3世代またぎのエビフライ

ゴールデンウィークに帰省をする、という習慣はこれまでの僕にはほとんどなかった。しかし、我が家に子どもが加わってから、ゴールデンウィークも帰省をするようになった。まだ小さい弊息子タケの成長を、彼の祖父母に見せたいからだ。

子どもは毎日どんどん成長していく。言葉、動き、思考回路、全てにおいて前進しかない。その力強い進歩は、人類史上最高のコンテンツだと思う。

そんなわけで、昨年に引き続いて今年も、ゴールデンウィークに帰省した。

おかでん家は、家族が揃うと外食に出かけるという文化がある。昭和時代を生きてきた僕の両親は、「外食」はめったにしない。おめでたいとき、久しぶりに家族が揃ったときに執り行われる、貴重なイベントだ。なので、外食に出かけるときは、家族全員神妙な顔つきで、ちょっとだけ良い格好をする。

この日訪れたお店は、僕が小さい頃からよく使ってきた洋食店だ。僕の祖父にあたる人がこのお店のエビフライを愛していたということを今回初めて聞いた。その祖父から2世代後になる僕も、子どもの頃はこのお店を訪れるたびにエビフライを頼んでいたものだ。周りの大人たちが肉料理を食べていても、エビフライを頼み続けた。

その頃の僕は「周りの大人や兄貴が肉を食べるなら、僕はエビフライを食べることを貫き通す」、とあまり意味のない執着心を持っていたものだ。

それが、今から40年ほど前の話。その時点ではすでに僕の祖父はエビフライではなく肉料理を頼んでいたと思うので、「祖父がエビフライを愛していた」というのは、おそらく50年以上前の話なのだろう。

今年、そんなお店のエビフライを弊息子タケが食べた。

彼は「おっきぃねーー!」とエビフライを見て目をまんまるにして驚いた。「どれくらい食べたい?」と僕が彼に聞くと、彼は「おっきーーーいの」と言って両手を大きく開いて見せた。

お子さまランチというものを僕は親の立場として初めて見た。(僕の記憶違いでなければ)

エビフライ、タルタルソース、ポテトサラダ、フライドポテト、ハンバーグ、デミグラスソースという構成。ああなるほど、確かにこれは子どもが好きなものだ。そして子どもでも食べやすい形状や硬さの食べ物ばかりだ。よく考えられているなぁ。

これを毎日食べていると健康に悪いが、このプレートはスペシャル感があって子どもは大喜びだ。

タケは大きなエビフライを手づかみでむしゃむしゃと食べる。まるで恵方巻のように無言で食べ続けていた。

2歳児の彼は、食事の際に食べると言ったのに食べないとか、食べないと言ったのに食べたり、気持ちのムラが大きい。彼が大人しく食事を食べるためには、僕は「食べるのに手間がちょっとかかるけれど、子どもが好きなもの」を与えるのが一番良い、と考えている。そんな食べ物の難易度設定がとても難しい。

ちょうど今だと、「大きなエビフライ」が彼にとって食事に集中できる、適度な難易度の料理だった。

(2023.05.04)

コメント

コメント一覧 (2件)

  • おかでん殿
    3世代で行かれるお店っていいですよね?
    当家も、特別な晴れの日に連れて行ってもらっていた曾祖父から(自分が生まれる前に亡くなっているので写真しか見たことがない)の割烹があり、自分で4代目として行けるようになった頃、残念ながら閉店してしまいました。
    そう言えば、品川駅前にある「つばめグリル」は週末にもなると親子孫の3世代のお客さんが多く来店すると聞いたことがあります。
    このような代々行けるお店って、自分の幼少期からのいい思い出になるので大切ですね!

  • 軍曹殿>
    曽祖父からひいきの割烹、素敵な話ですね。
    節目節目の定番、というのが個人なりファミリーなりにあるのは、人生において良いことだな、と感じています。
    そういう良さがわかるようになるのは、人生が後半になってからなのかもしれません。

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