満腹日本シリーズ(その09)

オレ的メジャーリーグへの挑戦
(2001.10.26/東京ドーム:ベースボールカフェ)

登場人物
師匠:バターしょうゆご飯は邪道ですかと聞かれたら、敢えて邪道だと涙を飲んで答えたい。
おかでん:納豆をかき混ぜるのが面倒です。すでに糸ひきまくった奴売ってませんか?

おかでん 「ばうー」

師匠 「わっ、いきなり何だ?」

おかでん 「顔が思いっきりむくんだ」

師匠 「え?顔?」

おかでん 「ラーメンの汁の祟りじゃー」

師匠 「もとからむくんでるじゃない?ビールで」

おかでん 「馬鹿言っちゃいけません、ビールとラーメンの汁は別物です。何なんでしょう、この顔の重さ」

師匠 「いや、何なんでしょう?って聞かれても知らないよ」

おかでん 「おかげで今日は顔が重くって、肩が凝りました。気を許すと頭が前に倒れるので、踏ん張らないといけない」

師匠 「一生頭下げ続けてたら?優秀な営業マンになれるぞ」

おかでん 「そんな卑屈な営業やりたくないっす」

師匠 「今回で6軒目になるわけだけど、どうだい?後半戦突入の気分は」

おかでん 「ビッキーズの肉1kgハンバーグでもう精魂使い果たしました。昨日、ラーメン3杯を完食して、ようやく中間地点通過ということに気づいたらウンザリしてしまいましたよ」

師匠 「タダ飯食べてて、ウンザリしちゃ失礼だよ。ご馳走様と言うならまだしもだ、ウンザリたぁ救われないや」

おかでん 「まあ、確かにそれはそうですけどね。夕飯代いらない、おなかいっぱいでお酒もいらないので、財布の現金が減らない減らない」

師匠 「良かったじゃないか。大食いしながら貯金だ」

おかでん 「え、貯金?・・・ああ、なるほど、考えてなかったなあ」

師匠 「こら、ちゃんと貯金しなくちゃ」

おかでん 「大食いと一緒で、いくらお金があっても食い尽くしてしまうんですよ、僕は」

師匠 「胸を張って言うなよ、そんなことで」

師匠 「ここまでのおさらいをしておこうか」

おかでん 「はい、こんな感じで現在侵攻中です」

満腹日本シリーズ挑戦状況と今後の予定(2001年10月25日終了時点)

[10月22日(月曜)]
不戦敗

[10月23日(火曜)]
(1)ホットドッグイン:ホットドッグ9本(制限時間12分/6分41秒完食)
(2)フェスタカフェ:オニオンマヨネーズドッグ9本(制限時間12分/9分43秒完食)

[10月24日(水曜)]
(3)そば処葵:せいろそば9杯(制限時間3分33秒/2分56秒完食)
(4)ビッキーズ:キャッチャーミットハンバーグステーキ(制限時間18分/17分36秒完食)

[10月25日(木曜)]
(5)ミスターパオ:必勝ラーメン3杯(制限時間15分/5分58秒完食)

[10月26日(金曜)]
ベースボールカフェ:メジャーリーグセット(14:00-19:00)

[10月27日(土曜)]
和風レストラン花道:特大ジャンボあんみつ(14:00-16:00)
ウィナーズ:パスタ+ピザ各3皿(15:00-17:00)

[10月28日(日曜)]
ハンプティーズガーデン:ベストナインプレーヤーズセット(14:00-19:00)

[10月29日(月曜)]
予備日

[10月30日(火曜)]
予備日

[10月31日(水曜)]
仕事の都合上挑戦不可

師匠 「で?こういう予定だったけど、やっぱり直前でスケジュール変わりましたって言うんだろ、いつものように」

おかでん 「いやー、予定通りに行くことにしました」

師匠 「お、珍しいな」

おかでん 「残り店舗数が少なくなってきましたからね、選択の余地が少なくなるんですよ」

師匠 「じゃ、今までみたいに小一時間悩みつづける必要もないわけか」

おかでん 「そういうことです。雑念が入らずにターゲットを決められますからね、こちらとしてはチャレンジに集中できて良いです」

師匠 「徐々にクライマックスに近づいてきた、って感じだな」

おかでん 「そうですね、でも、アワレみ隊OnTheWebの企画としては、クライマックス=思いっきり墓穴を掘る、って方が様になってるんですけど」

師匠 「読者心理をわかってるじゃないか。だったら、パンを喉に詰まらせて窒息するとか、むせた瞬間にラーメンが鼻から飛び出して、果たしてこの麺も食べなくては完食とみなされないのだろうかと悩んでみたりしたらどうだい」

おかでん 「すごく面白いです。そういう失敗談、僕も読みたいです。でも、僕自身がそんな目に遭うのだけは絶っっっっっっっ対にイヤですからね」

師匠 「そうか、残念」

師匠 「ところで、あやまって床にひっくり返してしまった料理ってのは、やっぱりチャレンジメニューである以上食べないといけないんだろうか?」

おかでん 「あ、どうなんですかね?ルールには一切そんなことは書かれていなかったですね。僕は、蕎麦屋の時は机にこぼれた麺、全部拾い上げて食べましたけど」

師匠 「机の上ならまだいいさ。たとえば、ハンバーグを床に落としたらどうだろう。『汚いので食べなくてもいいですよ』とはならないのではないかな」

おかでん 「では、卑屈な気分になりながら無理やり床に這いつくばって落とした料理を食べるか、それとも落とした時点で『もう食べられません』ってリタイアしてしまうしかないと」

師匠 「そういうことだろうね。ラーメンなんて、汁をこぼしてしまったらその時点で反則失格」

おかでん 「場外カウント20までは反則にならないっていうワケじゃないですもんね。覆水盆に帰らず」

師匠 「おかでん君、食べるのが早いのはいいけど、くれぐれも食べ物をこぼすなよ?その時点で全てが台無しになるんだから」

おかでん 「がってん」

おかでん 「さて、今日お邪魔したのはベースボールカフェ。これで通算6軒目のチャレンジとなります」

師匠 「お、大本命をこの日に持ってきたか。一番難易度が高いんじゃないかと目されていたのに」

おかでん 「肉、食べたかったんですよ。ただそれだけです。ハンプティーズガーデンでハンバーガーという選択肢もあったんですが、とりあえず肉食わせろと。金曜日夜ということもあって、一週間の仕事疲れがどっとでたのかもしれません。肉」

師匠 「肉肉うるさいよ。貧乏人じゃないんだから」

おかでん 「ははは、師匠その発想は古い。貧乏人は肉を食う。お金持ちは野菜や魚を食う。これ現代日本の常識」

師匠 「うーん、確かに牛丼280円とか、今肉は安いからなあ」

おかでん 「ああ、そんなに無念そうな顔しないでくださいよ、見ているこっちがアワレになる」

師匠 「だってよ、聞いてくれよ。私ぁ昔、たまーにステーキなんて食べられた時はうれしくってうれしくって。食べるのがもったいないものだから、肉を縦に切るだけでは飽き足らず横にも切ってたよ。しまいには10円玉くらいのサイズにまで切り刻んでだ、その一つ一つの肉汁を吸いながら・・・」

おかでん 「もうわかりました、その辺でやめにしておきましょうよ」

師匠 「ああ、そうかい。まあ、そんなわけだよ。それをだ、君は大食いにまかせてステーキを丸のみしようってか。タダ飯にしようってか。ちょっとそれは羨ましすぎるではないか」

おかでん 「あ、結局『羨ましい』って事を言いたいだけなのね。自分の暗い過去を暴いてまで、羨ましさをPRしなくてもいいのに」

師匠 「私の世代だと、肉を語らせると長いよ?すき焼きに鶏肉が入っていたとか」

おかでん 「はいはい、そこら辺の話はまた今度」

師匠 「おや、おかでん君に仕切られちゃったよ。初めてだな」

おかでん 「とりあえず、今日のチャレンジ対象の確認をしておきましょう」

■メニュー:メジャーリーグセット(ベーブルースステーキ、ライスコロッケ、ガーリックトースト、ビッググローブサンドイッチ)
■価格:5,151円
■制限時間:16分51秒
■難易度:☆☆☆☆☆

師匠 「ついに出たな最高難度5!」

おかでん 「東京ドームシティが一番自信をもってお勧めしたいチャレンジメニューのようですね。『満腹日本シリーズ』の紹介記事でも、先頭に書かれていますし」

師匠 「何せ、ネーミングで圧倒させられるよな、『ベーブルースステーキ』とか『ビッググローブサンドイッチ』とか」

おかでん 「まあ、名前でいえば、僕はすでに『ビッググローブハンバーグ』なるものを完食していますからね。これくらいで怖気つくことはないです」

師匠 「なーに言ってるの。そのハンバーグに殺されそうになったくせに」

おかでん 「ぐは。まあ、それはそうなんですけど・・・。ま、一度地獄を見た人間は強いってところを見せなくては。ベーブルースがでっかいホームランをぶっ放しても、ビッググローブで見事キャッチでアウトにしてやりますって。メジャーリーグったって、今じゃ日本人が活躍してるんですから」

師匠 「えらく強気だね」

おかでん 「ただ一つ、気になることがあるんです。パンが・・・」

師匠 「ああ、そういえばメニューの中にパンが二つもあるね、これはまたもや顎の鍛錬だ」

おかでん 「しかも、ガーリックトーストがフランスパンですからね、これはホットドッグの比じゃないですよ!?」

師匠 「噛むだけでうんざりだな」

おかでん 「既に完食しているホットドッグを普通のピッチングとすると、フランスパンは大リーグ養成ギブスを装着してからのピッチングですよ。一気に顎を疲弊させてしまう」

師匠 「まあ、チャレンジメニューの名前が『メジャーリーグセット』だもんな。実力無きものはマイナーリーグで修行してなさいってこった」

ベースボールカフェ外観

師匠 「雑談が長くなりすぎた。いつまで続けるつもりだ」

おかでん 「あ、そうですね、じゃ早速皆様をお店の中に誘いましょう」

師匠 「回を重ねるうちにどんどん店に入るまでの与太話が長くなっているような・・・」

おかでん 「ま、それはそれで。さて、ここがベースボールカフェです」

師匠 「プールバーみたいな外見だな」

おかでん 「この店、客席数が296もある超巨大店なんです」

師匠 「なんだ?学食か何かか?」

おかでん 「んなわけないでしょう」

師匠 「じゃ、温泉グルメツアーの団体客ご一行様の昼食会場か?」

おかでん 「違いますって。でも、確かに隣には土産物屋があるのであながち間違ったシチュエーションではないんですけど」

師匠 「それにしても予想外だったな、東京ドームの敷地内にこんなデカい店があったなんて。でも、採算取れるのか?」

おかでん 「お店の懐具合まではわかりませんが、僕が見ている前で次から次へとお客さんが入っていくんです」

師匠 「え、そうなの?東京ドームでプロ野球が開催されていないにもかかわらず?」

おかでん 「そうなんですよ。これには焦りましたね。ひょっとしたら『チャレンジメニュー、品切れ!』だったらたまりませんし、ひょっとすると『客席いっぱいでチャレンジできません』って事になるんじゃないかと」

師匠 「心配性だね、296席あれば問題ないだろうが」

おかでん 「でも、そんな不安になるくらい5名、6名とまとまった数の団体客が吸い込まれていくんです。これはいかんと僕も慌てて入店しました」

師匠 「で、どうだったの?」

おかでん 「驚きました」

師匠 「本当に客がいっぱいいて?」

おかでん 「いや、黒人の女性店員にお出迎えされたんで。しかも、悪魔の格好をしている」

師匠 「はあ?何だその展開は?店、間違えたのか?」

おかでん 「一瞬、それを疑いましたよ。でも、1名様デスカ?なんて聞いてくるので、ああこの店で間違っていないのだなと」

師匠 「でも、食事している人の姿が見えるんだろ?そんなに不安がることはないじゃないか。小心者だな」

おかでん 「いや、店に入ったら周りが薄暗い、細い長い廊下になっているんです。その奥にコスプレした店員がいて、しかも全員がガイジンさんときたもんだ。飲食スペースはそこからは伺うことができない構造になっていますんで、不安にならずにはいられないって」

師匠 「怪しい店だな。ベースボールカフェというネーミングとは似つかわしくないけど」

おかでん 「後で考えると、ちょうどハロウィンを記念して店員のみなさん、仮装してたらしいですね。でも、こっちは全然そんなこと知らないもんだから、最初からビビりまくり。しかもですよ、その黒人のお姉さんに『満腹日本シリーズ挑戦させてください』って言ったら、『ハァ?何デスカ、モイチドオ願イ』なんて言われるんですから」

師匠 「ははは、おかでん君の苦手とするシチュエーションだな」

おかでん 「まあ、結局日本人の店員さんが奥から引っ張り出されて、ようやく話が通じたんですけどね。で、黒人のお姉さん、事情が飲み込めたらしく僕を指差して『チャレンジャー?』って聞くんです、アンビリーバボーって感じで。もちろん、僕は自身たっぷりに『イエース』と答えてやったら、思いっきりびっくりして肩をすくめてましたよ。『スゴイネー』だって。」

師匠 「また一人馬鹿が来た、って思ったのかも」

おかでん 「ほっといてください」

チャレンジシートと書かれた目立つ札が掲げられた机

おかでん 「そのお姉さんに連れられて通された席が、窓側の席でした」

師匠 「わわ、高々と聳え立つ標識」

おかでん 「そのまんま、満腹日本シリーズチャレンジシート、ですからねえ。どうだ、お前らって感じです。俺の食い様を見ろ、と。でも、特等席でVIP待遇されている・・・っていうよりも、何か晒し者にされてるって感じはしましたけど」

師匠 「窓際だったら、外からもよく見えるわけだし。これだけ大きい標識が立ってれば、店内でも目立つな」

おかでん 「まったくです。このお店は大道芸人が店内を巡回していたり、店員がコスプレしたりと遊び心いっぱいなんですよね。だから、大食いチャレンジャーもアトラクションの一つとして見世物にされてしまったのかもしれません」

師匠 「おかでん君、本望じゃないか。よかったな」

おかでん 「落ち着かないですよー。衆人監視だと緊張して胃袋が縮みますって。ただでさえ最難関のメニューなのに」

師匠 「周りにお客さんはどれだけいたの?」

おかでん 「そこそこいましたよ、隣のテーブルでは、4人組の若い女性が食事していましたし。ああ、できることならばチャレンジシートの標識を隠してしまいたい!」

師匠 「切ないねえ。そりゃ男たるもの見栄を張りたいよなあ。これから大食いをしまーす、って大々的にPRしつつ、料理が出て来るのをボーッと待っている姿ってのはあんまりカッコいいもんじゃあない」

おかでん 「しばらくしたら、店員さんがやってきて、ルールの説明をしてくれました。恒例の奴です」

ベースボールカフェチャレンジルール

満腹日本シリーズin東京ドームシティ
チャレンジルール

ベースボールカフェ

本日は、「満腹日本シリーズin東京ドームシティ」に挑戦頂きまして、誠にありがとうございます。

チャレンジに先立ちまして、下記の事項をご確認いただきますようお願い申し上げます。

◆基本ルール
このイベントは、野球にちなんだチャレンジメニューを制限時間内にお召し上がりいただくものです。制限時間内に「完食」された場合は、料金が無料になりますが、完食できなかった場合は、規定の料金をいただきます。また、期間内に同イベントの全メニューを完食された方には、「東京ドームシティランチ1年間無料パス」を進呈いたします。(東京ドームシティランチ1年間無料パスの主な概要につきましては巻末をご参照ください。)

◆完食の条件
フライドポテトや付け合わせの野菜まで、全ての品物をあとかたもなく食べきっていただくことが完食の条件となります。

※最後の一口につきましては、口の中に入った段階で完食とみなします。
※最終的な認定は、店舗責任者が行います。

◆注意事項
・一度挑戦に成功したメニューに、再度挑戦することはできません。
・制限時間内は、挑戦者本人以外はメニューに触れることはできません。
・「お冷や」は店舗で用意しますが、その他ドリンク類の持ち込みはご遠慮ください。(もちろん、店内での御購入は可能です。)

なお、チャレンジに成功した場合、記念写真を撮影させていただき、店頭に飾らせていただきます。ご協力の程、よろしくお願いいたします。

<ランチ無料パスの主な概要>
・2001年11月1日(木)-2002年10月31日(木)の1年間有効。(ただし、土、日、祝日を除く)※ランチタイム(11-14時)のみ有効
・ランチメニュー等、対象商品は限らせていただきます。

以上

師匠 「おい、『あとかたもなく食べきっていただく』っていう書き方、他のお店であったかい?」

おかでん 「この店ではじめてみました。他のお店だったら、『全て食べ尽くしていただく』という表現です。ちょっと怖いですよね、跡形も無く、って。皿ごと食えという事を言いたいのか、と」

師匠 「そういえば、『全ての食べ物をあとかたもなく』ではなくって、『全ての品物をあとかたもなく』ってなってるなあ。やっぱり、皿やフォークも食べないと駄目なんじゃないか?」

おかでん 「そうなると、大食いの範疇じゃないですってば。びっくり人間です」

師匠 「まあ、大食いってのもびっくり人間の一種だと思うけど、さ」

おかでん 「まあ、そんな冗談はともかく、僕の机の上にはさっきの黒人のお姉さんが持ってきた突き出しのポップコーンが置いてあるんです。ひょっとしてこれも食べろというのか、って確認してみました」

師匠 「あ、それはチャレンジメニューの中に入ってない食材だな」

おかでん 「店員さん、指摘されて慌てて『あれっ、すいません、何でこんなところにポップコーンがあるんだろうな?ごめんなさい、これはチャレンジメニューではないです』ってそそくさとひっこめられてしまいました。食べたかったのに・・・」

師匠 「店側としてはこれ以上店のものを食い散らかされてはかなわん、と慌てたわけだな。でも、ポップコーンぐらいいつでも食べられるでしょ。大食いに専念しなさいってば」

おかでん 「その後、店員さんといろいろルールの確認をやったのですが、このお店は失敗したときの料金についてもご丁寧に説明してくれましたよ。『もし万が一失敗となった場合は、5,151円に加えて消費税5%とサービス料10%を頂くことになりますがよろしいですか?』って」

師匠 「よっぽどおかでん君が貧乏そうで食い逃げしそうに見えたのかね。それにしてもサービス料10%取るのか!高いなあ。失敗すると、ほぼ6,000円の出費ってわけだ」

おかでん 「いざ失敗して料金支払い、ってなったときにカネが無いってのは店からするとマズいので、事前に値段の周知をしてるんでしょうね。まあ、僕にはどっちみち関係無い話ですけど」

師匠 「はは、食べきってしまえばお金は払わないで済むわけだからな」

おかでん 「そんなこんなで、しばらく待つこと20分。何やら遠くからでっかいお盆を持った店員がこちらに来るのが見えました。これが目立つ目立つ。なにしろ、客席を通り過ぎるそばから、お客がみんな振り向いているんですから。」

師匠 「して、その正体は・・・」

おかでん 「案の定、こっちにお盆接近中。危険、危険、回避せよ超巨大物体未確認物体接近中、衝突注意・・・どかーん」

これぞメジャーリーグ級のメニュー。一人前ですよ、当然。

師匠 「うわ・・・(絶句)」

おかでん 「笑っちゃいました。大笑いしちゃいました。普通、チャレンジメニューが到着したら、緊張で顔が強ばるものなんです。でも、このメニューだけは違った。もう、笑うしかない」

師匠 「でかすぎるよ!なんだぁ?このパンは。本当にビッググローブじゃないか」

おかでん 「メジャーリーグですからね、日本みたいに奥ゆかしくないんです。容赦ない直球勝負。力と力のガチンコ対決ですよ、まさしく!パンチョ伊藤なんて目じゃないぞ、そのヅラ早くとれコノヤロー!バレてんだぞ、って感じです。ちなみに、さっきから肉、肉って言ってたステーキなんですけど」

師匠 「ああ、奥にそれらしいものが見えるな。小っちゃ!」

おかでん 「冗談じゃないです、あのステーキ、実は230gあるんですよ?」

師匠 「え、230g?普通のステーキが150g程度だから、相当デカイ部類に入る・・・のに、何でこんなに小さく見えてしまうんだ?遠近法か?」

おかでん 「でしょ、もの凄く小さく見える。結局、手前のパンがデカすぎなんですよ。こいつのおかげで全体の時空がゆがんでしまってます。一歩間違えば四次元への扉が開いちゃいそうなくらい」

師匠 「・・・駄目だ、全て規格外のサイズで、写真からでは実物が想像できぬ」

おかでん 「ガーリックトーストなんて、フランスパン1/2そのものずばり、って状態ですし。さすが日本とはスケールが違う。なんて言やいいのかな・・・こん棒?」

おかでん 「チャレンジ開始です」

師匠 「制限時間16分51秒だっけ。時間よりも、胃袋が問題だな」

おかでん 「とにかく、パンは先にやっつけないと。見てください、この凶悪そうなガーリックトースト。こんな奴、一番最後に食えって言われたら僕は泣きますよ」

師匠 「ホットドッグ程度で顎が痛くなるくらいだからな、フランスパンだったら想像を絶するな」

おかでん 「ということで、まずはこのガーリックトーストから。食べやすいようにハモの骨切りみたいに切れ目が入っていたのをいいことに、千切っては食べ千切っては食べ」

師匠 「あ、親切だな。てっきりホットドッグのように丸かじりしないといけないのかと思った」

おかでん 「それだったら、難易度が一気に上がるでしょうね。僕は、この切れ目を有効活用させてもらって、チャレンジ開始から1分でガーリックトーストを完食」

師匠 「え、1分?また早いなあ。味わってる暇もない」

おかでん 「味ですか?単なるフランスパン、以上報告おわり」

師匠 「おい待て、『ガーリックトースト』だったんだろ?」

おかでん 「何せ、溶かしガーリックバターはポットの底にたまっていて、パンには一滴たりともかかっていないんですよ。食べる直前にお好みの量を匙ですくいなさい、って事なんでしょうが、こっちはそんな暇なんてありゃしない。結局、チャレンジメニューとして用意された『ガーリックトースト』は一口も食べられず、メニュー外の『単なるフランスパン』を食べてしまったという」

師匠 「ルール違反じゃないのか?」

おかでん 「知りませんよ、そんなの。ま、ともかく次はライスコロッケです」

師匠 「油ものを先にやっつけるという訳だな。ビッキーズの時と一緒か。肉は最後」

おかでん 「そうです。ビッキーズの時は『うまい!もっとゆっくり食べたかった!』って残念だったライスコロッケにまたここで出会えるとは思いませんでしたね。今度こそおいしく頂いて、それでも1分ちょっとでクリア」

師匠 「絶好調だな」

おかでん 「どっちにせよ、ゆっくり味わう事はできないのは運命ってやつです。もう慣れましたけどね。さ、駆け足で行きますよ?次は、同じ揚げ物のポテトかと思いきや、ビッググローブサンドイッチへと展開」

師匠 「大本命だな。しかし、このデカさったらないな。小さい座布団みたいじゃないか。こんなにデカいサンドイッチは見たことがないよ」

おかでん 「少なくとも、何品かある料理のうちの一品、という位置づけで出てくる代物じゃあないですよね。これだけで完結しちゃいますから。手に持つとずっしり重いし、厚みは5センチ近くあるし、サイズはA4を一回り小さくしたくらいあるし。かぶりついている様は、きっと法螺貝を吹いている人みたいに見えたでしょうね」

師匠 「中身は何が入っているの?」

おかでん 「えっと、主成分はタマネギの輪切りです。あとは、サニーレタスとハムって感じですか」

師匠 「うーん、うまいのかまずいのか想像つかないな」

おかでん 「あ、おいしかったですよ。特に、パンは良かったです。柔らかくてもっちりしてて、しかしフヌケな感じではないですし、さっくりしてるし」

師匠 「でもよ、これ、いくら早食い野郎でもそう簡単にクリアできない大きさだな」

おかでん 「ほとほと参りました。パンをかみ切ろうとすると、玉ねぎの輪切りがかみ切れずにずるずるって引っ張り出されてくるんです。やるな、繊維質、コノヤロとかいって最初は特に気にしていなかったんですが、食べ進むウチに玉ねぎ漏出阻止で結構疲れちゃって」

師匠 「何せ、量がハンパじゃないからねえ。しかも、たった1個の巨大サンドイッチだから、一区切りつけるタイミングがない」

おかでん 「そう!そうなんです、師匠今いいこと言った。もう、うんざりですよこれは。ホットドッグみたいに小さいパンだったら、1個食べ終わると『よし、1個食べたぞ』という一段落ができます。気分もちょっとリフレッシュできる。しかし、こんな馬鹿でかパンだったら、息抜きするタイミングが無いままひたすらかぶりつく羽目になる。だんだん憂鬱になるんですね、これは」

師匠 「味も単調だからな、飽きてくるだろうし」

おかでん 「そうなんですよね。食べても食べても、いっこうに見た目が変わらない巨大なサンドイッチにうんざりげっそり。食べきれるんだろうかという恐怖をスパイスとしながらも、ひたすら地平線まで続く単調な味にはもう勘弁、って感じです」

師匠 「恐るべしだな」

おかでん 「しかも、食べているうちにどんどん胃が重くなってくるのがわかるんです。それを体で感じていると、ああパンだけでこんなに胃が重いけど大丈夫かオレは、と」

師匠 「自分自身信用できなくなってくるわけだな。疑心暗鬼か」

おかでん 「あまりに終わりのない状態だったんで、ちょっと精神がぐらついてしまいましたね。しっかりしろ、目をそらしたら死ぬぞと自分自身に言い聞かせながら、なんとか5分程度で食べきりました」

師匠 「あれ、ということはこの時点ですでに7分以上経過しているな。途中経過の写真は?」

おかでん 「撮り忘れました」

師匠 「あらら。めずらしい・・・」

おかでん 「本当にガムシャラだったんですね。写真を撮るということがごっそり抜け落ちてました。パンで両手がずっとふさがっていた、というのも原因の一つかもしれないです」

師匠 「ま、でも今のところ順調なわけでおめでとうございます」

おかでん 「ありがとうございます。でも、この時点でもう相当胃がふくれあがってるのが実感できました。これが満腹感として脳に認識されるまであと数分。ビッキーズの二の舞はもうイヤだ、あんな辛い思いは二度としたくない・・・っていう一心で、狂ったようにポテトを食べまくりました」

師匠 「さてはポテトを鷲掴みにしたか」

おかでん 「さすがにそんな事はしなかったですよ、フォークで突き刺して食べました。でも、焦りまくっていたので、もの凄い勢いでポテトを串刺しにしてましたね。端から見ると、殺人鬼がめった刺し殺人をやっているように見えたに違いありません」

師匠 「ごめん、殺人鬼を見たこと無いんで、その例えはよくわからん」

おかでん 「ぐは」

師匠 「それで?ポテトごときでへばるおかでん君じゃないからな、どうせこれもあっけなく食べ切ったんだろう。残るは一皿だな」

おかでん 「そうですね、残る一皿は、ステーキ230g、バターライス、温野菜が控えています。まずは、バターライスをやっつけました。焦っていたので、フォークで食べるのにはちょっと手間取りましたね」

師匠 「何でそんなに焦ってるの?今まで5店舗を食い歩いてきたおかでん君とは思えないんだけど・・・」

おかでん 「満腹感への恐怖ですね。ホント、恐怖って言葉がぴったりです。ビッキーズでその恐怖の極限を見てしまってから、ああいう目には二度と逢いたくない遭いたくないってびくびくするようになったんです」

師匠 「で、その恐怖から逃げるためには、脳が満腹感を覚える前に食べきってしまうという事か」

おかでん 「そうです、大食いそのものからは逃げられないので、せめて満腹感からは逃げたい。尻尾があるなら、尻尾を巻いて逃げたい。せっかく逃げるんだったら、一度愛の逃避行ってのをやってみたい」

師匠 「最後の一言は余計だけど。で、その結果今回のおかでん君はいつも以上のスピードで駆け抜けたわけだ」

10分経過時点。残りステーキ3/5程度

おかでん 「そうです。駆け抜けました。ちなみに10分経過時点で、ようやく我に返って途中経過撮影したものがこちら」

師匠 「おお、もうお終いが見えてきたじゃないか」

おかでん 「でも、恐怖感はますます募るんです。肉を飲み込むペースが落ちてきたんですよ。なかなか飲み込めずに、口の中でもぐもぐもぐもぐしてしまう」

師匠 「それくらい、よくある話でしょ?考え過ぎだって」

おかでん 「師匠仰るとおりで、考えすぎなんです。でも、ビッキーズの回で、あと一口二口のところでぴたっと食べられなくなったって体験が頭の中をよぎるわけですね。あともう少しだから、なんてのは全く意味をなさない、と」

師匠 「確かに・・・」

おかでん 「飲み込めない肉にかわって温野菜を食べたり、もうこっちは恐怖からちょっとでも逃げるために必死です。本来であれば、『3』と切り抜かれたパンを、ナイフとフォークでずたずたにして、『カープを裏切った江藤め!天誅!』なんておもちゃにするんですけど、今回は何の芸も無く肉と一緒にぱくり」

師匠 「あー。料理として一番の華な部分がこの『背番号3』だったのに。残酷だな」

おかでん 「そんなの知ったこっちゃありません。こっちはそれどころじゃないんですから。で、満腹の恐怖に顔を引きつらせながらひたすら食べ続けていたら、いつの間にか完食」

ふぃー。恐怖と戦いながらナントカ完食

師匠 「いつの間にか、か。なんかあっけない終わり方だな。珍しいじゃない」

おかでん 「ええ、食べた本人も『あれ、食べ終わっちゃった』って感じでした。100m走るつもりだったのに80mのところにゴールラインがあってびっくり、って感じでしたね」

師匠 「タイムは?」

おかでん 「12分45秒。まずまずといったところでしょうか」

師匠 「何だい、えらく淡々と語るじゃないか。満足感って無かったの?いつもは嬉々として結果を報告するのに」

おかでん 「はあ・・・いや、満足感、ありますよ。今となっては。でも、そのときは本当に拍子抜けだったんですよ」

師匠 「拍子抜け?ほっとした、じゃなくて?」

おかでん 「満腹の恐怖に背中を押されて、ひたすらびくびくしながら食べていたのに・・・結局、恐怖の満腹大王はお出ましになることなくチャレンジが終了してしまったという事に対して。全くもって拍子抜けです」

師匠 「あ、満腹感って最後までこなかったの?」

おかでん 「そうですね、大丈夫でしたよ。戦う前は決死の覚悟で取りかかったんですが、終わってみれば相当余裕。おいしかったからですかね?」

師匠 「お。なんだ、必死だった割には味のコメントができるのかい」

おかでん 「東京ドームシティのチャレンジメニュー、どれも平均点以上の味なんですが、このお店は特においしかったですよ。だから、結果的にあっけなく食べられたのかもしれません。店内を大道芸人がうろちょろしてたりして、明るく雑然とした雰囲気も成功の理由かもしれませんね」

師匠 「えらく殊勝な事言うじゃないか。オチつけなよ、オチを!」

おかでん 「ええと、今度別の機会に友達とこの店で食事会でもやってみたいな、って思います」

師匠 「何だ、その模範解答みたいな答えは」

おかでん 「いやね、店の前に肉1kgのスペアリブが飾ってあったんです。あれ、パーティーメニューなのかなあ。でも、一人占めして一人で1kg食べちゃうってのもいいなあなんて。イヒヒヒ」

完食写真(その6)

【完食のヒント】
もう、問答無用でフランスパンを先に食べるしかないでしょう。暖められているので、最初のうちは柔らかくて食べやすいですが、時間が経つとともに冷めて堅くなります。こうなると、地獄を見るのは必至。
ビッググローブサンドイッチは、味に飽きがくる上に顎が疲れるので、時々ポテトをつまんだりして変化を持たせた方が良いのかもしれない。パンそのものはしっとりとして食べやすいので、ここでむやみに水分補給をしないように。
ステーキは、いかに口に投入する前に細分化できるか。小さくナイフで切り刻めば刻むほど、咀嚼回数を減らす事ができて楽になります。

通算6軒目制覇【10月26日(金曜)】-期限まで残り5日スポーツグリル ビッキーズ
メジャーリーグセット
[通算6店舗目/残り店舗数:3]制限時間16分51秒/12分45秒完食
苦労度 ★★★☆☆

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