス」ではなく、サーモン「ハラミ」と呼称しているところがやや特徴的。どちらも同じ意味ではあるが。

とにかくその長さには驚きであった。ゴボウを地中から掘り当てました、という感じでもあるし、アナゴを釣り上げました、という風情でもある。とにかく、長い。お皿の対角線を目いっぱい使っているがそれでもはみ出し、中空に突き出ている。

昔、旧約聖書のお話だが、少しでも神の領域に近づこうと、バビロンの塔という高い建物を建てた人たちがいる。結局神の逆鱗に触れ、バビロンの塔は崩壊、作っていた人たちはお互い言葉が通じなくなるという神罰を受けた。「高さ」の点では既に天罰は下った。今、このサーモンハラミは、「横幅」という点で神の領域を侵そうとしているのではないか。そう考えると身震いせざるを得ない。一刻も早く食べてしまわないと。

長い長い

端から順に箸でほじくりながら食べ進むのが正しいと分かってはいたが、やはりぜひやっておきたいのが「箸でサーモンハラミをつり上げる」こと。見よこの長さを。思わず「採ったどー」と叫びたくなる長さだ。 これをこのまま恵方巻きのように、無言で一気にかぶりつくというのは大層男らしい立ち振る舞いではある。

しかし、中に骨があるかもしれないし、そもそもせっかくのこの脂の乗ったハラミ、ご飯とともに食べないともったいない。少しずつ食べていこうではないか。 いざ、食べてみるとものすごい脂。網焼きにされているのである程度の脂はしたたり落ちたはずだ。しかし、そんな気配を微塵も感じさせない脂の量。脂の永久機関がこの中にはあるのではないか、と思わせた。 こうなるとご飯がすすむ。

しかしこのお店の場合、ご丁寧に大ぶりのお椀のおみそ汁、漬物に加えてとろろまでがついてきている。このとろろは納豆にもすることができるので、お好きな方をどうぞ。これで680円とはありえへん値段である。私としては、近所にかような店が無いことが悔やまれてならない。近所に刺身が凄くおいしいお店があり、そこは行きつけなのだが・・・刺身を食べ続けていると、体が芯から冷えてくるのだった。やはり干物はうまい。

あじの開き定食

連れが注文したあじの開き定食。鰺がとても大きい。スーパーで売られているような「3枚1パック」で売られている小振りな奴とは桁違いだ。スーパーのものは「朝食の食卓にどうぞ」といったサイズだが、こちらのお店のものは「夕食のメインディッシュにもふさわしい大きさだぞこの野郎」という威厳がある。ほっけ並のサイズがあるから素晴らしい。

その大きさ故に肉厚で、食べるととてもふっくらとしておいしかった。小さい鰺の場合、つい火を通しすぎてしまいぱさついた仕上がりになることが多いだけに、このふんわり感はうれしい。

それにしてもこの写真、鰺の大きさをお伝えしたくて撮影したのだが、みそ汁椀の大きさが逆に際だってしまっている。確かに大きかった。なぜか、無性にお椀が大きかった。

ドリンクメニューに異変が

このように、蓮沼という初めての地で思いがけない幸せな夕食を得たのであった、まる。

とこの話を締めくくるのはちょっと待って欲しい。それでは「美貌の盛り」ではなく「胃袋至上主義宣言」あたりで取り扱うべき話題だ。 今回紹介したい真のものは、もう一つあった。

時間は定食が卓上に並ぶことから遡るが、メニューを眺めていたらあることに気がついたのだった。ビールの価格が変だ、ということに。 私は麦酒を炭水化物兼水分摂取の素としているので、麦酒の価格については敏感だ。飲食店に行くと、まず麦酒の値段を確認する癖がついている。麦酒はお店が利益を上乗せしやすい商品であり、その価格設定次第でお店が期待している客層や利益率がなんとなくわかる。生ビール(中)とメニューに書いてあって、出てきたのがタンブラーだったら「ああ自分が居る場所じゃないなここは」とさっさと退去するのが吉だとさえ考えている。

その点このお店はとても不思議な価格設定だった。 「キリングラス生200円」、という文字が先頭を飾る。安い。ただ、お冷やを飲む程度の大きさで生ビールを出すお店は時々あることから(特にランチタイム)、この「グラス」が何を意味するのか次第といったところだ。 その次にくるのが「キリン小生420円」。小ジョッキで420円か。安くはないと思う。妥当な線か。ここまではまだいい。その次の行で頭を悩ませた。

「でっかい!ジョッキ生530円」。

順番からいったら、恐らく中ジョッキの事を指しているのだと思われる。しかし、今更中ジョッキを「でっかい!」と感嘆符付きで紹介することがあるだろうか?大げさすぎる。ということは、本当にでっかいのだろうか。ただ、「小生」などとの整合性がどうもとれない。しかも、その次の行にある「キリン特大ピッチャー1,800ml 1,680円」というのも悩ましい。ピッチャーの値段としては安い部類に入るが、劇的に安いほどでもない。では、この「でっかい!」の正体は一体何なのだろう。昔の海賊が牛の角をくりぬいて酒の器にしたように、器だけはデカいけど中身は普通、ということなのだろうか。気になって仕方がない。

結局、この日は食事だけで終わりにするつもりだったのだが、興味本位でこの「でっかい!ジョッキ生」も注文してみることにした。ああ、最初の想定通り、680円では済まないのだな。

容疑者が取調室に到着するまでの間、連れと議論を重ねる。 瓶ビールの値段を見ると、一番搾りの大瓶が600円、ハートランドの中瓶が500円といった価格帯。一般的に、瓶ビールよりも生ビールの方が容量当たりの価格が高いので、この「大瓶(633ml)=600円」が一つの目安になりそうだ。「でっかい!」といっても、実質中ジョッキあたりのものが出てくるというオチとなりそうだ。

ただ、達観するのはまだ早いとお品書きは挑発的な言葉で私たちに語りかけてきた。「当店では生ビールの値上げはいたしません!!がんばります!」だ、そうだ。ここまで言い切るところを見ると、生ビールの価格には自信がある可能性は十分にある。諦めるな、寝たら死ぬぞ、という冬山遭難の境地。 生ビールがタンブラー一杯700円+サービス料10%しやがります、というお店で「値上げしないでがんばります」と言われても、「もともと相当ふっかけているじゃねーかこの野郎」と私らしからぬ下品な言葉で罵って・・・いや失礼、窘めるであろう。しかしこのお店は少なくとも生ビールに関しては普通の価格であるようだ。それで「がんばります」宣言するとなると、「でっかい!」がやはり気になってくる。

想像以上にデカいジョッキがきた

様々な期待と、そして「期待しすぎると後で後悔するぞ」というささやきとの板挟みに遭いながら待つ。 心が落ち着いて清らかな状態になったとき、注文の品は卓上に舞い降りた。 ・・・舞い降りた、という可憐な表現はあわない。「ごとん」と落ちてきた。 こ

れが「でっかい!ジョッキ生」530円の正体。

・・・でっかい、よな。うん、でかい。これはでかいぞ。中ジョッキの域をはるかに超えたサイズのジョッキが、上げ底でもなんでもなくそこにはあった。HIMONOYA、のロゴとハゲおやじのデザイン付き。このハゲおやじに若干いらっとくるが、それはどうでもよい。中になみなみと注がれた黄金色の麦の恵みに乾杯だ。

ご丁寧に目盛りつきのジョッキ

側面を見てさらにびっくり。「キリン一番搾り<生>」のロゴが小さく入っているのがなんとも地味。普通、キリンのロゴをデカくジョッキに表示して、その代わり広告宣伝になるからといってジョッキをメーカーから無償供与してもらったりするものだ。その点、このお店はどうでも良いカネにならんハゲおやじが前面に出て、若干はスポンサー費用を出したであろう一番搾りのロゴが小さく。

いや、ロゴはどうでもよいのだ、その一番搾りロゴの下に、一本の線が引いてあった事に驚いたのだった。線の先には、「500ml」の文字が。要するに、「ここまで注いだら500mlですよ」という目印だ。ということは、このジョッキは少なくとも650ml以上は入っている気配。大瓶よりも量は多そうだ。完全に「瓶」と「ジョッキ生」の価格関係が逆転してしまっている。これは痛快なことだ。

麦酒好きだが財布は有限であるおかでんは、「最初の一杯は生ビールだけど、二杯目からは瓶ビールに切り替える」なんてことをする場合がある。生ビールのコストパフォーマンスがあまり良くないからだ。その点、このお店は「生ビールの方が安い」。当然泡立ちも良く、瓶ビールよりもおいしく飲める。安くて美味いのだから痛快だ。

このサイズで530円というのは、あまり例がないのではないか。もっとも、安っぽい居酒屋や立ち飲み系のお店だったらさらに安い店もきっとあるだろう。しかし、この麦酒が美貌なのは、「同じ店内において、瓶と生の価格が逆転している」ということに尽きる。麦酒飲みとしてこれほど愉快なことはない。

あと、500mlのラインがジョッキに引いてあるのも、今までで初めてとなる光景だった。ドイツ料理店にいけば、グラスには必ず目盛りがついている。麦酒大国の独国は、昔「おいこれは泡ばっかりでビールが少ないではないか」と店員と客が揉めるなんて事が多かったため、法律で「グラスには目盛りをつけること」が義務づけられている。さすがだ。

ちなみに麦芽100%でないとビールとは呼べないということも法律で定められているので、例えばこの一番搾りのように米やコーンスターチが入っているものはドイツ人に言わせれば「ビールテイスト飲料」ということになる。

ハゲおやじマークのジョッキが作られているところをみると、このサイズのビールは各地にある「ひもの屋」チェーンで展開されているはず。店ごとに価格は違うだろうが、530円に近い値段で提供・・・と、ここまで書いた時点で早速訂正が。嗚呼、今ざっくりと検索かけてみたが、やはり他店は高かった。東池袋店で680円、目黒で650円だった。・・・いやまて、さらに訂正。武蔵小杉も530円、笹塚も530円だ。探せば安いお店は結構ある。素晴らしい。

ただ、私にとって一番使い勝手が良さそうな東池袋店がありきたりなお値段設定というのが非常に惜しい。 結局、定食だけで済ませるはずが、定食が届く前に1杯飲んでしまい、サーモンハラミの脂身に調子づいてしまいもう一杯。680円で済むはずが、ビール2杯でっかく飲んでしまった。ただ、悔いはない。

しかしお会計でびっくり。あれっ、深夜料金として10%が加算されているではないか。このお店、ファミレスみたいだ。深夜料金とるとは思わなかった。夜遅くまで営業するのが前提である居酒屋で深夜割り増しってあまりないと思うのだが、つくづく変わったお店だ。 いわゆる「生ビール」と「瓶ビール」の価格差。これはれっきとして存在し、常に生ビールの方が値段が高くつく。時々ニアリーイコールな店も見受けられるが、「生の方が明らかに安い」というのは、私にとってこの店が初めての事だった。だから、「美貌の盛り」にセレクトした次第だ。

なぜ生の方が高いのか、という事については想像に難くない。恐らく、仕入れ価格そのものは生の方が安いはずだ。 大瓶633mlごとに注入、ラベリング、ケース詰め、運搬、そして最後は瓶の回収。瓶は何かと手間暇がかかる。その点、生の場合は大体10リットルもしくは20リットルの樽だ。もちろんこれも回収の上再利用されるが、ラベリング不要な上大量輸送で効率が良い。

しかし、生はそこからが面倒くさい。生ビールサーバを店に設置し、炭酸ガスボンベを付け、管をタンクに取り付けなくてはいけない。生ビールサーバはメーカーが無償で貸してくれるかもしれないが、面倒なのは毎日サーバをバラして洗浄殺菌しなければならないということだ。瓶を冷やして、オーダーが入れば栓を抜いてはいどうぞ、という瓶ビールとは店の負担が違う。その差が、価格に現れているのだろう。

以前私は飲食店で仕事をしていたことがあったが、その際のドリンクマシンの分解と洗浄は非常に大変だった。それを考えれば、手間賃が価格に反映されてもおかしくはない。 とはいっても、それは素人の浅知恵だ。もっと何か違う理由があるのかもしれないと思い、餅は餅屋とキリンビールのお客様問い合わせ窓口に直接電話をかけて聞いてみた。 大の大人が、小学生の自由研究のような質問しやがってと思ったかも知れないが、たいへんににこやかに応対していただけた。まずは感謝。

しかし、その回答はなんとも歯切れが悪いもので、イージスシステム並の知能を持つとまで自称する私でも理解が難しかった。ただ、最終的に話をまとめれば至ってシンプルであり、「メーカーとしてはお店の価格にはタッチしていないので知らん」という事だったのだが。

昔はメーカー希望小売価格というものがありまして・・・というところからオペレーターの方は話しはじめたので、すわ何事かと思ったが、結論としてはそういうことだ。メーカーは酒販卸に商品を販売しているわけであって、お店と直接取引しているわけではない。だから、末端価格について言える立場ではないわけだ。 また、取引量に応じてリベートがあったりするだろうから、あまりオープンにはできない事情というのもあるだろう。

ついでに、キリンのオペレーターさんに「ジョッキの大きさというのは、メーカー公認というものはあるのか?」と聞いていた。店によってあまりにまちまちだからだ。しかも、それぞれにメーカーのロゴが入っているということはどういうことやねん、と。なぜここだけ関西弁になるのかは謎。 すると、メーカーとしては特に取り決めはない、というあっけない回答。なるほどそうでしたか。まあ、だからこそあれだけ多種類のジョッキが存在するわけだが。

いまいちすっきりしないので、さらに今度はアサヒビールに電話突撃をかけてみた。今度は、私の質問に即答ではなく、いったん詳しい人?に確認の上回答をしてくれた。結論はキリンと同じものだったが、「これは推測ですが」という前置きのもと、前述の私の推測通り、「ビールサーバーのメンテナンスコスト」を理由としてあげていた。やはりそこに落ち着くのか。想像通りだったが、プロからの回答を得たので、一応の成果としたい。

さらに突き詰めて、「樽生と瓶ビール、どっちが売値安いのか?いくらなのか?」と聞きたかったが、それはメーカーとしては答えられない質問だ。卸値など教えるメーカーがあるわけがない。さすがにこの質問は自重。

最後に、ジョッキのサイズに公式見解はあるのか、とアサヒにもキリンと同じ質問をしてみた。すると、やはりこちらも「特に決まりはない」そうだ。でも御社のロゴ入りジョッキがたくさん出回ってるじゃあないですか、と聞いてみたら、「そのジョッキをメニュー上で何と表示するかまでは関わっていないので」という回答。ああ、なるほど、それは確かにそうだ。明らかに社会通念上小ジョッキなものを、メニューで「中ジョッキ」と書くかどうかはお店の判断。そこまでメーカーが口を出すことではない。大いに納得の上、電話を切ったのだった。

今回は勉強にもなるいっぱい、いや二杯、だったな。ごちそうさまでした。 今度は魚を焼きまくりながら、三杯目に突入したいところだ。

(2008.12.06)

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