ほか弁 日本亭

『デカ4弁当』 (おかでん自宅)

日本亭、というほか弁チェーン店舗がある。多分、馴染みがない人の方が多いと思う。私も、現住所に引っ越すまではその存在すら知らなかった。広島で弁当といえば「サラヤ」だったし、全国的には「ほっかほっか亭」「ほっともっと」「オリジン弁当」などが知られている。そして、今じゃ、すっかりコンビニ弁当が圧倒的シェアを誇っていると思う。

思い返せば「サラヤ」は独特だった。街角にある宝くじ売り場のように、狭いほったて小屋が建っていてそこでの販売だった。当然従業員はおばちゃん一人。あれ、トイレに行きたくなった時はどうしていたんだろう。気になる。

コンビニ弁当で特徴的だったのが、広島を地盤とする「ポプラ」だ。並べられた弁当箱には、ご飯が空っぽだからだ。容器にはおかずしか入っていない。ご飯空間は確保されているものの、空だ。で、その「ご飯無しお弁当」をレジに持っていくと、店員さんがご飯を炊飯器から盛りつけてくれるのだった。温かいご飯を提供しようという意気込みたるやナイス。しかも、「大盛り」オーダーも受け付けてくれるので、その時の胃袋状態に応じて柔軟に増減できるのが素晴らしい。

ただ、残念な事に私が広島で過ごした時代は親と同居しており、コンビニ弁当を食べる機会が皆無だった。結局、今に至るまでポプラで弁当を購入したことはない。ヤラシイ本は買った事があるが。なぜかポプラにはこの手の本は充実していた。ビニールで三冊一パック状態にされており、帰宅して開封するまでは中身がわからない。で、大抵外れくじを引く運命だった。青春とはかくも情けなく格好悪いものだ。

話が大幅にずれた。今回取り上げたい「日本亭」は、埼玉県にやたらお店が多い弁当チェーン店だ。なぜかと思って調べてみたら、本社が埼玉県春日部市。なるほどそういうことか。「山田うどん」が埼玉に多いのと同じ理屈だ(本社:埼玉県所沢市)。しかし、北は北海道から南は兵庫まで、一応東日本+西日本の一部が店舗ネットワークされている比較的規模感のあるフランチャイズチェーンだ。

幸い、というかなんというか、今住んでいる家から自転車全速力で10分程度のところにこの弁当店がある。しばらくは放置プレイ状態だったのだが、ここの唐揚げがデカいらしいといううわさを聞きつけ、一度お試ししてみたことがある。 うむ、確かにでかかった。 これだけでかければ、人に投げつければけがさせることも可能ではないか、と妄想たくましくするほどのデカさだった。そして、激しく満足した。 それから、ちょくちょくこのお店で唐揚げ弁当を買うようになった。今回は、その唐揚げ弁当を紹介したい。

なお、予め言っておくが、ダチョウのもも肉で唐揚げ作りました、みたいな突拍子も無いことをしているわけではない。故に、巨大さには限度があり、常識の範囲内なので過度な期待はしないように。

日本亭紙包み

少し前までは「唐揚げ弁当」というオーダーで通用していたのだが、今回、久々の来店時においては名称に変更が見られた。

日本亭の名物『からあげ』は大きなサイズを『デカから』。普通のサイズを『Mから』と呼び名をかえさせていただきます。

とされている。 恐らく、何の気無しに「唐揚げ弁当」と注文した人が、その唐揚げのあまりのデカさに「おいこれはふざけてるのか?」とクレームを入れたんだと思う。もしくは、そのクレームを想定して、事前に名前を自主的に変えたのか。

実際、この「日本亭」の唐揚げ弁当は暴力的な唐揚げの量だった。ご飯とのバランスが非常に悪く、いつも私はビールのつまみ用として購入していたくらいだ。 そして、ややこしいのが、その他の弁当にも唐揚げが彩りとして一個くらいついてくるのだが、そちらは小振りなサイズだということだ。

たとえば「特のり弁当」を注文して、付いてくる唐揚げは一回り小さい。デカい唐揚げを期待すると肩すかしをくらう。そんな事もあって、「デカから」と「Mから」に名称変更したのだろう。 そのような名称変更と共に、デカから弁当は唐揚げの個数が選べるようになった。最小で、「デカ2弁当」450円。一番多くて、「デカ5弁当」で700円となる。従来の「唐揚げ弁当」が唐揚げ4個だったはずなので、1個多いバージョンも登場したということになる。どう考えてもご飯とのバランスが悪いと思うのだが、普通の人はどうやって食べているのだろうか。おみそ汁が欲しくなる。汁物が無いと、口の中がぱさぱさだ。

今回は、そのような名称変更+メニュー変更があった事を当日現地にて知ったため、敢えて量が最大級の「デカ5弁当」を選ばず、従来からの流れを汲む「デカ4弁当(旧名:唐揚げ弁当)」を注文した。

昼時ということもあり注文が立て込んでおり、厨房内は大忙しだ。大忙し、といってもフライヤーが許容値いっぱいいっぱい。いかに弁当が揚げ物に依存しているかがよくわかる。毎日弁当で生活していたら、確実に体を蝕まれるだろう。気をつけないといけない。 十分に待たされた後、自分が注文した弁当ができ上がった。こちらとしては、早く受け取って精算して退却したいところだ。しかし、お店の人はご丁寧に弁当箱の上に包装紙をかぶせ、その上からゴムを巻いていた。丁重、というか紙の無駄、というか時間の無駄というか。わざわざ何をやっているのだろう。

盛り上がる躍動感

しかし、その無駄とも思える包装紙にはちゃんと意味がある事が、帰宅後に分かるのであった。これが日本亭の真骨頂だ。 写真は、デカ4弁当を横から見た図。念のため言っておくが、まだ未開封だ。輪ゴムも外してはいない。 中、丸見え。 アサリの砂抜きをするために、塩水につけて暗いところに放置しておいたような状態。アサリが油断しきって、アホみたいに口をあけて舌をべろーんと出している。まさにその光景だ。 これは蓋の体を成していない。ただ単に「押さえつけている」だけだ。

もともと、蓋、というのはほこりやゴミが中に入らないようにするためのものだ。そして、中の食材の保温もしくは保冷をしてくれる役目もある。しかし、これは一体なんだ。「力まかせ」という言葉しか出てこない。 もっと大きな容器に入れれば良いのに、と思うが、この唐揚げ専用の容器を作るのはコストとの兼ね合いでよろしくない。蓋で押さえつけていて中身がこぼれないならOKじゃん?という割り切りが素晴らしい。 今回は、この「蓋が全然閉まる気配すら見せていない」弁当の様を、「美貌の盛り」として認定したい。

デカ4弁当

「締まらない蓋」を紹介したので、後はもう改めて記述する必要はないのだが、せっかくなので中身もお見せしておく。 これがデカ4弁当。どう考えてもお前、仕切りの上に載っているだろう?という唐揚げが2個。本来なら2個、うまいことやって3個までしか入らないであろうスペースに4個も入れようとしたから蓋が浮き上がったのだ。

いや、そもそも、この弁当箱の深さだったら、仮に仕切りの上に乗っかっていなくても蓋が閉まらないだろう。閉める気、さらさら無いな、さては。 おかずはいたってシンプル。つくだ煮と漬物。そして、ご飯。なるほど、これだと蓋が閉まらなくてもこぼれないわけだ。煮物だとか、ナポリタンが入っていたら蓋から逃げ出して悲惨な目に遭うだろう。

それにしても返す返す思うが、これ、本当にバランスが悪い弁当だな。確実に満腹にはなれるが。 これがデカ5弁当になると、ついにつくだ煮などが密やかに生息している地帯まで唐揚げ帝国が侵食してくる。もう唐揚げ祭りだ。そこまでして唐揚げ食いたいか。 でも、そこまで人を駆り立てる何か、が唐揚げにはあるのだよな。多分、豚カツには無い、鶏の唐揚げならではの魅力だ。牛?バカ言っちゃいけません、牛は高級肉かもしれないけど、真に愛されている肉だとは到底思えないのです、私にとっては。

巨大な唐揚げ

手にしてみる。 箸でつまむのが正しいお作法だが、ここまで大きいと大層掴みづらい。正しい箸の使い方を学ぶ上で、私は小学生時代にひたすら「小皿の豆を箸でつまんで、隣の小皿に移す」という猛特訓を受けたが、さすがにこの巨大唐揚げの前ではそんな特訓は無に帰す。意味がない。ここは、少々お下品でも手でがしっとつかむのがよろしい。 インド人は手で食事を食べる。その方が美味い、と彼らは言う。箸文化で生まれ育った日本人には理解ができない考え方だが、こうしていざ唐揚げを手にしてみると、彼らの言っている事が正しい事がよく分かる。

ダイレクトに伝わってくる重み、そしてごつごつ感、強めに握ると沈み込む弾力感。ほのかに伝わってくる暖かさもなにやら愛おしい。こういうものも「おいしさ」の一つだ。ただ、インド人が言いたい事は分かったが、かといってカレーを手で食べる気にはなれん。そこだけは譲歩できぬ。

唐揚げをかじってみる

デカからの良いところは、大きいが故に食べ応えがあること、そして食感が幾重にも重なりあっていることだ。時々、火が通りすぎて中までスカスカになっている唐揚げに出くわすが、ここのお店の場合それがない。中まで完璧に火を通そうとすると、よっぽど低温で揚げ続けるか、もしくは表面が焦げるのを覚悟するかのどっちかだ。デカからの場合、中心部分はまだ火が完璧に通りきっていない段階で提供されるので、肉っぽさがあってとても良い。

これをつまみにビールを飲めば、大変に結構な一食となりうる。ただし、欠点は、途中で唐揚げに飽きてくるということと、唐揚げとビールだけでおなかがいっぱいになってしまい、ご飯を余らせてしまうということだ。 翌日ご飯を食べようとすると、既に固くなっていてしょんぼりすることが多いのが惜しい。

デカからを食べたい、でもデカいともてあます。このじゃじゃ馬を乗りこなすにはなかなかの困難を伴う。

(2008.11.24)




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