夏にカブトムシを捕まえるためにクヌギやコナラの木を探していたが、両家の実家周辺を探し回ってようやくコナラの木1本を見つけるにとどまった。

「どんぐりの成る木でしょ?それだったらそこら中にあるはずだ」とたかをくくっていたが、クヌギなんてそう簡単に見つかるもんじゃない、ということを思い知った。そうか、だからカブトムシって貴重なんだな。
しかしある日、家の近所の公園にクヌギが植えられていることを知った。
木にネームプレートを取り付けたいのか、それとも伐採計画を建てているのかは不明だが、公園中の木1本1本に、ガムテープを使っただけの簡易的な名札が取り付けられていたからだ。「えっ、これ、クヌギだったの?」と普段からすぐ脇を通り抜けている木の存在を再認識する。
そうなれば、ちゃんとカブトムシを捕まえたくなってきた。
まぁ・・・正直、都会の公園で、そう簡単にカブトムシが出現するとは思えない。とはいえ、クヌギの木がある以上、親子でカブトムシハントに挑戦しなければ。

数日間、親子でクヌギの木を監視していたのだが、どうもカブトムシがでてきそうな気配がない。それどころか、カナブンすらいる気配がない。
ことしは空梅雨で、全然雨が降っていないせいもあって木はカラカラだ。樹液なんて、どこからもにじみ出ていなかった。
だったら自作しよう、ということで、ネットで調べておとりの餌を作ってみることにした。
なんでも、バナナと焼酎をジップロックで混ぜて、日に当たるところに1日2日寝かせておけば発酵してカブトムシが大好きな匂いになるのだという。
さっそく、作ってみた。
ところで、「発酵する」って気安く言うけど、大丈夫か?何が心配って、アルコールを醸造していることになると、酒税法違反になるからだ。でも、梅酒をホワイトリカーに漬けるのと同じ理屈なのだろう。
ちなみに、ホワイトリカーは度数が20度を越えているので、梅からアルコールが醸造されることはない。しかし、度数が低い清酒で梅を漬けると、発酵してしまい酒税法違反に問われることになる。以前、うっかりNHKが「日本酒で漬けた梅酒」を放送で紹介してしまい、問題になったことがあったのは有名な話だ。

二日ほどバルコニーに置いてみたら、真っ黒なものができあがった。
おかしいな、本当なら「発酵して、ジップロックがパンパンに膨れ上がる」という話だったのに、まったく膨らんでいない。むしろ、なにやら袋から水分が染み出した跡がある。安物のジップロックもどきの袋なので、アルコールに溶けてしまったのかもしれない。
タケがこれを見て、「うんちみたい」と言う。よせ、そんなことを言うのは。
なお、この袋から漏れ出た匂いにつられたのか、カラスがわが家のバルコニーにやってくるようになった。来るだけでもびっくりなのに、毎回フンをされるのには困った。カラス、鳩の比じゃないくらいフンの量が多い。

夕方、クヌギの木にバナナエキスを塗る。
本当は焼酎漬けのバナナをストッキングに入れ、それを木の幹に縛り付けたり枝からぶら下げたりして、カブトムシをおびき寄せるやり方が良いらしい。でも、ここは人通りが多い公園。夕方数時間とはいえ、ストッキングを木に巻き付けていたら、あまりお行儀がよくない。
なので、我々親子はニトリル手袋をはめ、ジップロック内の汁をペタペタとクヌギに塗った。

それから毎日、タケは寝る前に公園の見回りをするようになった。
ヘッドライト、虫かご、虫取り網の装備とともに。
公園内にあるクヌギの木を一つ一つ見て回るが、バナナ汁をつけたところに集まっているのはアリとダンゴムシしかいなかった。ダンゴムシ、お前、木に登ったりもするのか!と初めて知ったが、バナナの匂いに引き寄せられていることにも驚いた。
いずれにせよ、カブトムシはおろか、カナブンも蝶もハチも、何もいやしない。
子どもたちが普段から走り回ってガチガチに踏み固められている地面だし(子どもにとっては、茂みであっても走り回る場所となる)、時折公園管理の人がやってきて木々の剪定、そしてその後ブロワーで盛大に地面に落ちた枯れ葉を吹き飛ばしている。これじゃあ、カブトムシの幼虫が生息するのは難しそうだ。
しかも、カブトムシの天敵はカラスだという。この公園はカラスもいるので、それじゃあやっぱり厳しいかなあ、と思う。

一方、わが家のリビングに鎮座しているカブトムシのメスの蛹。
これまでは、時折動いていたのだけど、最近はすっかり動かなくなってしまった。そろそろ羽化か?と楽しみにして身構えていたのだが、動かないまま時間ばかりが過ぎていき、最近はなにやら臭いもする。残念ながら、羽化失敗でお星さまになってしまったのかもしれない。管理が足りていなかったなら、申し訳ない。
さすが昆虫の王。なかなかわが手中にはやってこない。
もう消化試合の様相を呈してきたが、弊息子の教育の一環として、7月いっぱいまでは時折夜の公園見回りを続けるつもりだ。
(2025.07.08)

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