人生初のかき氷を食べる

よく調べてみると、夏の間には周辺の町のいたるところで夏祭りや子供向けイベントが開催されていた。

これまで子どもがいなかったから情報に気が付かなかっただけなのか、今住んでいるところの周辺に限ってイベントが多い地域性があるのか、それはよくわからない。何しろ、弊息子タケはコロナベビーだ。そして出産を期に僕らは移住したので、コロナ前の子育て事情と地域事情を全く知らない。

「町会」と呼ばれる組織が主催している小規模なイベントが多い。「町会」とは、いわゆる「町内会」のことだと思われる。でも、町内会とちょっと違うのは、現在の行政上の区割りとは違う名前がついている場合があるということだ。

「◯◯町会主催の夏休みこどもイベントが△△公園であります」と言われても、〇〇町会も△△公園も全然知らなかったりする。地図で調べてみて、「あっ、ここにこんな公園があったのか！」と初めて知ることが多い。地元の土地勘は養われてきつつあるつもりでも、気がついたら移動しやすい主要道路ばかり利用していて路地は走っていない。そんな路地にこそ、まだ見ぬ公園があったりする。

この日は、スイカ割りとどじょう掴み、かき氷とところてんの配布、スイカ割りがあるという子ども向けイベントにタケを連れて行った。

どじょう掴み！？とびっくりしたが、ここだけでなく別の場所でもどじょう掴みをメイン企画に据えているイベントがあった。東京界隈では、生きたどじょうを捕まえるというのが子どもの娯楽として定番なのだろうか？そんな文化があるとは、知らなかった。

それはともかく、この日彼は人生初のかき氷を食べた。

基本的に我が家では彼に甘いものやスナック菓子を与えていない。我が家の方針に従うと、かき氷も彼に食べさせなくても良いのだが、「夏の風物詩」を体験させることは大事だと思ってオッケーにした。

一口食べてみて、彼は目をパチパチと瞬きしたのち、「ほぉぉぉぉぉ」と叫んだ。冷たい氷にびっくりしたらしい。もともと彼は飲食店でお冷を飲むとき、「氷、いらないよ」と言う。冷たいものは好きではないので、このシャリシャリした小さなものが氷だったということに衝撃を受け、口の中の刺激に思わず声が出てしまったようだ。

でも、何か甘い味がするぞ、という予感は味覚で感じ取ったらしい。子どもという生き物は苦みとかエグみにやたらと敏感だが、甘みも同様のようだ。一口目に食べた氷は、シロップ成分少なめの「味がほぼしない、単なる色付きの氷」部分だったはずなのに、彼は頑張って二口目を食べた。

「しゃあああ」と言いながら、次の三口目。

ここで彼はギブアップ。両手の付け根でこめかみをトントン叩いてスプーンを手放した。あ、「アイスクリームやかき氷を食べて頭がキーンときた」という漫画的な光景、すごく久しぶりにみた。

これに懲りてもう当分はかき氷を欲しがらないかもしれない。それも含めて、彼にとって良い体験をしたとおもう。

(2023.07.30)