聚福楼

『烤羊排(羊の背中の焼き物)』
(東京都豊島区西池袋)

羊肉が好きな人は結構いる。昔は羊肉と聞くと顔をしかめる人が一定数いたが、ジンギスカンが市民権をじわじわと獲得したこともあり、そういう人の数は明らかに減ったはずだ。

とはいえ、いざジンギスカンを食べたい、と思っても、案外お店が見つからないことに気がつく。もちろん、あることはあるのだが、焼肉の市場規模の割には数が少なすぎるようだ。10年くらい前はブームということもあってお店が増えたが、今は減ってしまったようだ。芸能人もがジンギスカン屋をやっていた時代も、ちょっと前まではあった。

私個人の見解としては、まだまだ羊肉というのは伸びしろがあると思う。ジンギスカンのように羊肉専門店にするのではなく、焼肉屋の1メニューとして羊肉を扱えばもっと消費は拡大すると思うのだがどうだろうか。

私にとって、パクチーと羊肉は、「熱狂的なファンがいるにもかかわらず、そのファンを飲食業界がうまくキャッチアップできていないジャンル」と認識している。

さて、知人と池袋でジンギスカンを食べようとお店を探している際、偶然見つけたのが今回紹介する「聚福楼」だ。ジンギスカン屋ではなく、名前のとおり中国料理店だ。このお店は中国東北料理を出すらしく、その関係でモンゴルっぽく羊肉料理が売りになっているようだった。我々は別に「ジンギスカン」を食べたいのではなく、「羊肉」が食べられればそれでよかった。豪快に羊肉を食べさせてくれるお店、と聞いてこのお店を選んでみた。

なお、予約の電話をかけてみたら、「ニイハオ」と応答された。それくらい、現地色が強いお店、ということだ。実際、店内の客層は中国人が半分、といったところだった。池袋のリトルチャイナ化が進んでしばらく経つが、こういうところでもまざまざと実感する。その分、ディープなお店が増えて楽しいといえば楽しいのだが、なんだか不気味でもある。

聚福楼

聚福楼は、池袋西口のロサ会館脇にある。このあたりは居酒屋の客引きがとても多く、通行に支障がでるほどだ。正直雰囲気がよくないので、歩く際は早足で、きょろきょろしないで突っ切るのが一番よい。ふらふらしていると、しつこく声をかけられることになる。

テーブル席

比較的小さなお店で、予約はしておくべきだろう。通された席は、赤い粉がすでに待ち構えていた。

赤い粉と調味料

赤い粉は、唐辛子、クミン、ごま、塩などをブレンドしたもの。唐辛子は朝鮮で使われているものらしく、さほど辛くはない。しかし、クミンが混ざっているので、独特の風味がある。クミンを味わうと、「さあ羊肉を食べるぞ」という気にさせられる。それくらい、羊肉と相性がよいスパイス。

卓上には、醤油、酢、塩と並んでクミンも置いてあった。足りなかったら使ってくれ、ということだ。こういう配慮も、異国情緒だ。

背中肉

このお店の売りは、羊肉をブロックで提供することにある。メニューを見ると、堂々1ページを使って「羊の背中の焼き物」と書かれていた。お値段3,800円。やたらと高いが、それだけの量を出すぞ、という犯行予告でもある。

前足、後ろ足もある

背中だけでなく、前足と後ろ足もメニューにある。それぞれ味が違うのだろうから、食べ比べてみるととても面白そうだ。これまで羊肉を食べる際、「ラムかマトンか」、「生か冷凍か」くらいしか気にしてこなかったが、こうやって部位を分けて食べられるというのは魅力的だ。・・・ただし、大量の肉を食べきることができるかどうか、が重要だが。

ちなみに前足は4,600円、後ろ足は5,800円。

我々は店員さんと相談し、人気であるという背中の肉を選んだ。2名が食べる分には、背中の肉くらいがよい、ということだった。どうやら、後ろ足などはさらに肉の量が増えるらしい。

羊の背中

注文をしたら、「写真撮影をしますか?」と店員さんから水を向けられた。はい、と答えたら、しばらくしたら肉のかたまりを持ってきてくれた。今からこれをさばきますよ、ということだ。ありがたいサービスだ。

それにしても大きい。羊肉を愛する人からすると、これだけの肉を満喫できると思うと、この時点で幸せ感で昇天しそうになる。

記念撮影

羊の背中肉と一緒に、記念撮影。

こんな事ができるとは想定していなかったので、とても嬉しい。よい記念になった。何の記念なのだかはよくわからないが。

人と比べてみても、肉のかたまりが大きいことがわかる。さすが3,800円するだけある。これを二人で食べ尽くすと思うと、気分が盛り上がる。

バラされた肉

写真撮影が終わったら、肉は引き下げられた。しばらくしたら、バラバラにばらされ、お皿に盛られてやってきた。さすがにあのかたまりをそのまま網で焼く、というわけにはいかない。あれだけのサイズだと、いつまで経っても中は生焼けだ。

背中の肉だけあって、背骨やあばらといった骨が多く混じる。なので、見た目通りに肉がついているわけではない。とはいえ、「骨のまわりが最も肉としてはおいしい」という法則に基づけば、うまさ凝縮肉、ということがいえる。

例の唐辛子

食べ方だが、例のスパイスをつけるらしい。

最初は、取り皿にお皿のスパイスを取り分けて食べようとしたのだが、どうもスパイスをとりにくい。スプーンがないからだ。困惑して周囲を見渡したら、他のお客さんは皆、焼き上がった肉をそのままスパイスの皿にダイブさせていた。ああ、そうやって食べるのか。

そんなことやったら、食後余ったスパイスはどうするの?使い回すの?捨てるの?というのがとてもとても気になったが、まあいいや。郷に入っては郷に従え、で我々もスパイスの海にどぼん。たっぷり肉に赤い粉をまとわせ、食べた。

うん、うまい。

羊肉特有の臭さはあまり感じられない。癖が弱くて若干物足りなさを感じるくらいではあるが、なにしろ量が多い。本当に、心置きなく、存分に食べることができているのは幸せに尽きる。そして何よりも、ワイルドであり盛り上がる。肉を焼くので楽しい。

つまりは言うこと無し、ということだ。

二人だと肉をもてあますかと思ったが、その他のメニューを冷菜程度に抑えておいたせいもあり、結構あっけなく食べきることができた。「折角だから肉をもう一度頼もうか」という話を真剣にしたくらい、ぺろりと食べられた。しかし、このお店の満足度が高かったが故に、ここはストップした。遠くない内に、再訪したいと思ったからだ。そのときは人数を増やし、その分肉を各種類頼み、豪快に飲んで食べて笑って焼いて、ということをやりたいものだ。

このお店でのオフ会を近日中にやるつもり。今から楽しみだ。

(2014.08.05)

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