満腹日本シリーズ(その06)

蕎麦が消える・・・3分33秒のイリュージョン
(2001.10.24/東京ドーム:そば処 葵)

登場人物
師匠:今日は吉野家で牛丼大盛食べておなかいっぱいです。
おかでん:今日も大食いチャレンジで肝臓が痛いです。

おかでん 「どうも。すいませんね、毎日聞き役になってもらって」

師匠 「3日連続だからな、一体いつまで続くのやら」

おかでん 「それは早く失敗してこの企画を終わらせてしまえ、というお告げですか?」

師匠 「いや、そういうワケではないけど。これから順調に事が進んだら、ずっとこの調子で一週間続くのかいな・・・って思うとため息が出る」

おかでん 「チャレンジする側の立場にもなってくださいよ、師匠は聞くだけでいいですけど、こっちは店を検討する、食べる、師匠に報告する、それをwebに掲載するっていう4つの作業をしなくちゃいけないんですから」

師匠 「もともと君の道楽だろうが。被害者ぶった言い方をしちゃいかん」

おかでん 「うう、それはそうなんですけどねぇ」

師匠 「ちょっと昨日までのおさらいしておいた方がいいんじゃないか?」

おかでん 「そうですね、えっと、10月23日(火曜日)、初日の戦績はこういう感じです」

・ホットドッグイン・ホットドッグ9本 (制限12分/完食6分41秒)
・フェスタカフェ・オニオンマヨネーズドッグ (制限12分/完食9分43秒)

師匠 「ホットドッグ18本。一生分食ったって感じだな」

おかでん 「全くです。今まで、ホットドッグなんて年に1本食べるかどうかでしたから。今、僕は27歳ですから今後少なくとも45歳までは食べなくてもイイって感じです」

師匠 「で、これからのスケジュールはどうなってるの?」

おかでん 「昨晩、作成したスケジュール表はこれです」

10月23日深夜時点・今後の行動予定表

[10月23日(火曜)]
(1)ホットドッグイン:ホットドッグ9本(制限時間12分/6分41秒完食)
(2)フェスタカフェ:オニオンマヨネーズドッグ9本(制限時間12分/9分43秒完食)

[10月24日(水曜)]
(3)ビッキーズ:キャッチャーミットハンバーグステーキ(14:00-20:00)

[10月25日(木曜)]
(4)ハンプティーズガーデン:ベストナインプレーヤーズセット(14:00-19:00)

[10月26日(金曜)]
(5)ベースボールカフェ:メジャーリーグセット(14:00-19:00)

[10月27日(土曜)]
(6)和風レストラン花道:特大ジャンボあんみつ(14:00-16:00)
(7)ウィナーズ:パスタ+ピザ各3皿(15:00-17:00)

[10月28日(日曜)]
(8)ミスターパオ:必勝ラーメン3杯(14:00-16:00)
(9)そば処葵:せいろそば9杯(18:00-19:00)

[10月29日(月曜)]
仕事の都合上時間とれず

[10月30日(火曜)]
予備日

[10月31日(水曜)]
仕事の都合上時間とれず

師匠 「お、日程を前倒ししたな?土日でダブルヘッダーにしたんだ」

おかでん 「こっちは社会人。いつ時間が確保できなくなるかわからないですからね。できるだけ早めにクリアするつもりで、時間の余裕を作っておかないと」

師匠 「残り1店舗!ってところで会社の上司から『君今日はちょっと残業してくれたまえ』なんて言われて、結局クリアできなかった、なんて言ったら目も当てられないからな」

おかでん 「ですね。だから、10月30日は予備日にしました」

師匠 「しかし、それだけ1日あたりの負担は大きくなったな。何だ、このスケジュールは。結局、3日も1日2食の日があるんだな。見てるだけで気持ち悪くなるよ」

おかでん 「それが健全ですって。このスケジュール表みて、ヨダレたらして『旨そう』なんて言ってると、ちょっと待てって言わざるをえない」

師匠 「ところで今日は何だい?・・・お、ビッキーズか!前回、『品切れ』という全く予想だにしなかったどんでん返しを食らった店だな」

おかでん 「いえ、違うんです、それは昨日の夜時点で作成したスケジュールですから」

師匠 「へ?挑戦する店を変更したの?」

おかでん 「いや、ビッキーズに行く前にもう一軒お邪魔することにしたんです」

師匠 「ええ!?おい、そりゃビッキーズをナメてるとしか言いようがないぞ、あれ、肉1kgのハンバーグだろ。とてもじゃないがハシゴして2軒目に行くところじゃあないってば」

おかでん 「蕎麦だったら、何とかなるかなって」

師匠 「蕎麦か・・・。うーん」

おかでん 「まあ、ナメてたかナメてないかは後でわかるとして。とりあえず蕎麦屋に行くことにしたんです。こっちとしては、できるだけ早く店舗数を稼ぎたいという気持ち一辺倒でしたから。9種類のチャレンジのうち、一番楽勝そうだった蕎麦屋をついつい選択してしまうというのも仕方がない」

師匠 「うーん、でも、せいろそば1枚あたり16秒ちょっとで食べないといけないんだっけ」

おかでん 「師匠、ここで謝らないといけないことがあります」

師匠 「へ?何だ?」

おかでん 「計算、間違ってました。3分33秒でせいろそば9枚完食ですから、1枚あたりでは23.6秒でした」

師匠 「23.6秒?あれ、そうだったのか。なーーんだ」

おかでん 「『なーんだ』でしょ?いや、確かに23.6秒で1枚食べ続けるってのは相当早いんですよ?そうはいっても。でも、それまでが1枚16秒っていう認識だったから、エラく楽ちんに感じてしまうのはこれ人情なり」

師匠 「安どしちゃったもんだから、ビッキーズに行く前に蕎麦屋に寄ってしまったわけだ」

おかでん 「その通りです。せいろ9枚ですから、量は問題じゃないですしね。時間さえクリアできる自信があれば、もう勝ったも同然」

そば処葵外観

おかでん 「ここがそば処葵です」

師匠 「・・・しかし、おかでん君から『勝ったも同然』というせりふが出るとはね。大食い3回目にして自信がついたな、さては?」

おかでん 「どんどん大食いに染まっていく自分が怖いですけどね・・・」

師匠 「まあな、せいろ9枚で余裕、なんて言葉は一般人は普通口にしないもんなあ。ましてや肉1kgを食べる前菜として、だから呆れる」

おかでん 「まあ、僕の生きざまを見ていてくださいってば。店に入って着席して、『満腹日本シリーズに挑戦したいんですけど』って申告したら、別の席に通されました。店の一番奥にある席です」

師匠 「あ、やっぱり座席指定があるのか」

おかでん 「ホットドッグインと同じですね。店員さんの目が行き届きやすいところに座らせる」

師匠 「こいつ、不正やりそうだって目をつけられたんでは?」

おかでん 「いや、それよりも周りのお客さんの迷惑にならないようにって事でしょうね。店員が一人張り付きますし、完食したら記念撮影があったりして何かと騒がしいですから」

師匠 「そうだよな。それに、3分ちょっとでそば9枚、ってなったらきっと小汚い食べ方になっちゃうわけで、見苦しいもんな。見てるだけで食欲をなくすという」

おかでん 「ぐは。トゲがある言い方だけど、反論できないのが辛い」

葵チャレンジルール

満腹日本シリーズin東京ドームシティ
チャレンジルール

そば処 葵

本日は、「満腹日本シリーズin東京ドームシティ」に挑戦頂きまして、誠にありがとうございます。

チャレンジに先立ちまして、下記の事項をご確認いただきますようお願い申し上げます。

◆基本ルール
このイベントは、野球にちなんだチャレンジメニューを制限時間内にお召し上がりいただくものです。制限時間内に「完食」された場合は、料金が無料になりますが、完食できなかった場合は、規定の料金をいただきます。また、期間内に同イベントの全メニューを完食された方には、「東京ドームシティランチ1年間無料パス」を進呈いたします。(東京ドームシティランチ1年間無料パスの主な概要につきましては巻末をご参照ください。)

◆完食の条件
せいろそば9枚を、全て食べつくしていただくことが完食の条件となります。

※最後の一口につきましては、口の中に入った段階で完食とみなします。
※最終的な認定は、店舗責任者が行います。

◆注意事項
・一度挑戦に成功したメニューに、再度挑戦することはできません。
・制限時間内は、挑戦者本人以外はメニューに触れることはできません。
・「お冷や」は店舗で用意しますが、その他ドリンク類の持ち込みはご遠慮ください。(もちろん、店内での御購入は可能です。)

なお、チャレンジに成功した場合、記念写真を撮影させていただき、店頭に飾らせていただきます。ご協力の程、よろしくお願いいたします。

<ランチ無料パスの主な概要>
・2001年11月1日(木)-2002年10月31日(木)の1年間有効。(ただし、土、日、祝日を除く)※ランチタイム(11-14時)のみ有効
・ランチメニュー等、対象商品は限らせていただきます。

以上

おかでん 「恒例のルール説明です。今回はせいろそば9枚を3分33秒で完食することが要求されます」

師匠 「なんか、イベント前の国家斉唱みたいなものだな」

おかでん 「そんなものです。挑戦者は、チャレンジメニューができあがるまでの間この資料をぼんやりと眺めて待つ事になります」

9枚のせいろそば

師匠 「どわっ。これがチャレンジメニューか!」

おかでん 「そんなに驚くことはないですって。僕は、このそばが来たときに『あ、量が少ないぞ』って安心したくらいです」

師匠 「量が少ない?そうとも見えないけど・・・そうか?」

おかでん 「せいろそばといっても、店によっては全然量が違うじゃないですか。居酒屋における『生ビール中ジョッキ』の比じゃないくらい、ばらつきがある。でも、この店の場合一般的な蕎麦屋の平均程度かそれよりちょっと少ないかってくらいです」

師匠 「まあ、蕎麦喰い人種を自称するおかでん君が言うならそうなんだろうけど・・・感覚、麻痺してないか?9枚だぞ、これ」

おかでん 「壮観ですよね、せいろが縦に5枚積み上げられると、ちょうど目の前にお蕎麦接近中、危険回避せよって位置にくるんです。こんな目前に蕎麦が迫ってくるってなかなか無い経験だなあって」

師匠 「のんきなもんだ。で、作戦は何かあったのかい?」

おかでん 「本当はゆっくりと味わって食べたいんですけど、時間制約が厳しいので今回は味わうのはやめにしました」

師匠 「当たり前すぎる作戦だな、それは言うまでも無いことだろう」

おかでん 「いや、いや。ですから、そばを手繰って、めんつゆにちょびっとつけて、ずるずるずるッとすすって口中に広がる蕎麦の香りが絶品、っていう一連の動作はしないって事です。要するに、せいろからそのままそばをすする、すする、すする。口の中がモガモガしてきたら、つゆをちょっと飲む」

師匠 「ダイレクトに食べるということか。まあ理にかなってると言えるな」

おかでん 「チャレンジ開始です。食べやすいように、せいろを3枚ずつ縦に並べて食べ始めました。3分33秒という短い時間ですから、次のせいろに移る時の時間も節約しないといけない」

師匠 「QCサークルみたいだな、現状分析と改善」

おかでん 「たとえがオッサン臭いですよ」

師匠 「ほっとけ」

おかでん 「食べ始めて、一つうれしいことと一つ困ったことがありました。うれしいことは、麺のコシがしっかりしていて、食べやすいことです」

師匠 「え、逆に噛まないといけなくなって食べにくいんでは?」

おかでん 「蕎麦みたいに細い食べ物だったら、よっぽど堅くない限りは関係ないですよ。コシがあるということは、箸でつまみやすくなるんです」

師匠 「あー。立ち食い蕎麦屋でざるそば注文したら、時々半分溶けたような奴が出てくることがあるからなあ。あれは食べにくい。箸でつまもうとすると麺が潰れる」

おかでん 「そうなんですよ。ゆでおきの麺を使われるとかなわんなあ、って思ってたんですけど、この店はきっちりとゆでたてでした。感謝」

師匠 「で、もう一つの困った事って何だ?」

おかでん 「どこまで食べ切れればいいの?って事です」

師匠 「わかんない事言うね、君も。ルールに書いてあったじゃない、『全て食べ尽くすこと』って」

おかでん 「いや、そうなんですけどね。そばの場合、大抵ハンパな奴がせいろの間に挟まって残るじゃないですか。あれも食べないと失格なのかな、って」

師匠 「あー。なるほどねえ」

おかでん 「後でこういう些細なところで揉めてもイヤなんで、せいろを1枚食べ終わりそうになったら、次のせいろに残った麺を移すって事をやりました」

師匠 「心配性だなあ、でもそれで正解」

おかでん 「そんな事を何度か繰り返すうちに、気が付いたら9枚食べきってしまいました」

師匠 「早っ。もう結論か」

おかでん 「ええ、何しろ制限時間短いですから。語ることもあんまりないんです」

師匠 「完食タイムは?」

2分56秒で完食

おかでん 「2分56秒。リミットから37秒残してクリアです」

師匠 「ああ、早いといえば早いけど、結構ギリギリではあったな」

おかでん 「1枚あたり19.6秒でしたね。やっぱり、1枚16秒ってのはどう考えても無理です」

師匠 「え?1枚19.6秒か。早い・・・」

おかでん 「でも、店の人いわくジャイアント白田氏は2分弱で食べたっていう事です」

師匠 「2分弱ぅ?さすがチャンピオンは凄い・・・」

おかでん 「1枚あたり13秒ちょっと。どうすれば食べられるのやら」

師匠 「人間業じゃないな」

おかでん 「ジャイアント白田氏はどうやって食べたんですか?って聞いてみたら、僕と同じ食べ方だったらしいです。どうやら、エンジン回転数が僕と白田氏とでは一回り違ってた、と」

師匠 「なるほどねえ。でも、他に食べ方って無いでしょ。シンプルな蕎麦なんだから」

おかでん 「いや、それがいるらしいんですよ。チャレンジ開始前に、せいろの上からめんつゆをどばーっとかけた輩とか」

師匠 「え?せいろの上から?だって、せいろって下が抜けてるでしょ。つゆは?」

おかでん 「トレイまでだぼだぼと垂れる。ご想像の通りで」

師匠 「きったねぇなあ。ぶっかけそばにして食べれば食べやすいってのはわかるけどさ、あんまり上品じゃないぞ」

おかでん 「短期決戦を仕掛けてくる店の方が悪い、といえばそれまでなんですけどね・・・」

師匠 「そうだね、店としてどうなんだろう。せっかくの蕎麦をこうやって食い散らかされている現状について」

おかでん 「店の人いわく、時間切れになった挑戦者も、ウチの蕎麦は気に入ってくれて『ゆっくり食べられるので逆によかったです』なんて言ってくれるんですよぉ、って」

師匠 「おかでん君はどうだったの?蕎麦の味は」

おかでん 「うーん。風味はありましたよ。単なるそば粉入り小麦粉麺ではないです。その点では合格点」

師匠 「何だい、その評価は。それじゃ、うまかったのかどうかわからないよ」

おかでん 「行楽地にある蕎麦屋としてはイイと思うです。そりゃ、上を見ればキリが無いですけど」

おかでん 「記念撮影があったり、店長と四方山話したりしてわあわあやった後、店から出ました」

師匠 「うん」

おかでん 「店を出ようと店内を歩いていたら、やたらと体のがっしりした色黒の人が『大食いした奴ってどんなヤツだ』ってこっちを見てるんです。誰かと思ったら、全日本プロレスの川田利明選手で」

師匠 「あらー。プロレスラーが居たんだ」

おかでん 「後楽園ホールでの試合前だったんですかね。有名人に見られているとわかった瞬間、急に恥ずかしくなって早足で店から逃げ出してしまいました」

師匠 「せっかくプロレスラーになる登龍門だったのに。惜しいことしたな」

おかでん 「大食いだったらレスラーになれるわけじゃないですって」

完食写真(その3)

【完食のヒント】
ヒントも何も、がむしゃらに食べるしかない。量は多くないので、いかに効率よく口の中にそばを投入できるか。そういう点では、箸使いが下手な人はまず完食は無理だろう。
本文中でも書いたが、麺をせいろから直接食べて、口が渇いたらつゆを一口飲む、というやり方が一番早い。
あと、早食いをするときは必ず猫背になって、通称「犬食い」と言われる食べ方をすると良い。口と食物の距離が開くだけ、時間の無駄となるから。

通算3軒目制覇【10月24日(水曜)】-期限まで残り7日そば処 葵
せいろそば 9杯
[通算3店舗目/残り店舗数:6]制限時間3分33秒/2分56秒完食
苦労度 ★☆☆☆☆

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